「っあー! やっと終わったあぁぁぁ……」
あたしはベッドの上で大の字になって叫んだ。
もう大変だった。
片付けている最中にウサギのぬいぐるみが見つかったはいいものの……。そのあとベッドの下までグッチャグチャなの気づかれて、第2ラウンド突入だよ。
時間にしては30分くらいだったけど、めんどうくさがりには苦行の30分だった。
「おつかれさま、紅音」
カーペットに座って明澄はウサギのぬいぐるみの背中をハサミで切り裂いている。
ふたりかくれんぼでは、綿の代わりに米を入れたぬいぐるみが必要だ。米は内臓を意味するよ。
ぬいぐるみの綿をすべて取り除(のぞ)いて、米を詰める。次に参加者──あたしたちのツメを入れて、最後に赤い糸で縫(ぬ)ったら準備は完了!
ここまでを明澄は手早く済ませた。
「できたよ」
寝ころぶあたしの顔の横に、呪いのぬいぐるみと化したウサギが置かれる。
「これ名前はどうするの?」
「あー名前ねえ……よっこらせっと」
身体を起こして考える。
そのぬいぐるみは昔からあったやつで、なにか名前をつけてた気がするんだけど……思い出せないや。
「『うさっち』で」
「安直だね」
「やかましいわ」
どうせ終わったらすぐ捨てるんだからヒネリをきかせる必要はないよ。
「そういえばひとりかくれんぼの時にはなんて名前つけたの?」
「え? イヌだったからポチ」
「へえ……」
「今安直だって思ったでしょ」
「別に、オモッテナイヨ?」
「棒読みじゃん!」
まったく、人のネーミングセンスをばかにしてさー。
「……ねえ紅音」
ふと、明澄の顔に影がさした。ぬいぐるみをジッと見つめるその瞳は不安げに揺れている。
「本当にやるの? 死ぬかもしれないんだよ?」
「んー、あたしがいるから大丈夫っ」
あたしはベッドから下りて、元気づけるように明澄の背中をポンポンと叩いた。
「うーん頼りないなぁ……」
「ひどい!?」
それからは、ゲームをしたりお菓子(かし)をつまみながら話したりして夜が来るのを待った。
時は刻々(こくこく)と過ぎていく。