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翌朝、彼女の鼻歌で目が覚めた。
「おはようございます。」
「おはよう。さっきの歌…」
「ヘンデルのハレルヤです。個性発動のトリガーで言った言葉は、この歌詞の一節です。」
「なるほど。」
「あ、良かったらシャワー浴びます??その間に朝ごはん作ります。」
「わかった。シャワーしてくる。」
今日はお昼前に、彼女と別れて学校に戻った。案の定校長に呼び出された。
ボクは2人の関係をとやかく言うつもりはないけど。保護者はそうは思わないみたいで。一応、心の片隅にでも置いといて。
仕方ないとはいえ、煮えきらない思いのまま仕事にとりかかる。
翌日。彼女も呼び出されて同じことを言われたようだ。その日の夜。
「心絵先生、今日元気なかったみたいなんですけど。先生何か知ってます??」
「…お前らが察してるとおりだよ。」
「やっぱりそうだったんだ。」
この際、隠さず話すことにした。
「今どき風紀を乱すだのなんだの言う親がいるんですねー。」
「ほんと、やになっちゃう。」
芦戸と上鳴が井戸端会議のおばさんのような口ぶりになる。
「他の先生達も、タチ悪いやんね。わざわざ聞こえるように悪口言うんやから。」
「大人げないわ。2人に嫉妬してるのよ、きっと。」
「オイラ達は応援してるぜ??」
「おうよ。先生達の仲を邪魔するなんざ漢の風上にもおけねーぜ。」
正直言って、彼等が味方であることは心強い。いつの間にか身の上話しに花が咲いていて。
「ほら、もう寝ろ。長話に付き合わせて悪かった。」
「とんでもないですよ。また話してください。」
「恋愛相談もできれば…!!」
「考えとくよ。じゃあな。」
自室に戻る。今日は何もするきになれないので寝ることにした。
「教師をやめる…。」
彼女の仕事終わり、カフェに誘われて行けばそんな話が。
「はい。もう5年も勤めてきたし。潮時かなって。決して引責辞任とかじゃなく…!!」
引責辞任という言葉に嘘が垣間見える。無理もない。これ以上事が大きくなればお互いの仕事に支障が出かねない。
「辞めて何をする??」
「大学の友人に誘われたんです。」
と見せられたスマホ画面。巷で話題の覆面アーティスト集団が写る。
「なるほど。」
「あとは、高校から続けているボランティアを。病院や児童養護施設で美術を教えてるんです。」
「…ボランティアだけでも。俺がいるんだから充分やっていけるだろ。」
「そう、ですね。」
「あっちが気になるのか。」
「気にならないと言えば嘘になります。」
「その友人ってのは、女か。」
「男です…。」
「ほんとにただの友達だったのか。」
「そう、です!!」
「嘘だな。どこまでした??」
「どこまでって。消太さんとが初めてだって…。消太さんが1番分かってるでしょ。」
「何年もしなければ元に戻ることもある。」
「…ごめんなさい!!」
涙をこらえた、怒ってるような悲しいような。彼女のあんな顔初めてみた。それでやっと我にかえる。
「…なんてことを言ったんだ、俺は!!」
慌てカフェを飛び出したが、彼女の姿はなかった。