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「お前ら何してたんだ??」
珍しく全員が起きている。
「心絵先生が今月いっぱいで辞めるので、何かできないかサプライズを考えてたんです。」
八百万の言葉に全員頷く。
「辞めた後何かするって言ってたか??」
「なんも言ってなかったっすよ。」
「そう言うの、先生の方が知ってるんじゃないですか??」
墓穴を掘ってしまったような気がする。
「覆面アーティストの一員にならないか誘われたらしい。」
と生徒達に画像を見せる。ミーハーな奴らが食いついたと思えば。
「この人達凄いんですよ!!パーソナルカラーが見える人、24色以上の色が見える人。手が彫刻刀になって色んな物を彫る人、まさしく芸術界のヒーローです!!」
と緑谷が力説してくれた。
「そこに心絵先生が入れば、もう完璧だよな!!」
「でも何か、その割には嬉しそうにしてなかったやんね??」
「どっちかというと、疲れてて悲しそうだったわ。」
生徒達の視線が刺さる。
「…先生、その事で喧嘩でもしました??」
これにはお手上げだ。
「したさ。でもここからは大人の事情。良いところで切り上げて寝ろよ。」
「サプライズ当日までには仲直りしてくださいよー!!」
振り返ることなく手をふって、寮を後にした。かれこれ1週間返信がない。職員室に会いにいくのも気が引けた。いつもならデートしていた休日、彼女を探すことに。
この絵、ずっとみてられます。
ここのカフェ素敵でしょ。
蝶々ってほんとに美しいです。
彼女の言葉が思い出されるたび胸が痛む。
夜に染まりだした頃、彼女のアパートの近所まで来ていた。
「(教会があったのか。)」
そこから聞こえる第9歓びの歌。まさかと思いながら、違ってたらどうしようと不安になりながら、ゆっくりと扉を開く。
「すみません、礼拝は。消太さん…!?」
「今の歌、第9だろ??どんな歌なんだ。」
「簡単に言うと、自由・平等・博愛の理想を歌い上げた歌です。実は4楽章になっていて、第9はその最後の曲です。」
「それは知らなかった。」
「どうしてここが。」
「お前を探してたら、ここに…。」
「聖歌隊に所属してまして、気分転換に練習を…。じゃないですよね、聞きたいのは。ごめんなさい、今まで既読無視して。ちょうどこのあと、グループに入るの断りに行こうと思ってたんです。」
「ほんとか…??」
「はい。この1週間考えたんです。もしそこに入れば2度と、会えなくなる気がして。もうこれ以上つらい思い、したくないです。これからも、消太さんの隣で絵を描いていたい。好きな人の隣でずっと…。」
「あの時は酷いことを言った…。ほんとに申し訳ない。誰のものにもなってほしくなかった。それくらい美樹が大好きだから。」
「消太さん…。」
「ありがとう。こんな俺を好きでいてくれて。」
駆け寄ってきた彼女を目一杯抱きしめる。「その男と待ち合わせしてるのか。」
「はい。いつものカフェで待ち合わせてるんです。」
「俺も行く。」
驚く彼女の手をとり教会を出る。
「お前は俺の彼女だって、見せつけてやるんだ。」
子どもじみた考えに、彼女は笑って応じてくれた。カフェにいた奴は手が彫刻刀になる奴で、しつこく言い寄ってきた。だからたんまりと捕縛布をくれてやった。もちろん場所を変えて。
「ちょっとスッキリしました。」
帰りに彼女の部屋にあがらせてもらうと、画材道具が部屋いっぱいに散らかっている。
「すいません!!これが現実です!!」
慌てて片付ける彼女を後ろから抱きしめる。
「まだ片付けが…。」
「さっきより片付いた。」
服の上から身体中を触る。少しずつ甘い声を出す彼女に。
「1週間も会えなかったんだ。優しくできるかどうか。」
「良いですよ。激しいの嫌いじゃないので…。」
それを引き金に、2人はいつも以上に快感を味わった。