家に来いと言われて来たのに、インターホンを鳴らしても誰も出ない。
合鍵は持っているけど、何かあった時のためだ、勝手に出入りするなと言われていた。
だが電話も出ない。
これはもう後から怒ったとて許されるだろうと、俺は合鍵でオートロックを開けた。
💛「お邪魔しまーす…」
そう言いながら心臓が痛いほど鳴る。
もし倒れていたりしたら、どうしても嫌な想像をしてしまい、頭を振ってかき消しながらリビングに続くドアを開けた。
💛「…ん?」
ソファには大福。だがいつもと様子が違う。
横一列に歪な赤い丸が並び、てっぺんにはろうそく。
そしてチョコのプレートに「おめでとう」の文字。どうやら大福はイチゴのケーキにアレンジされたらしい。
近付いてよく見ると、それは全部フェルトでできていて、ブランケットの上に丁寧に並べられていた。
💛「翔太、来たよ」
声をかけて少し間があり、大福が、いやイチゴのケーキがもそもそ動く。
💙「ばあ!」
💛「わーびっくりした」
💙「棒読みかよ」
中から翔太が飛び出してきた。サプライズ成功と言わんばかりの勢いだが、目の前の状況を先に整理したくてそこは流してしまった。
拗ねるかと思ったけど、想定内なのか機嫌は良さそうだ。
💛「これどうしたの」
💙「手伝ってもらって照が来るまでに用意してた」
そう得意げに話す。
💛「待って。翔太その格好で人にこの用意手伝わせたの?」
💙「……うん」
俺がその質問を投げかけると、あからさまに面倒くさいところに気づかれたという顔をした。
大…いやケーキの中から出てきた翔太はパンツ1枚。
手伝ったのが誰か言わないあたり、俺が聞いたら嫉妬しそうな人物が含まれているんだろう。
だが落ち着いて思い返せ、今日この大福が変貌を遂げた理由を。
『おめでとう』つまり翔太は何やかんや俺の誕生日を祝ってくれようとしていたんだ。
ここでそんなつまらない事を詰めたら雰囲気が悪くなるだけだし、翔太の思いも潰してしまう。
💛「おいで」
ソファに座り、拗ねて中身に戻ろうとしていた翔太に声をかけるとわかりやすく顔が和らいで飛び込んできた。
💛「こんな綺麗な翔太を見せたなんて」
💙「サウナとかで見るだろ、みんな」
💛「そうだね。で、なんでこの格好?」
💙「わかってるだろ、バカ」
綺麗と言われて悪い気はしていないのが隠しきれない翔太が可愛い。
お祝いなら自分で言って欲しいなぁ、と背中を撫でると早くも期待で力が抜け始める。
💙「き…今日は、照のしたいこと、全部やる。好きにしていいぞ…」
出会い頭の俺に匹敵する棒読み。
たぶんこれも考えておいた台詞なんだろう。何回も練習したのかも知れないと思ったら自然と笑みがこぼれた。
💙「何笑ってんだよ」
💛「別に?翔太が可愛いなと思っただけ」
嬉しいじゃなく、あくまで悪い気しないスタンスを崩さない表情をしている翔太。
キスをして『お祝いしてよ』と耳元で囁いたらぴくっと身体が震え、しがみつくようにして顔を隠すと
💙「誕生日…おめでと」
と一言、絞り出すように言った。
💛「ん、ありがと。じゃあお言葉に甘えて、好きにさせてもらいます」
💙「あんまり無茶すんなよ」
💛「はいはい」
終
コメント
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可愛いけど毎度パンイチなのはなぜなのかwwwwwww
おめでとう💛💛