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(一)
可愛い子は性格悪いなんて言われるけれど、偶然可愛かっただけ。優しいフリしてる屑だ。
田圃と古墳しかないとも言えるこの町は、住人全員が顔見知りという訳でもなく、形容し難い町である。 自然が綺麗だと訪れる人がいなければ、服を買いに来る人もいない。 稀に、鉄道好きが錆びれた駅へ、数枚の写真を撮りに来るくらいである。小学生が集まるところといえば、近所の寺と、カラフルなトッピングシュガーを使ったクレープ屋、小さなパワーストーン屋だけだ。
中学三年の夏。授業のペアワークで、「七夏ちゃんは良いね、可愛くて。生きるの嫌になるな。」
と、笑いながら言われた。彼女はクラスでも馴染んでいて、愛された女の子だ。私は返答に困ったが、台本通りに、にっこり笑って
「そんなことないよ。胡春ちゃんこそ可愛いじゃん。」
(二)
休日に彼女と喫茶店に出かけた。ヴィンテージな店内と、オレンジの証明に照らされる猫とランチ。私好みだった。彼女とは趣味が合うのかもしれない。塩と胡椒が振り掛けられた目玉焼きとハムが乗ったトーストを食べ終えると、落ち着いたように、彼女は自身のコンプレックスについて話しだした。自身を卑下しているように見えて、承認欲求が高いだけの彼女に腹が立った。
「まぁそっか。親からしたら子供は子供は自分の体から家建てないよね自分の顔なんだから貶せないよね。でも、愛されてるってことだよ。」
思わず饒舌になってしまう。
「私の親は、顔が好きだから付き合って、キスをして、セックスして、避妊をしなかったから私が生まれた。いらなかったのに出来ちゃった。」
胡春の顔が曇っているのが、景色を見ながら話していても解る。
「母の料理なんか食べたことない。自分で作って、それで終わり。父も何も言わない。顔だけが好きだからね。」
彼女は何も言わなかった。彼女は、ただ「かわいい」と言って欲しかっただけなのだろう。申し訳ない気持ちにもなっていたが、止めようとは思わなかった。
私はアールグレイを飲み終え、彼女が食べ終わるのを欠伸をして眠そうな猫の整えられた毛並を撫でながら待った。会計を済ますと、彼女は言った。
「七夏ちゃん。今日はありがとう。」
そのときの彼女の表情は、今までに見たこと無い、聖母のようで。私は何も返せなかった。
ぼくが
水族館に連れて行ってあげる
もう何度も 会ったはずなのに
なぜか
初めてのようだね
もう何度も キスしたはずなのに
なぜか
きょうも雨
ぼくのために 夜空が 光って
ぼくのために 君と 出会った
ぼくらのために 雨が降り
ぼくらのためだけに 虹が出たよ