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『一三月のカルテ』
キヨ×レトルト
ご本人様達とは全く関係ありません。
全て私の妄想です
楽しんで頂けると嬉しいですヽ(*^ω^*)ノ
――もし、自分の死期を知ったら
あなたは、何をしますか?
会いたい人に会いますか。
食べたいものを食べますか。
それとも――
静かに、その時を待ちますか。
無機質な部屋に金属のぶつかる音 だけが響いていた。
白く冷たい照明。
鼻をつく消毒液の匂い。
ステンレスに反射する鈍い光。
その中央で――
レトルトは今日も 静かに死体と向き合っていた。
ただ、淡々と。
白衣の袖を捲り、 血のついた手袋で 冷たくなった胴体を触る。
そして、静かにメスを入れる。
皮膚を裂き、
肉を開き、
臓器を取り出す。
そこに、 感情はない。
毎日、人の死を暴く。
昨日まで生きていた“誰か”の 最期を解き明かす。
それが――
法医学者・レトルトの日常だった。
「……死因、心不全」
ぽつり、と呟く。
まるで、 今日の天気でも告げるように。
その時だった。
――カツン。
背後で 小さな音がした。
レトルトの手が止まる。
この解剖室に 自分以外いるはずがない。
ゆっくりと 振り返る。
そこに立っていたのは――
黒いローブを纏った 長身の男。
ぞっとするほど血の気のない白い肌。
そして――
暗闇の中でも異様に浮かぶ、 真っ赤な瞳。
男は 口元だけで笑って立っていた。
普段、 ほとんど感情を表に出さないレトルトも さすがに 目を見開いた。
この解剖室は 関係者以外立ち入り禁止のはず。
鍵だって かかっていたはずだ。
なのに―― いつの間に。
(どうやって入った?)
レトルトは 眉をひそめ 鋭い目で男を睨みつけた。
「……誰や!!」
静かな解剖室に 珍しく荒げたレトルトの声が響く。
すると――
血のように赤い瞳を 細め男はニヤリと笑った。
そして、 ゆっくりと口を開く。
低く 静かに、でも ぞっとするほど 冷たい声で
『――死神』
その一言で 解剖室の空気が 凍りついた気がした。
「……死神……?」
レトルトは 小さくその言葉を繰り返した。
“死神”
あまりにも 現実離れした言葉。
信じられるはずがない。
レトルトは 眉をひそめたまま
男へと疑いの目を向けた。
すると――
男は そんな視線に慣れているように、
くっくっと喉を鳴らして笑った。
『ははっ!その顔は信じてない顔だなぁ』
男は にやりと口角を上げたまま ゆっくりと
解剖台へ近づいた。
黒いローブの裾が、 床を擦る。
『……信じなくてもいいけどさ』
低く どこか楽しげな声。
『俺は―― 真実を伝えにきた』
その一言に レトルトの眉が ぴくりと動いた。
男は さらに笑みを深くして、 まるで 大したことでもないように 告げる。
『あんた―― あと一カ月で死ぬよ』
静寂。
機械音だけが やけに大きく響く。
そして――
「……ふっ」
レトルトは 小さく鼻で笑った。
「……くだらない」
白衣の袖についた血を 乱暴に拭いながら
冷たい瞳で 男を見据える。
『死神だの、 一カ月で死ぬだの…… そんな非科学的な話 信じると思うん?』
鼻で笑うその顔は男の話など全く 信じていない顔だった。
けれど――
男は そんな反応さえ 面白そうに見つめていた。
「お前が死神だって証拠でもあんの?」
レトルトは馬鹿にする様に 鼻で笑いながら言った。
そして、白衣のポケットに 手を突っ込み、
冷めた目で男を見る。
すると――
『んー……』
男は わざとらしく顎に手を当てながら、
『そうだなぁ……証拠じゃないけど。証明なら出来るよ』
そう言って、パチンと 指を鳴らした。
『あと一分後』
男は、 にやりと笑う。
『あんたの上司から連絡がくる』
男は 楽しそうに続ける。
『“親戚が死んだから、 明日忌引きで休む”――ってな』
……くだらない。
そう思った、
その時。
――プルルルルッ。
無機質な解剖室に 突然、内線の音がが響いた。
レトルトは、 わずかに眉をひそめながら
電話に出た。
「……もしもし」
聞こえてきたのは―― 上司の声。
「あー、レトルトくん?悪いんだけど明日休みもらうわ」
申し訳なさそうな上司の声。
レトルトは ちらりと男を見る。
男は、 壁にもたれたまま にやにやと笑っていた。
「急にごめんね。親戚が亡くなってさ。
悪いんだけど、 明日忌引きで休むから よろしく頼む」
レトルトの動きが止まる。
(….まさか)
さっき男が言った通り。
「……レトルトくん? 聞いてる?」
「あ……あぁ。はい。 わかりました」
それだけ答えて 通話を切る。
静まり返る解剖室。
すると――
『ほらね?言った通りでしょ?』
男は口元を吊り上げる。
『……信じてくれた?』
レトルトは 無言のまま男を見る。
さっきまでの 余裕の表情は消えていた。
けれど、 まだ 完全には信じきれない。
レトルトは 小さく息を吐いて 低い声で尋ねた。
「……本当に …俺は、死ぬのか?」
男は、 にやりと笑うだけ。
「……でも、なんで?」
白衣の胸元を 無意識に握る。
「特に病気もしてへんし……」
健康診断も 異常なし。
持病もない。
誰よりも
死を見てきた自分が――
死ぬ?
理解できない。
『死因は――』
男はわざとらしく 間を置いて、
『心臓発作……ってことに なるかなぁ』
『……世間の人間には、ね』
静かな声。
『でも――』
男は ゆっくりとレトルトを指差した。
『俺が、あんたを殺す』
レトルトの瞳が 大きく揺れた。
『あー……でも。』
少し考えるように 天井を見上げる。
『殺すっていうか……あんたの魂の寿命が
そこで尽きるって感じ?』
まるで 当たり前のことを 説明するような口調で男は話し続ける。
『人間ってさぁ〜』
『死因がないと ギャーギャーうるさいだろ?』
男は解剖台の死体をつんつんと指でつつく。
『だから、 それっぽい理由を つけてやんの』
レトルトは 無言のまま 男を睨んだ。
今まで、 死体の“死因”を 暴いてきた側だった。
なのに今――
自分の“死因”を 決められている。
しかも、自分のことを”死神”だと名乗る
得体の知れない男に。
レトルトの喉が ごくりと鳴った。
『……命にはさ』
静かな声が、 冷たい解剖室に響く。
『必ず、終わりがくる』
赤い瞳が まっすぐレトルトを見た。
『……人間だけだぜ? その“終わり”に いちいち名前をつけるのはさ』
事故死。
病死。
他殺。
老衰。
『そんなに名前が欲しいもんかね〜』
男は並べるように呟いて鼻で笑った。
『俺は――』
男は 自分の胸に指を当てた。
『魂の最期を 見届けるのが仕事なの だから――』
にやり、と笑う。
『教えに来たんだよ』
赤い瞳が 細められる。
『あんたは―― あと一カ月で 魂の寿命が尽きる』
楽しそうに、 けれど どこか優しく笑って、
『俺はそれを見届けて―― あんたの魂を
天に送るのさ』
静まり返った解剖室。
レトルトの残り時間を刻んでいるかの様に機械音だけが、 規則正しく鳴っていた。
男は ゆっくりと顔を寄せ――
レトルトの耳元で 甘く囁く。
『……あと一カ月』
吐息が、
耳にかかる。
『……あんたは、どう生きる?』
レトルトは 思わず顔を上げたが、 そこには もう誰もいなかった。
続く
コメント
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新作きちゃー!!!(≧▽≦) めちゃくちゃ明日から楽しみ!!! どんな風に物語が進んでいくのかとても気になるのです(๑•̀ㅁ•́ฅ✨ もし自分が1ヶ月後に死ぬとなったら、意外と普通に過ごしてるかもですねぇ 普通の日常が一番の幸せかもしれないですしね 色々考えさせられそうですっ!!! 楽しみにしてます!

え新ストーリー!?!? しかもレトさんが医者…?あれ医者だっけ、法…なんとか、!?好きだ…。 しかも死神…!?キヨが!?死神ィ!?すっごい癖だ…。 とにかくありがとうございます!!明日の体育がんばれそうです💘