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コメント
1件

ふんふんなるほど そうですなー 私だったら、きっと働きすぎて休めなんてこの人生でI回も起きないと思うのですが、もし休みがとれたら… 本屋さんとか後はお菓子をめちゃくちゃ買って家で食べるとかですかね…(* ´灬` *)
2話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
いつもの天井。
いつものアラーム。
いつも通りの時間に起きて。
いつも通りに顔を洗って。
いつも通りの朝食を食べて。
いつも通り、電車に乗る。
そして――
いつも通り、白衣に袖を通して
仕事へ向かう。
何ひとつ 変わらない。
世界は今日も、
何事もなかったように
回っている。
――自分が、
あと一カ月で死ぬとしても。
レトルトは、” いつも通り”を
いつも通りに過ごしていた。
死神に告げられた言葉など
存在しなかったみたいに。
『……あと一カ月、 あんたはどう生きる?』
ふと、 脳裏に響く声。
(….. くだらない)
レトルトは 小さくため息をついて目の前の死体へと視線を落とした。
白い布をめくり 冷たくなった身体を見下ろす。
手袋をはめる音。
器具の触れ合う音。
静かな機械音。
いつも通りの 解剖室。
……の、はずだった。
『あんたさぁ』
背後から 間延びした声。
レトルトの眉が ぴくりと動く。
『あと少しで死ぬってのに
なんで仕事なんかしてんの?』
解剖台に腰掛けながら、退屈そうに長い脚をぶらぶらさせて 死神は 呆れたように言った。
レトルトは 顔も上げずに
メスを握る。
「……うるさい」
冷たい声。
「集中できないから 喋りかけるな」
ぴしゃりと 言い放つ。
『冷た〜』
死神はぶつぶつ文句を言いながら、
頬杖をつく。
『本人より 俺の方が死ぬ事気にしてるっておかしいだろ!!』
死神は1人で笑っていたがレトルトは それを無視して淡々と死体にメスを入れていた。
皮膚を裂く音。
血の匂い。
内臓を取り出し、
観察し、 重さを量る。
その一連の流れを キヨは じっと見ていた。
不思議そうに。
面白そうに。
そして、
少しだけ――
寂しそうに。
2,583
解剖室の扉が開く。
「レトルト先生ー!!」
助手が 資料を持って入ってくる。
レトルトのすぐ隣の 解剖台の上に座る死神を
視界にも入れずに、
「あ、これ昨日の資料なんですけど….」
何事もなく 話しかけてくる。
レトルトは ちらりと死神を見た。
死神は にやりと笑う。
『……な? 俺、 他の人間には見えないんだよ』
そう言って死神は助手の顔の前で
ひらひらと手を振った。
けれど、 助手は 何の反応もしない。
まるで そこに誰もいないみたいに。
レトルトは 小さく舌打ちした。
(……厄介やな。)
そして、レトルトは助手から渡された資料に
視線を落とした。
いつも通り 仕事を終える。
いつも通り 白衣を脱いで。
いつも通り 無機質な廊下を歩く。
『……つまんねぇなぁ』
後ろから聞こえる 呆れた声。
『今までの奴らは死ぬって分かった途端、騒ぎ出してやり残した事バタバタし始めて、見てんの楽しかったのにな〜』
死神はその光景を思い出しているのか、ニヤニヤと笑っていた。
しかし、レトルトは 振り返りもせずに 病院を出ていく。
いつも通りの道を歩いて いつも通り 家に帰る。
鍵を開けて。
靴を脱いで。
電気をつける。
暗かった部屋が
白く照らされる。
『……ほんと、 味気ねぇ部屋』
いつの間にか ソファに寝転んでいるキヨが
天井を見ながら言った。
レトルトは…. 無視。
冷蔵庫を開け 適当に夜ご飯を温める。
一人分のご飯を黙って食べて
食べ終わった食器を 流しへ置く。
風呂に入って 濡れた髪を 雑にタオルで拭きながら 寝室へ向かう。
時計を見ると いつもと同じ時間。
布団に入るって 電気を消す。
暗闇。
静寂。
レトルトの一日は 今日も
“いつも通り” に過ぎていく。
昨日と同じ。
一昨日とも同じ。
何も変わらない。
何も変える気もない。
――いつも通りにしかならない毎日。
レトルトは それをこれっぽっちも
気にしていなかった。
『……ほんとにさぁ』
暗闇の中、 天井から 声が降ってくる。
見上げると 逆さまに張りついたキヨが
こちらを覗き込んでいた。
真っ赤な瞳が 闇の中で光る。
『あと一カ月で死ぬのにこの ままでいいの?』
レトルトは うっすら目を開ける。
そして――
「……うるさい」
一言。
布団を 頭までかぶった。
キヨは しばらく黙っていたが、 やがて くすっと笑って、
『……おやすみ』
その声を最後に 部屋は 静かになった。
レトルトは 目を閉じる。
――明日もまた
きっと、 いつも通りだ。
いつも通りの朝。
いつも通りの仕事。
いつも通りの帰り道。
いつも通りの夜。
そんな日々が何 日か過ぎた頃。
いつも通りじゃない レトルトに 死神は 気づいた。
レトルトは ベッドに腰掛けていた。
風呂上がりの濡れた髪を雑に拭きながら
手元のスマホの画面を じっと 見つめている。
その表情は 珍しく 困ったような顔。
そして――
「……はぁ」
大きなため息。
キヨは 天井に張りついたまま
目を細めた。
『ん?』
ひょい、と 赤い瞳が
スマホ画面を覗き込んだ。
そこには――
“レトルトくん、君はちょっと働き過ぎだ。
明日と明後日は 有給を使って休みなさい。”
――上司からのLINE。
キヨは、
一瞬きょとんとして 次の瞬間―― にやり。
口元が、
大きく吊り上がった。
『……へぇ。 休みじゃん』
レトルトは 眉を寄せたまま
スマホを見つめる。
「……だから?」
冷たく返す。
キヨは ベッドへ飛び降りて レトルトの隣に座った。
『なぁ?どっか行こうぜ!』
子どもみたいな声。
レトルトは 露骨に嫌そうな顔をする。
「……は?」
死神は にやにや笑う。
『せっかくの休みだろ?どっか遊びに行こーぜ!!』
赤い瞳を輝かせる死神とは対照的にレトルトは心底嫌そうに大きなため息を吐いた。
続く