夜空に星が輝くある日。俺はいつも通り22時にこの公共バスを車庫に入れた。最近バス置き去りの事件が多いため俺の所属している会社でも最後車庫に入れたら必ずバス内を確認するようセキュリティが強化された。そのせいで俺の仕事が増えた。まあやらないで人が死ぬのは御免だがな。責任取られるのは俺だ。
ねみい。まあさっきよりは目は覚めた。さっきは…危なかった。
俺が終点までバスで運転していると交差点で白い乗用車とスレスレになった。もう少し早ければ完全にぶつかっていただろう。こっちは何人も乗客がいるんだ。ったく。向こうの信号無視だろうな。まあこんなことは忘れてさっさとバス内を確認して家へ帰ろう。今日はやけに眠い。なぜだろう。まあ疲れが溜まっているのに違いない。
俺は運転席を立ち、前から順に座席を確認していった。
イヤホンや傘など忘れ物は多々ある。だが人は流石にいない。
やっと一番奥の席。もうすぐ終われる。そう思った矢先だった。一番奥の席の中央、通路からちょうど見える席に5歳くらいの女の子がちょこんと座っているのだ。その女の子の顔は真っ白で生きている人間とは思えないくらいの色だった。女の子が着ている水色の浴衣は左前に着ていた。俺は一瞬夢でも見たのかと思い自分の頬を一回ひっぱたいた。
「いてえ…?」
思い切りひっぱたいたはずなのになぜか痛くない。本当に夢なのかもしれないと俺は思ったが夢だったらこんなにもコントロールはしていないはずだ。俺は女の子に近づき、早く帰るよううながした。
「ちょっとお嬢ちゃん?帰らないの?」
「おじさんは?」
「君が帰ったらおじさんも帰るよ。だから早く帰ろうね?」
「…ひとりで?」
「親御さんは近くにいるの?」
「ううん。いないよ?ママとパパはここにいないから」
俺はもう一度バスの中を見回した。まあいないだろうが。
「う〜ん…おじさん君の家知らないからな〜困ったな〜…」
俺はポケットからスマホを取り出し、この公共バスの会社に電話をかけた。しかし、「お電話ありがとうございます。××バスでございますが、ただいま電話に出ることができません。お手数ですが、お名前、お電話番号、ご用件をお話しください。改めてご連絡いたします」と電話が繋がらなかった。俺はおかしいそう思った。俺は会社にかけた。だが連絡がない。会社であれば誰かしら出るものではないかそう思った。まあとりあえずこれは俺一人で解決しないといけないらしい。
「彩(あや)、いえしってるよ?」
「お!じゃあそこ教えてくれないかな?嬢ちゃん一人だけだと危ないからね。おじさんもそこまで送っていくよ」
一気に希望が見えた。この子の家すら行ってしまえばもう仕事は終わりだ。
「え?おじさんもいえいっしょだよ?」
「ん?おじさんはおじさんの家があるんだよ?」
「いっしょ!」
「はい?」
俺の頭が混乱する。家が一緒なんてことない。まさか娘?いや違うだろう。俺も娘は右目の近くにほくろがある。でもこの女の子にはない。じゃあどういうことだ?
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