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#山中柔太朗
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外来の受付もひと段落した、午後4時。
総合診療科のナースステーションでは、5人が温かいお茶を手に、少し真剣な表情でホワイトボードを囲んでいた。
きっかけは、勇斗が午前中に診察したひとりの高齢患者だった。
「……主訴は『なんだか最近、体がだるくて食欲がない』。血液検査でも目立った炎症反応はなし。
でも、『なんとなくおかしい』って感覚がどうしても引っかかるんだよな」
勇斗が腕を組みながら呟くと、仁人がゆっくりと温かい湯呑みを置いた。
「まぁ、目立つ高熱や激痛がない分、見落とされやすいしね」
「そうなんだよね」
柔太朗が端末の画面を操作しながら、静かなトーンで言葉を継ぐ。
「たとえば、感染性心内膜。微熱や倦怠感とかの曖昧な症状だけで経過して、ある日突然、塞栓症を起こすケースもあるじゃない?
オスラー結節やジェインウェイ発疹みたいな特徴的な皮疹が出ててれば一発で疑えるけど、初期にはそれすらないことも多いし」
「心内膜炎……」
太智が顎に手を当てて深々と頷く。
「血培を2セット以上取って、心エコーで疣贅がないか確認……って流れやな。ナース側としても、患者さんの指先とか爪の下に微小な出血斑がないか、毎日の観察でしっかりチェックしとかんと」
「それと、若年層でも注意が必要な『自己免疫疾患』……たとえば全身性アリテマトーデスや血管炎ステロイド指示が必要なケースだね」
舜太がノートを広げながら真剣な眼差しで言った。
「関節痛とか原因のわからん熱、原因不明の蛋白尿なんかが重なったら、膠原病科と組んで抗核抗体チェック……。
『木を見て森を見ず』やなくて、全身の小さなSOSを拾い上げるんが、俺らの役目やもんなぁ」
熱心に語る末っ子の言葉に、勇斗が、その通り!と膝をたたいた。
「『ただの疲れ』で済ませずに、疑わしい影はひとつずつ潰していく。患者さんの『なんとなくしんどい』に最後まで付き合うのが、俺たち総合診療科の真骨頂だからさ、」
「勇斗、声デカい」
仁人が眼鏡の位置をクイッと直しながら、ふっと口元を緩めた。
「ちなみに勇斗さ、さっきの患者さんの心雑音は聴取した?」
「あったりまえ。収縮期雑音はなかった。念のため追加で血培オーダーと心エコーの予約、明日一発目に入れておいたし、」
「……そういうところの抜かりはないんだよなぁ」
真剣に難病や微細な病態について議論を交わしながらも、空気はどこまでも温かく、お互いへの信頼に満ちている。
「よし! 会議終了! じゃあ、みんなでちょっと早めの夕方休憩にしますか!」
太智がパンパンと手を叩くと、柔太朗がすっとトレイに乗ったクッキーを差し出した。
「難しい症例考えるのはいいけど、頭使いすぎてまた倒れないでよ?」
「倒れないわ!!」
「柔太朗は俺らをなんだと思ってるの?」
「バリバリ前科ありじゃん」
文句を言いながらもクッキーに手を伸ばす仁人と勇斗を見て、舜太と太智が顔を見合わせて楽しそうに笑う。
深刻な病気と背中合わせの現場だからこそ、深い知識を共有し合い、互いを思いやる。
総合診療科の頼もしい5人は、今日も最高のチームワークで患者の小さなSOSに耳を澄ませていた。
こんなに沢山の方々に読まれると思ってなかった…!感謝感激です!
見たいペアや場面などがあれば是非コメントお願いします!
コメント
4件
今回も、とても素敵な物語をありがとうございます😊 もし宜しければ、塩崎太智さんメインのお話しなどを書いていただけないでしょうか 初めてコメントを書くので、とても下手かもしれませんが読んでくれると嬉しいです!
素敵なエピソードでした……!「なんとなくしんどい」という患者さんの小さなSOSを、チーム一丸で拾い上げようとする姿勢に胸が熱くなりました。収縮期雑音の有無を確認した上で血培や心エコーを予約する勇斗先生の手際の良さと、それに応えるように知識を出し合う仲間たち。専門用語が並ぶ中にも、クッキーを差し出しながら「倒れないでよ」と気遣う柔太朗さんの優しさが光っていて、難しさと温かさのバランスが絶妙でした。こういうチームって、理想ですよね。