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短剣使いというだけあって女の攻撃は間を置く隙が無い。一撃必殺ではなく集中的にダメージを蓄積させ、絶命させる多撃必倒のようだ。女は笑いながら確実におれの腕や足に、連続した切り刻みや突き刺しを続けてくる。Sランクが伊達では無いと示すように、分かりやすく的確な狙いだ。


これではさすがに並の強さ、あるいはそこそこの強さの獣程度では敵いそうにないだろう。現時点では多撃してきている状態にあるが、強化者からの援護は無いとみえる。


――となると、強化をまともに受けられるのは魔術師の男のみ。そうなるとやはりシーニャには不利な相手ということになる。


「アハハハハッ……ハァッ、ハァハァハァ、何なんだコイツ……てんでダメージが通らないなんて」


時間にして数分程度の一方的な攻撃だが、体力までは強化しきれていないようだ。今まで遭遇した敵はあっさりと片付けていたのだろうが、おれには全く通用しない。


獣化効果が功を奏しているのか、連続して攻撃を受け続けた肉体が激成で効果を生み出しているがそのせいだろう。


「ガウウウゥ……!」

「ちぃっ! 獣の分際で!!」


女が手にしている短剣はレア武器なのか、刃こぼれがない。そんな短剣を取り上げても仕方がないので遠慮なくフェンリルの爪で攻撃をさせてもらう。


油断なのか、躊躇なくおれの懐に飛び込んでくるので、これなら多少動きが緩慢でも重い一撃を喰らわすことが可能だ。絶命させるつもりはもちろん無いが、爪のレベルアップとおれ自身の為にも思いきり吹き飛ばす。


そうだとしても、恐らく回復士から手当てを受けられるだろうけどな。フェンリルの爪を後頭部辺りから振り上げ、そのまま勢いよく風を起こす――そこからの振り下ろしだ。


「ガアァッ!!」


「はんっ、どうせその爪も見せかけだけの――いぎぃゃあああぁぁぁぁっ!?」


多少の手加減はした。しかし女の姿はすでに無く、暴風と共にどこかへ吹き飛んで行った。


【フェンリルの爪 Lv.10 制限解除:残1】


おっ?


やはりSランクだけあってレベルも上がったか。獣化が解けるのも残り一人を倒すだけのようだ。そういう意味ではSランクのおかげかもしれない。しかしシーニャの方にも目をやらなければ。


「ウゥ、ウニャ……、痺れがおさまらないのだ。全身の毛が凍って……ウゥゥゥ」

「おいおい、どうした獣人! 生意気に装束を身に着けているから強いかと思っていたが、とんだ雑魚だな! 雷魔法と氷魔法なんて今まで受けたことも無いだろ?」

「ウゥ……うるさいのだ。アックの魔法より全然大したことないのだ!」

「ああん? アックだぁ? 人間か、それともヘルガの餌食となった狼か?」


シーニャが戦っているところに目をやると、彼女は動きを封じられていた。相性の悪い魔術師に加えて、弱体魔法をかけられているように見える。最悪なことになる前に――許せ、シーニャ。


「――ウニャニャッ!? う、動けないのだ……ウゥゥゥ」

「何だ!? 何が起こりやがった? まぁいい、魔法に耐えられず異常を起こしたようだな。せめてもの救いだ、氷漬けで眠らせてやる」


離れたところでもおれのスキルは有効だった。おれが近付くとシーニャの動きは、明らかに行動不能。そんなシーニャに対し魔術師の男が何度も魔法を浴びせまくっているようだ。


「ふ、ふざけやがってぇぇ!! オレの魔法が無効化だと!? 獣人ごときにそんなスキルがありやがったってのか? へっ、まぁいい。どうせ時間経過で解けるんだろ? その間に、目一杯の強化をかけさせてもら――っ!?」


さすがにおれの気配に気付いたか?


てっきり油断していると思っていたが、コイツはさっきの女よりも強化されている。


「……ん? どうした、動きが止まってるぞ?」

「なんだぁ、てめぇは?」

「おれか? おれは……」

「人間の言葉を使えやがったのか? 何者だ、てめえ! ヘルガをどうしやがった?」


おおっ?


いつの間にか言葉が通じているじゃないか。そういえばシーニャの能力を使えるんだった。その代わりシーニャは行動不能に陥り言葉を発せなくなっている。そのせいもあるようだ。


「おれはアック・イスティだ。本当の姿は人間だけどな。ヘルガという女なら、今頃ラクルの町で眠っている。確かお前は自称Sランクの……」

「正真正銘、Sランクだ! 雑魚が!! てめえがどんな名だろうがオレに勝てるわけがねえ! 人間だろうが狼だろうが、そんなことはどうだっていい!」

「そうか? あんたの名前を教えてもらった礼に強化の機会を与えてやろうか?」

「雑魚が!! てめえなんざ、今のままでも十分すぎだ、ボケが!」


魔術師の男は怒りを膨らませ、どうやら連続魔法攻撃を放つつもりらしい。属性は変えてきたようで、炎魔法の上位魔法である爆発魔法を繰り出してきた。爆発魔法はおれや周辺を巻き込みながら一面を炎に包む。ルティたちのことも気になったが、シーニャの素早さを使って奴の背後に回ることが出来た。


「……魔術師ヴィレム。狩られたのは、あんただったようだな」

「なっ……!?」

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