テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ー健三sideー
カーテンの隙間から暖かい日差しが差し込む。その光が眩しく、私はゆっくりと目を開けた。
目を開けると、そこは見慣れない天井。いつもと違う感触の寝具。家とは違う匂いー。
ああそうだ。ここはホークアイズの事務所だ。まだ起きたばかりで頭は働かないが、うっすらと、6時30分という時間は見えた。
昨日あった出来事を、寝ていたソファーの上で思い返していると、不意に一つの扉が開く。
目を向けると、物怪さんが寝癖のついた髪で起きてきた。
「おはようございます、物怪さん」
「おはよー、神柴。早起きだな」
「いえ、私もちょうど今起きたばっかですよ」
「そっかー、顔洗ってくる。俺が終わったら神柴も洗ってきていーぜ」
「ありがとうございます」
開いているのか開いていないのか、どっちかで論争が起きそうな目を瞬かせながら、物怪さんは洗面所に向かった。
その数分後、ほぼ同じタイミングで枯柳さんと司波さんも起きてくる。
各々挨拶をし終えたとき、ちょうど物怪さんが戻ってきたので私も洗面所に向かう。
冷水で顔を洗いながら、鏡に映る自分の顔を見る。
少し疲れていたが、スッキリした顔をしていた。彼らが寄り添ってくれたおかげだった。
「…友達…か」
(なれたら、良かったですね…)
顔を洗い終わり戻ると、もうすでに朝食ができていた。私は枯柳さんの許可を得て、紅茶を入れた。
朝はフレンチトーストとサラダ。バターがたっぷりですごく美味しかった。
朝食を食べながら、今日の調査について話をした。
司波さんが話す。
「今日はまず、それぞれひったくりにあった奴らの話を聞きに行き、そのあと現場を見に行く。現場のあたりに人がいたら目撃者がいるかもしれないから、そのへんも聞き込みしてくれ。被害者の人数は神柴を除いて4人だから、手分けすればちょうどいいだろう。その後は、近くの公園で落ち合って聞き込みした内容を整理する」
枯柳さんが話す。「現場と被害者の住所は、それぞれの端末に送っておいたからな」
「了解です」
そのとき物怪さんが、思いついたように私に目を向けて話す。
「なあ、神柴は一人で良いのか?聞き込みなんて経験、初めてだろ?」
…まあ確かに。彼らは知る由もないが、聞き込みなんて、以前は日常茶飯時にやっていた。だがそんなことは話せるわけがないので、ただ大丈夫だと答えようとしたら、先に司波さんに答えられてしまった。
「ああ、心配するな。なんなら神柴はお前よりも頼りになるさ」
その話し方に対して、物怪さんが小さく舌打ちする。
Yuka@ゆうかって読みます
1,815
#ご本人様には関係ありません
炭酸@サイダー🌠💙🎧️
7,281
Yuka@ゆうかって読みます
38
#千右
ホシクズ
3,824
枯柳さんに目を向けると、彼は目を丸くして少し苦笑いしながら司波さんを見ていた。
「驚いたな…。仁がここまで断言するとは」
司波さんは罰が悪そうに目をそらした。
私も笑って答える。
「ええ、司波さんの仰るとおりご心配なく。ちゃんと被害者や目撃者の方々の話を聞いてきますから」
そんな話をしていると、全員食べ終わった。
「「「「ごちそうさま/でした」」」」
「行くぞ」
「新生《ホークアイズ》、出動だ!」
司波さんの声と、物怪さんの元気な掛け声とともに、私は事務所をあとにした。
まず、枯柳さんに教えられた被害者の住所に行った。着くとそこは、比較的新しい学生向けの2階建てのアパートだった。部屋の前に行き、インターホンを鳴らす。
少しして、男性が出てくる。第一印象としては、優しく誠実そうな人だった。綺麗な水色の瞳、黒くてさらさらな髪。調書によると、彼の名前は桐生蓮、21歳の大学生だった。
「…どちら様でしょう?」
彼の目は明らかな警戒を表していた。まあ当然と言えば当然だが。
「突然申し訳ありません。私、ネスト序列21位、《ホークアイズ》の臨時のお手伝いみたいなもので、神柴健三と申します」
「…《ホークアイズ》?司波仁さんの?」
やはり彼の顔は広い。まあここが斜目町だからといえばそれまでだが。
「ええそうです。その司波さんに頼まれまして。先日被害に遭われたひったくりについての話を聞きたいのですが、今お時間ありますか?」
彼は私の話を聞き、少し考えた。そのあと、まだすべてを納得してはいないというような顔をしていたが、とりあえず頷いた。
「…わかりました。僕で答えられることなら」
「ご協力、感謝いたします」
「一回警察に話したとは思いますが整理のため、もう一度、事件の時の状況を教えていただけますか?」
「はい。事件に遭ったのは3日前。あのとき僕は大学終わりだったので、家に向かって歩いていたんです。時間は夜19:10くらいのことでした。そのとき、突然後ろから肩に何かがぶつかる衝撃とともに、肩にかけていたカバンが引きちぎられていて。そのことに気づいたときには、もうその人物は遠くに逃げていました」
「後ろから誰か来ているな、とかは気づかなかったんですか?」
「僕ちょうどその時イヤホンをしていまして。だから全然気づかなかったんんです」
「なるほど。ちなみに何が盗られたんですか?」
「主要なもので言えば、財布と家の鍵…とあとは彼女とのペアリング…ですかね。一応家の鍵は予備があったので大丈夫だったんですが、気味が悪かったので、昨日家の鍵を変えました。ペアリングは…付き合って1周年記念で買ったものだったので、早く…取り返したいです」
そう話す彼の表情は、痛々しかった。
「絶対に犯人は捕まえてみせます。ちなみにそのとき、近くに人はいましたか?」
「…すみません。わからないです。そんな余裕がなかったので」
「いいえ、大丈夫です。あともう一つ、その時の犯人の顔は見ましたか?」
「いえ。体格で男かな…くらいしか。あたりもそこそこ暗かったし、フードも被っていたので」
「なるほど。お話ありがとうございました」
「これぐらい全然いいですよ。ところで、一つお聞きしても?」
「何でしょう」
「僕は警察に相談したのにネストのあなた方が調査しているということは、警察は動いてくれなかったんですか?」
「…結果としてはそうなってしまいます。ただ、勘違いしないでください。事件が大きくないから警察が動かないとかじゃなくて、より凶悪な事件が多いので手が回らないだけなんです」
そのとき桐生さんが、少し声を低くしていった。
「…今回の事件は重要性が低いと?誰も怪我をしていないからとかそういう理由で?」
…しまった。私としたことが。言葉を間違えてしまった。どうやら彼の逆鱗に触れってしまったようだ。
ひとまず、彼に謝らなければ。
「いえ、そういう意味ではなくt/」「もういい」
彼が私の言葉を遮って言った。
「結局警察もネストも、所詮はひったくりなんてただのお荷物だとか思ってるんだろ」
どんどん彼の言葉はエスカレートしていく。
「あんただってそうだ。臨時の手伝いとか言っていたけど、結局はお金とか名誉とか、そんなものの為だけに協力してるんだろ。《ホークアイズ》だって同じようなものさ」
…こんな事を言うべきではない。しかし、我慢ならなかった。別に私のことはいくら馬鹿にしてくれてもいい。
でも、司波さんが、物怪さんが、枯柳さんが。馬鹿にされることは、許せない。
気づけば口から出ていた。
「…彼らに対して、偉そうな口を聞かないでくださいッッッ!!彼らのことを、何も、何も知らないくせにッッッ!!!」
…そこまで言ってしまって、ハッとした。
しまった。感情だけを優先して、心の中をすべてぶちまけてしまった。しかも被害者相手に。
桐生さんは最後の灯火を失ったかのような、悲しい顔をした。
「…ほらね。どうでもいい事件だから、臨時の手伝いだって所詮はゴミだ。…もう聞きたいことは済んだだろ。さっさと帰ってくれ。もう二度と僕に関わるな」
その言葉と同時に、勢いよくドアを閉められた。
…司波さんにあそこまで言ってもらったのに、失敗した。被害者の話を聞けたのはいいが、彼をとても傷つけてしまった。
「…ごめんなさい」
消え入るような声で、私はドア越しに言った。彼に届いたかはわからないけれど。
…事件が解決したら、誠心誠意彼に謝らなければ。
そう決めて私は踵を返し、彼が被害にあった現場の方へ足を運んだ。
コメント
1件
第16話、読み終えたよ〜!😭✨ 健三くんが初めての聞き込みで、相手に感情をぶつけちゃうシーン、めちゃくちゃ心にきた…!「彼らを馬鹿にしないで」って叫ぶところ、普段落ち着いてる健三くんの熱い想いが溢れててグッときたよ…🔥💕 でもそのあとハッと気づいて「ごめんなさい」って呟くところ、切なすぎる…。彼なりの正義感と仲間への想いがあるんだね。次は桐生さんとの関係、修復できるのかな…?事件解決後に謝りに行くって決意した健三くん、応援したくなる!!🌟 奏月さんの描く心理描写、毎回エモすぎてもう…!!次の更新も楽しみにしてるよ〜!⋆♡