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#ライトノベル
umaimon
87
五木友人
6,900
11月1日 同時刻 バーまどろみ
リンのJewelryWordswで出現したモニターに映し出したのは、兵頭拓也と肩を寄り添う白雪の姿だった。
店内にはジャズが流れ、2人の他にも何組かの男女の客がおり、仲睦まじく体を寄せ合っている。
現在いるまどろみの店内からは想像が出来ない光景がモニターに映し出され、当時の記憶が鮮明に映像として流れて行く。
『暫く家を留守にしていてすまないな』
『気にしないで、私達の為に仕事をしてきれてるんだから。雪哉さんが、モモの事を見てくれているから外に出てこれたし。感謝しないといけないね』
『そうだな、白雪にも息抜きが必要だろ?』
兵頭拓也の言葉を聞きながら白雪は、テーブルに置かれたノンアルコールのカクテルのシンデレラを口に運ぶ。
『拓也も、モモのお世話をしてくれて助かってるよ。ベビーシッターが来てくれてる日は、買い物に出れているし』
「モモちゃんにソックリね、母親だから当然なんだけど…」
モニターに映った白雪を見ながら、六郎は椅子に腰を下ろす。
「お姉ちゃん、この人達はだあれ?」
「モモちゃんのママとパパよ」
「モモちゃんって、あの真っ白な女の子の事?」
「そうそう」
六郎の返答を聞いたリンは両手を広げて抱っこを要求、六郎はリンの要求に答えるようにリンを抱き上げ、自身の膝の上に座らせる。
『白雪、聞きたい事があるんだ。回りくどいのは好きじゃないから、単刀直入に聞く。お前、外に男がいるだろ』
「「「!?」」」
兵頭拓也の言葉を聞いた七海達は自分達の耳を疑ってしまう程、兵頭拓也の放った言葉は衝撃が大きかった。
『何言ってるの?私が浮気してると思ってるの?冗談はやめてよ、拓也がいるのに裏切る事はしないわ。誰がそんな事言ったの?椿?あんな奴の言う事を信じるの』
白雪の目つきがキツイものに変わり、兵頭拓也は何も言わずにテーブルの上に何枚か写真を並べる。
写真に写っていたのは女優帽を被った白雪が若い男性と手を繋いで、ラブホテルに入って行く現場が写っており、一枚一枚に写っている男達の顔も違う。
この写真だけ見れば、白雪が兵頭拓也に黙って浮気している事が分かる写真達だった。
『何…、これ。誰がこんな合成写真を作ったのよ』
『探偵に調べさせたんだ、ラブホテルの入り口に設置されている監視カメラも確認してる。君で間違いなかった、サングラスもしていなかっただろ? Jewelry Pupiyを持つアルビノの女性は君しかいない。その写真だって合成なんかじゃないよ、探偵が張り込んで撮ったものだ』
『その探偵が椿とグルなのよ!?アイツ、私が拓也と結婚した事が気に入らなかったし、アイツなら絶対やるわよ!?』
『椿は2ケ月前から軽井沢に仕事で行ってるだろ、この写真は1ヶ月ち最近のものだ。俺の知り合いの探偵事務所の人間だし、椿も面識がない』
白雪は何とか言い訳をするが、正論と確固となる証拠を突き立てられる。
言葉を探す白雪に、兵頭拓也は冷たい視線を向けながら口を開く。
『何で、俺が白雪の浮気に気が付いたと思う?取り立ての回収に出ていた若い衆が、白雪の事をホテル街で見かけた事が始まりだった。それから、お前が組員達にモモの世話を押し付けてるようだな?モモのオムツ替えも、ミルクもした事がないんだろ?本当は』
『そ、そんな事な…』
『ベビーシッターは週に1回の契約だったのに、毎日にしたそうだな。俺に相談もなく契約を変え、シッターが夕方には帰ってしまうから、夜は若い衆に見せてるって?楽しかったか?』
『ち、違うの』
『何が違うんだ?他所に何人も男を作っていたのは事実だろ?同じ相手だと飽きるのか、日替わりランチみたいに取り換えたいのか?そう言う趣味なのか?』
何も言い返せない白雪は、空になったカクテルグラスに視線を落とす事しか出来なかった。
強い口調ではなく、いつもと同じように優しい口調で責められ、2人の間に重苦しい空気が流れる。
兵頭拓也は写真以外にも、ボイスレコーダーで取られた音声や、動画なども探偵事務所で見ていた。
彼の中で沸々と沸き上がる怒りの感情を押し殺し、怒鳴り付けないように白雪に言葉を放っている事を白雪が良く知っている。
その優しが、今の白雪にとって今は苦しいものだった。
「モモの母さんは浮気三昧してたって事か?これって、ボスは知らないよな?」
「知ってたら、白雪さんの行方を探してなかったでしょ。闇市場で売られていたし、拓也さんの事を裏切る筈ないって思ってけど。男好きだったのかもね」
「ここに来て、真実が発覚しちまったな」
五郎と七海が話している間にも、兵頭拓也と白雪の会話が続いて行く。
『何で、モモの世話をしないんだ?男と遊びたいだけじゃないだろ。黙らないで、理由を話してくれ』
『モモの世話をしたくない理由?そんなの聞いたって、何になるの?』
『白雪』
『可愛いと思ってないから、オムツ替えだって汚いからしたくないもの。この際だから言うけど、母乳が出ないから粉ミルクを作るのもめんどくさい。鳴き声もうるさいし、寝てるだけで皆が優しくする。私の居場所だったのに、モモに取られたのよ?だったら、外で居場所を作るしかなじゃない。私、おかしい事なんてしてないわ』
饒舌に語られた言葉の意味を、兵頭拓也は瞬時に理解が出来なかった。
白雪の考え方、モモに対しての愛情がない事が真摯に伝わり、兵頭拓也は白雪の前で吸っていなかった煙草を咥える。
兵頭拓也と白雪が写っているモニターの隣では、椿恭弥と兵頭拓也がまどろみで飲んでいるシーンが映し出され、椿恭弥は嬉しそうな表情を浮かべていた。
『恭弥、誕生日おめでとう。遅くなったけど、これ誕生プレゼント』
『え!?拓也、最近忙しいのに用意してくれてたの?わざわざ良いのに、僕達もう大人なのに』
『大人も子供も関係ないだろ?恭弥の誕生日は遅れても祝いたかったんだ。俺の代わりに引き受けてくれてる仕事も多いだろ?伊織が嫌味言いながら話してたよ』
兵頭拓也の言葉を聞いた椿恭弥は、少し赤くなった頬を指で軽く掻きながら視線を逸らす。
『拓也の所、子供が産まれたばかりでしょ?早く家に帰りたいと思って。まぁ、拓也の仕事を減らしてるつもりだけど、全然減らせてないけど』
『いや、助かってるよ。家になぁ、帰りたいんだけど調べてる事があってさ、それの結果次第かな』
『何、白雪関係?もしかして浮気してるの?拓也がいるのに?』
『あはは、若い衆達から話を聞いてさ?ホテル街で目撃されてるみたいなんだ。知り合いの探偵事務所に依頼した所なんだ』
『僕が調べても良いんだよ?探偵に頼らなくたって…』
椿恭弥の印象が自分達の前と全然印象が違い、狂気的な発言も行動もしない普通の優しい男だ。
ただ、彼に向けている恋心を帯びた視線だけは変わらない。
ガシャーンッ!!!
白雪と兵頭拓也が写っているモニターからガラスの割れる音が聞こえ、七海達が視線を向けると白雪がグラスを床に叩きつけていた。
『この際だから言うけど、拓也を離れさせない為にモモを産んだのよ。結婚なんて書類一枚の契約、簡単に離婚しようと思えば出来るもの。モモを身籠った時、貴方の事を一生縛り付ける事が出来ると思ったわ。拓也も子供が欲しかったし、私から離れる理由はなくなる。アイツから拓也を奪う事も出来たもの、ある意味良かったのかもね』
『お前、そんな理由でモモを産んだのか?俺に言った言葉は嘘だったのか?恭弥から俺を引き離す為だけに?』
『貴方が悪いのよ、私との時間よりもアイツの誕生日を祝いに行った事、許してないのよ。どうして、私の事が好きなら、私の事を最優先しないといけないでしょ?私と出会った頃の拓也は、こんなんじゃなかった。仕事よりも誰よりも、私の事を優先してたじゃない!』
『白雪、お前の事を愛してる。それは変わらない、だけど一緒に居るのは無理だな』
兵頭拓也の言葉を聞いた白雪は目を大きく見開き、唇を震わせながら口を開く。
『何言ってるの?私から離れるつもり?これだけの事で?私の事を捨てる気なの?じょ、冗談でしょ?』
『お前を闇市場から連れ帰って来た時から、最後まで面倒をみるって決めていた。離婚はしない、生活費は毎月振り込むよ。住むところは俺が探す、モモの面倒も俺がみるよ』
『そんな、の分かれるのと同じじゃない。私より、モモの事を選ぶのね』
『白雪、俺は過去の女達に浮気されて別れてきたって話をしたよな?浮気だけは許せない事も、白雪は知っていたよな?』
白雪の反応を見た兵頭拓也は、吸い終わった煙草を乱暴に灰皿に押し当てる。
自分の感情を優先して、兵頭拓也が言っていた事を忘れてしまっていた。
浮気をする事は夫である兵頭拓也を裏切る行為、彼の信頼を失ってしまう行為だった。
ようやく自分がした事の大きさに気付き、何とか言葉を探して兵頭拓也に言い訳をしようと試みる。
『ご、ごめんなさい、拓也の事を傷つけようだなんて本気で思ってなかったの。寂しかったの、拓也が仕事ばかりで私の事を構ってくれなかったから』
『俺、女と付き合ってきて、最後にはみんな同じ事を言ってたよ。言い訳される方が相手を傷付けてると思わないのか?まぁ、思わないから言うんだろうな』
『た、拓也…』
恐る恐る兵頭拓也の肩に触れようとした時、兵頭拓也は白雪に軽蔑の眼差しを向けながら言葉を吐いた。
『触らないでくれ』
『っ…、ごめんなさいっ、本当にごめんなさいっ、許して拓也。もう二度としない、拓也の事裏切ったりし
ないから』
『その言葉も嫌って程聞いたよ。マスター、タクシーを1台呼んでくれないか?割れたグラスも弁償するから』
『すぐに手配しますね、グラスの件はお気になさらないで下さい。ここは、貴方のお店ですので。あ、オーナー、先程ですが椿様からご連絡がありましたよ』
マスターの言葉を聞いた白雪は、体が氷で固まったように身動きが取れなくなった。
『珍しいな、椿が店に連絡するなんて。なんの要件だった?』
『オーナーがまだ店にいらっしゃるなら、一緒に飲みたいとの事でした。軽井沢から戻られたそうですよ?』
『本当か?アイツ、俺が店に居る事を先読みして連絡してきたのか。しょうがない奴だな、椿が来るなら俺は残ろうかな』
『椿様もお喜びになられますよ。あと、5分程でタクシーが到着するそうです』
スマホを片手に持ったマスターの言葉を聞いた兵頭拓也は、白雪の上着を手に持って立ち上がる。
『お前は先に家に帰ってろ、下まで見送るから』
『私を帰らせて、アイツと飲むの!?意味が分からない!拓也、アイツの事が好きなの!?ねぇ、拓也!答えてよ!』
『店で騒ぐのはやめてくれ、他のお客さんの迷惑だ。話は帰ってからにしよう、白雪が納得するまで話をするから』
『そう言う事を聞きたいんじゃないわ!今、この瞬間、アイツを選んだ事が許せないのよ!苛々する、むかつく!』
怒りの感情を露わにする白雪を初めて見た兵頭拓也は、目の前にいる白雪を別人のように思っていた。
穏やかで可憐な白雪の姿はどこにもなく、今いるのは般若の仮面を嵌めた白雪が大声をあげている姿しかない。
今にも暴れ出そうとする白雪の手を掴み、歩き出そうとした時、兵頭拓也の背中に何か固い物が当てられる。
カチャッ。
この音は聞き覚えがあった、いや聞き慣れているものだった。
店内がざわつく中、兵頭拓也1人だけは冷静で、白雪の方に振り返らずに声をかける。
『どこから持ち出した?隠し持っていたのか?若い衆にきつく言っておかないとな』
『他の事を考えられるくらい余裕なんだね。私が引き金を引けないと思てるの?』
白雪はそう言いながら銃口を強く押し付け、引き金に指を掛け、兵頭拓也の反応を伺う。
『一緒に帰るなら、引き金は引かない。どうするの?帰るの?帰らないの?』
『今の状態の白雪と話し合いをしても、一歩通行になるだけだろ?少し時間を置いた方が良い』
兵頭拓也の言葉は白雪にとっては欲しい言葉ではなかった、兵頭拓也も白雪が言ってほしい言葉は分かっていた。
だが兵頭拓也は言わなかった、言おうとすら思っていなかった。
彼の心が白雪から離れてしまったからなのか、信頼がなくなったからなのか分からない。
過去の映像を見ている五郎達にも分からない、真実を知っているのは兵頭拓也本人だけだ。
キィィ…。
まどろみの扉がゆっくりと開かれ、真っ赤な髪を靡かせながら入って来たのは椿恭弥だった。
『何してんの?白雪。拓也に向けてる物が何か、分かってやってんだろうな?』
『貴方に拓也は渡さない、渡すくらいなら殺すわ』
白雪がそう言うと、パンッと風船が破裂したような音が聞こえ、兵頭拓也の口から血が噴き出す。
『ガハッ!?』
『拓也!!!テメェ!!!』
椿恭弥は叫びながらジャケットの胸ポケットから銃を取り出し、銃口を白雪に向ける。
ドンッ!!!
引き金が引かれる前に白雪が兵頭拓也の背中を力強く押し、椿恭弥は引き金を引くのを止めて兵頭拓也の事を抱き留めた。
『キャアアア!!!』
『マスター、救急車を呼んでくれ!早く!』
『わ、分かりました!』
店内には悲鳴声が響き渡り、椿恭弥は傷口を直接手で押さえ止血をしながら、スマホを持っていたマスターに声をかける。
白雪は銃を持ったまま、血を流している兵頭拓也には目も止めずに、走って店内を出て行く。
『拓也、拓也!大丈夫だよ、すぐに救急車が来るからね!?大丈夫だよ!!!』
『ゴホッ、お前の言う通り、女を見る目がなかったなっ、ハハッ…』
『こんな時に話す話題じゃないでしょ!?クソッ、血が止まらないっ』
椿恭弥が手で止血している傷口から血が溢れ、指の隙間からも血が流れ、赤色の絨毯に黒いシミを作る。
兵頭拓也の指先が小刻みに震え、視界がぼやけ始め、自分の顔を覗き込んでいる椿恭弥の顔をほとんど認識出来ていない。
『恭弥…、お前の手が、汚れる。手を放してくれ』
『何言ってるの、話す訳ないだろ!?手だ汚れるなんて、どうだっていい!拓也が、拓也が死ぬ方がっ…!』
『お前の顔がさ、見えなんだよ。視界がぼやけて、声も出しずれぇ…』
『血を流し過ぎて、貧血を起こしてるだけだよ。傷口を塞いで、輸血をしたら大丈夫だよ、大丈夫…』
『頭の良い恭弥なら分かってるだろ?俺の撃たれた場所が…』
椿恭弥は何も答える事が出来なかった、兵頭拓也が助からない事を。
彼自身の中で認めては、理解してしまったら駄目な事だと思考を止めていたからだ。
『軽井沢に行って、ツーリンングに行くって約束したじゃんっ。ペンションに泊ってさ?観光もしようって、話してたよね?良いペンションを見つけたんだよ?自然の中に囲まれてて…、拓也さ自然が好きだったでしょ?』
『…』
『拓也?』
『お前の気持ちに答えてやれなくてごめんな』
兵頭拓也の放った言葉は椿恭弥に大きな衝撃を与え、椿恭弥の恋を終わらせる言葉だった。
『俺の事を、好きって、気持ちに気付いてた。だけど、答えられないまま、見て見ぬふりをしてた…』
『何で、拓也が謝るんだよ。男が男を好きなんて、気持ちが悪いだけだろ!?こんな時にっ、謝らないで良いよ』
『恭弥、ごめんな…』
『拓也…?』
光を失った目を見た椿恭弥は、兵頭拓也の心臓が動かなくなった事をが分かった。
指先が氷のように冷たく、体温も徐々に失われ、彼がこの世で生きていた証さえも消し去ろうとし行く。
ただ、傷口から永遠と流れ出て行く血液を黙って見つめる事しか出来ない。
バンッ!!!
扉が勢いよく開かれ、店内に慌てて入って来たのは神楽ヨウと岡崎伊織の2人、その2人の後ろには泣いている白雪の姿があった。
『何で、何で拓也の事を撃ったんだ椿!!!』
岡崎伊織の言葉を聞いた椿恭弥は、白雪が自分に兵頭拓也を撃ったと嘘をついたのだと瞬時に悟る。
自分の事を嫌っている2人なら、白雪の言葉を疑いもせずに信じる事は明白で、現に岡崎伊織は椿恭弥を鬼の形相で睨みつけていた。
『拓也さんから離れろ!人殺しが!!!』
神楽ヨウはそう言って、椿恭弥から兵頭拓也の体を引き剥がす。
『椿様はオーナーの事を撃っておりませんよっ、撃っ
たのは奥様で…』
『マスター良いよ、コイツ等は何を言っても信じないんだから』
椿恭弥はマスターの言葉を遮りながら立ち上がり、指に付いた兵頭拓也を血液を愛おしそうに舐める。
『拓也が僕のモノにならないから、殺してやったんだよ。僕の気持ちに答えてくれない拓也が悪いだろ?』
『そんな理由だけで拓也さんを殺しのか、お前は!?椿、頭おかしいぞ!?』
『頭がおかしい?今更でしょ、そんな事は。こうなる前に、僕の事を殺しておくべきだったね?ヨウ』
『お前の事を許さない、殺してやる。楽に死なせてやるか、徹底邸に追い込んで殺してやる、殺してやる!』
神楽ヨウに強く抱き締められている兵頭拓也の事を見ながら、椿恭弥は神楽ヨウに顔を近付け言葉を放つ。
『僕が生まれ変わっても、人でいたいって思わせないでくれよ?絶望されてくれるのを楽しみにしてる』
椿恭弥がそう言うと、映像がブツッと音を立てて消え、現れていたモニター達も姿を消す。
「拓也さんを殺したのは、モモの母親だったのかよ。椿は殺してなかったって事だよな?」
「どうするの七海、私達は真実を知ったけど。神楽ヨウに言いに行く?ボスにも伝えるべきよね?」
「いや、2人をここに連れて来た方が良いよ。リンのJewelryWordswを使って、映像を見てもらった方が…」
五郎と六郎に尋ねられた七海が答えていると、何か機械音が鳴っていた事に気が付く。
ピッ、ピッ、ピッ。
「っ!?この音って、まさか!!!」
音が聞こえてくる方向に視線を向ける、古いラジオが
赤色の光を点滅させていたのが見えた。
五郎が気付き、七海が乗っている車椅子を動かし、六郎がリンの手を繋いで走り出すが、ラジオから眩い光を放った瞬間だった。
ボンッ!!!
ドゴォーンッ!!!
大きな衝撃音と共に強い衝撃波が五郎達を襲い、天井が崩れ瓦礫が頭上から容赦なく降り注ぐ。
車椅子から投げ出された七海を五郎が抱き留めるが、降って来た瓦礫は五郎の背中に落下し、六郎は衝撃波に耐えられずにリンの手を放してしまう。
ゴンッと落ちていた瓦礫に頭をぶつけ、リン脳に強い衝撃が走った。
***
CASE リン
痛い、痛い、頭が痛いよ。
六郎お姉ちゃんの名前を呼ぼうとしても声が出ない、足が岩みたいなのに挟まって動けない。
五郎お兄ちゃん達も血を流して倒れてる、煙が出て来て周りが見えない。
右目の視界が真っ赤に染まって、喉が痛くて、なんでだろう?
僕の周りを赤色と青色の金魚達が泳いでいて、埃臭い中で懐かしい煙草の匂いがした。
ブルーベリーのガムみたいなお菓子の匂い、誰かが僕の体を抱き起してくれてる。
いつの間にか煙が晴れていて、お店にいた筈なのに、何でか金魚達が泳ぐ白い部屋の中にいて、目の前には男の人が立っていた。
ボサボサの髪、胸元が開いてるシャツを着ていて、低い声で僕の名前を呼ぶ。
「リン」
「お兄ちゃん、誰?」
「ハハッ、俺が死んで頭おかしくなったか。それぐらいの方が俺は好きだぜ?狂ってる方が面白い」
このお兄ちゃんの事を僕は知ってる、何で忘れていたのかな?
僕は、僕は啓成の事が大好きで、会いたくて仕方がなかったのに。
いつものように美味しそうに煙草を吸う啓成に抱き付き、僕は泣きながら啓成の名前を何度も何度も呼んだ。
慰めの言葉も愛情の言葉を言わずに、啓成はただ僕の頭を優しく撫でてくれた。
コメント
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うわ……第110話、重すぎる……。まず最初に言いたいのは、拓也さんが死んだ経緯がまさか白雪さんの手によるものだったとは。しかもその動機が「恭弥から拓也を奪いたくない」って、嫉妬と所有欲の暴走が悲劇を生んだんですね。モモちゃんを「縛るための道具」として産んだという告白も胸に刺さりました。 そしてラスト、爆発とともに現れた啓成さん……まさかのリン君との再会。彼が「死んで頭おかしくなったか」って言うシーン、狂気と切なさが混ざって震えました。彼の「ブルーベリーのガムのような煙草の匂い」って描写が、リン君にとっては唯一の安心の記憶なんですね。ああ、続きが気になりすぎます……!