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ルティの道案内で、貴族騎士《ノーブルナイト》が住むと言われる国にたどり着いた。ロキュンテからは一本道だった為、迷うことは無く魔物に遭遇することも無かった。
「アックさん、ここがノーブルナイトの国アグエスタですよ! 思ったより近かったですねっ!」
「……ふぅ」
「あれれ? どうかしたんですか~? 回復ドリンク飲みます?」
「そ、それよりも、宿屋に……」
途中まで人化していたフィーサだったが、途中で疲れ果てたせいか剣に戻っていた。スキュラに関しては嫌味の一つですら口に出来ないほど疲れ果てている。
「ではではっ! こちらですよ~」
張り切るルティの案内について行くだけだが、正直なところ手持ちのお金がほとんど無い。おれはルティにそのことをこっそり告げ、一番安めの宿をどうにか探すことが出来た。
しかし、
「え!? 一つの部屋に!?」
「冒険者に貸すお部屋が足りないって言われちゃいまして~」
「そ、そうか、なるほど……」
貴族の国だからなのか、冒険者に対する待遇は最低のようだ。とはいえ、幸いにして大きめのベッドが用意された。それだけでも十分に広かったので、ベッドはフィーサとスキュラが使うことに。
ルティも同じベッドに寝られたのだが、
「いえいえ、わたしは床でもどこでも寝られますのでっ!」
――などと、特に望みも言わず文句も言わなかった。ここはルティの意思を尊重して自由にさせることに。それにあの母親の下でしっかりしつけられているだろうし、頑丈で強い娘ってことなのだろう。
床に荷物を置いたところで、ルティが声をかけてきた。
「アックさん、宿の外に出ませんか?」
「これから……?」
「えっと、一緒に見に行きたいところがありまして~駄目ですか?」
「……行くよ」
疲れ果てている彼女たちを部屋に残し、ルティと二人だけで街に繰り出す。夕刻に差し掛かっていたせいか、酒場や雑貨屋などから光が灯りだしている。
それにしても貴族騎士の国か。いけ好かない貴族が多くいるとしても、やはりここは裕福な国で違いない。ここでなら転送士として稼げるかも。
まずはこの国のことを知る。そのついでに信用できる味方も作っておけば何とかなるはず。
「――アックさん~。聞いてますか~? もしも~し?」
どこかに情報屋がいればいいけど、そうなると酒場に行く意味が――。
「ん?」
「じゃ~ん! 着きました!!」
「アグエスタ剣闘場……剣闘場?」
「そうなんですよ。母さまが転送士が~って話してましたけど、わたしはアックさんのお力をぜひここで使って欲しいなぁと思いまして!」
貴族騎士の国に剣闘場があるとは驚いた。ここで騎士たちは腕を磨いているのだろうか。ここで金を稼ぐにしても中々に難易度が高そうだな。フィーサがいれば問題無く戦えそうだけど。
「そうだな。考えてみるよ」
「ぜひぜひ! アックさんなら勝てますよ!! その為にはもっとドリンクを改良しちゃいます!」
「ほ、ほどほどに頼むよ……」
剣闘場で名声を高めれば、情報屋も自然と近づいて来る……かもしれない。
「ではでは、宿に戻りましょう!」