テラーノベル
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翌日。
社内はいつも通り……に見えて、ジョン・ドウの周りだけ空気が違った。
(……言った……)
デスクに座りながら、昨日のことを何度も思い出す。
(言っちゃった……)
キーボードの上で手が止まる。
(しかも“嫌じゃない”って言われたし……逃げるなって……)
頭を抱えそうになる、その時——
「で?」
背後から声。
「どうだったの、昨夜」
振り向くと、椅子を引いて勝手に座ってくる
シェドレツキー。
その横に腕を組んで立つ
デュセッカー。
「全部見てたくせに聞くんですか!?」
「いや細部は本人の口から聞きたいじゃん?」
「趣味悪いですよ!?」
「で、言ったんだろ」
デュセッカーが核心を突く。
「……はい……」
観念。
「で、返事は」
「……すぐには返せないけど、嫌じゃないって……」
「ほう」
「あと……逃げるなって……」
「ほう」
二人の目の色が変わる。
「それはもう」
シェドレツキーがにやりと笑う。
「ほぼ通ってるね」
「時間の問題だな」
デュセッカーも頷く。
「え、ほんとですか!?」
「むしろここからミスる方が難しい」
「やめてくださいプレッシャー!!」
「でだ」
デュセッカーが机に軽く手をつく。
「ここからが大事だ」
「……はい」
「お前、次どうするつもりだ」
「え」
止まる。
(次……?)
「……考えてなかったです……」
「だろうな」
即答。
「だから教えてやる」
シェドレツキーが身を乗り出す。
「デートだよ」
「デート……」
その単語に顔が熱くなる。
「でもまだ付き合ってないし……」
「だからだよ」
シェドレツキーが指を立てる。
「“ちゃんと誘う”んだよ」
「……!」
「今の状態で自然に流れるのもいいけど」
デュセッカーが続ける。
「一回、意思表示として誘え」
「断られない範囲でな」
「断られない範囲……?」
「ハードルを上げすぎるなってこと」
シェドレツキーが机にメモを書き始める。
「はい、デート指南その1」
勝手に講義開始。
「①重くない誘い方」
「例えば?」
「“この前みたいに、一緒にご飯どうですか?”とか」
「なるほど……」
「いきなり夜景とか言うなよ、引かれるから」
「言いませんよ!?」
「②ジェーンのタイプを考えろ」
デュセッカーが続ける。
「派手なのより、落ち着いた方がいい」
「確かに……」
「人多すぎる場所も避けろ」
「はい……」
(めっちゃ想像つく……)
「③押しすぎるな」
シェドレツキーが真顔になる。
「これはマジで大事」
「え」
「今、向こうも考えてる段階だ」
「……」
「だから“逃げるな”って言われたんだろ?」
「はい」
「なら、ちゃんと待ちながら進め」
「……はい」
少しだけ、真剣な空気。
「④でも引くな」
「どっちですか!?」
「バランスだよ!!」
「難しい!!」
「まあ簡単に言うと」
デュセッカーがまとめる。
「“ちゃんと好意は見せるけど、急かさない”」
「……」
(それ、できるか……?)
その時。
「——何してるの」
静かな声。
三人が一斉に固まる。
振り向くと——
ジェーン。
「会議?」
「いやこれは——」
シェドレツキーが口を開きかける。
その瞬間。
デュセッカーが即座に口を塞ぐ。
「雑談だ」
冷静に誤魔化す。
「そう、雑談!」
「……そう」
ジェーンの視線が、ジョンに向く。
「ジョン」
「は、はい!」
「ちょっといい」
「はい!!」
即立ち上がる。
(今!?)
去っていく二人を見ながら。
「今のタイミング完璧じゃない?」
小声の
シェドレツキー。
「試されてるな」
頷く
デュセッカー。
「行けると思う?」
「行けるだろ」
「だよねぇ」
にやりと笑う。
その頃、ジョンは——
(今誘う!?今!?無理では!?)
心の中で大パニックだった。
でも。
(でも……逃げるなって言われたし……)
少しだけ深呼吸する。
(やるしかない……)
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