テラーノベル
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何でもないことのようにそう言った遥香の足が上に消えて行くのを見ながら、あまりにも自分勝手な思考に人生を狂わされたと……怒りも湧かないくらい啞然としてしまう。
全身の力が抜けてその場に崩れ落ちると、大理石の冷たさを感じながら、私の脳裏には……ううん、頭だけでなく全身に……犯罪者の子どもと言われた声が響いた。
それから、母と二人で縮こまって生活した時期のことや、父は悪くないのに私と母に頭を下げて“苦労をかけてすまない”と何度も謝った姿、三回もサイズを直した中学の制服スカート……辛いと思っていたこと全てが走馬灯のように蘇り、呼吸が浅くなる。
「真奈美?」
最悪……ここで池田が来たのか……
私は池田の方を見ることなく第一家事室に入ると、鍵をかける。
そして、これは明らかに犯罪行為にあたるからと避けていたけれど……最後に遥香をもう一段堕とすことを決めて、あるものに触れた。
ドンドン……
ドアを叩くのは池田に違いない。
いつもはここに鍵をかけることはないから、他の人を呼ばれるとまずいので掃除機を持ってすぐにドアを開けた。
「どうした?もう居場所がなくなると、泣いていたのか?」
「何のことをおっしゃっているのか、分かりませんが?失礼します」
気味の悪い薄ら笑いを直視出来るわけもなく、私は掃除機を持って歩き始める。
居場所がなくなるのは、アナタたちだわ。
「遥香の担当も外されて、唯一味方のように見えたお坊ちゃまも結婚となれば、ここに真奈美の居場所はないだろ?うん?」
うん?のところで、グイっと私の行く手を阻むように前に出た池田は
「この前のように土下座して“愛人にしてください”と乞うならば、前に無礼にも断ったことはなしにしてやってもいい」
とあり得ないことを偉そうに言う。
この男も腐りきっている。
私は掃除機を置いて玄関ホールへと逃げ戻る……追いかけてちょうだい。
「待てよ、逃げんな、真奈美」
そうよ……ここで話をしましょう。
「何をおっしゃったのか、よく分かりませんでした」
「はっ?この前遥香の部屋でしたように、這いつくばって土下座をして“愛人にしてください”と乞うならば、前に無礼にも断ったことはなしにして愛人にしてやってもいいと言っているんだ。愛人になれよ」
「お断りします!」
「そんなことで生きていけるのか?無理だろ?」
「ご心配なく。私は婚約者がいながら愛人になれと何度も言う人の顔も見たくないっ!」
大きい声ではっきりと拒否してから、廊下へと走る私の腕を池田が掴もうと手を伸ばしたようだけど、全力で走る。
「亮一?来ていたの?」
「あぁ……久しぶりに会ったけど、相変わらず真奈美は偉そうだ。挨拶もしないで走って行った」
「ふふっ……しつける?どうしつけようかしら?」
私は掃除機を通り過ぎて自室までたどり着くと、パソコンを操作する。
よし……これで、あの二人は終わりよ。
同時に【奴隷家政婦】の予約投稿が4回とも完了していることも確かめた。
もう、コメントは読み切れないくらいの数だわ。
ドンドンドンドン……
私を呼ぶ騒音を聞きながら
「最後の戦闘ね…」
私は揺れるドアを勢いよく開けた。
コメント
8件
本人達よかれとした言動が一歩一歩地獄の果てに続く道を行ってんの知らないんだね…真奈美ちゃん総仕上げの時が来た?完璧にあの3人を地獄の果て迄追いやって
篤志様は離婚はしないと言っていたけど、これは 母娘酷すぎだし離婚アリじゃないかな。 ( ≖ᴗ≖)ニヤッ会社に泥を塗ったという慰謝料請求もアリかも?だよね。 あー、ワクワクするっꉂ🤭
とうとう最終段階ね!! ハラハラする〰お見合いも気になるけど、 真奈美ちゃんの幸せ目指して叩きのめせー