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「……」


どうしようか。

久々にここ最近の出来事の中で1番くらいには焦っている。


「……」


眩暈を起こし、その場に座り込んでいたらまさかの潜入先のターゲットに見つかってしまうという失態をおかしてしまった。


目を見開いたその人は思い出したかのようにして俺に合わせるように屈む。


「大丈夫?」


「だ、大丈夫です。…すみません、ちょっと眩暈がして…」


ここの雇われ執事として潜入し情報を集めていた。

極力、接触は避けるようにしていたのだが。


「手を貸そう」


「いや、本当に大丈夫です。…って、ぅわ」


素顔を晒してる分、素性がバレた時に面倒になるからだ。


結構ですと出していた手を引かれて立たされる。


「キミは、…新しく入った執事の子かな。執事長から聞いてるよ。とても優秀な人が入ってきたと、彼も喜んでいた」


「…恐縮です」


何故か手を離してくれず距離を少しとるためにも半歩下がる。


「(なんで手ぇ離さないんだよ。離せよ…)」


引くつきそうになる口元を理性で抑えて会釈する。


「それで、僕の部屋の前で何をしていたのかな」


核心をつくようなことを聞かれ更に焦る。

その表情はおくびにも出さずに困った顔を作るが。


「いえ…まだ慣れないもので、いつの間にか迷ってしまったんです。…申し訳ございません…」


お前の部屋に用があったんだよ。

そのタイミングで疲れと寝不足と気を張っているせいで眩暈を起こした。

そして、この屋敷の主人が戻ってきてしまった。


「(くそ、俺の馬鹿野郎)」


「…そう?この階は僕のプライベートなところだから来ちゃダメだよ」


優しげな顔の裏で何を考えているか分からない主人に眉を下げる。


「本当に申し訳ありません…以後、気をつけます」


「……まぁ」


「へ…?」


掴まれたままの手を引かれて耳元で囁かれた。


「キミみたいな可愛い子なら別にいいけどね?」


「、っ…ご、ご冗談を…」


やはり、当たりだ。


「ふふ、…さぁ、仕事に戻りなさい。メイドがキミの事を探していたよ」


パッと離された手。

白手袋や執事服で隠れているが、その下は鳥肌が立っている。


「失礼します」


深々とお辞儀をし、その場を早足に去った。


「……」


「(気持ち悪ぃ…!)」


情報は本当だった。

この屋敷に雇われた執事やメイドが姿を消す、というのは。

あの主人が黒であることは確定した。


あの目、あの表情。

彼ら彼女らに何かをして、用済みになった途端なんらかの方法で消している。


「……はぁ」


潜入は俺の得意分野ではあるし、この見た目なら大丈夫だろうと思っていたが。

調べた資料に並ぶ人たちの容姿は様々であるが、整った顔立ちや可愛げのある人、綺麗な人など、所謂容姿端麗と称される人たちであった。


そう考えつつメイドに要件を聞き、一旦充てられている自室に戻る。


カメラや盗聴器がないことは調べてあるが何が仕掛けられているか分からない為無駄にぺいんとたちには連絡を取れない。


そっと姿見の前に立つ。



『キミみたいな可愛い子なら別にいいけどね?』



思い出してぞわりと鳥肌がまたたつ。


平凡でどこにでもいそうな男だ。

それなりに鍛えている為、奴の好きそうな体つきではない気がするのだが…。


「……」


ただ、ここに潜入する前にぺいんとたちには口酸っぱく忠告された。


『お前可愛いんだから気をつけろよ』


とぺいんとに言われた。

大丈夫だと言うと、


『あなた変なとこ抜けてるんですから、ホント気をつけて下さいよ!』


ともしにがみさんに言われた。

それでも気にしすぎたと言うと、


『いくら鍛えてるからって言っても君の場合はしっかりとした筋肉のつき方じゃなくて、キレイな付き方してるんだから。細いは細いんだよ』


だともクロノアさんに言われた。

自分の見た目を気にしたことないけど、いまいちピンとこなかった。

首を傾げていたら、


『もう!全然伝わってねぇ!』


『あなた自分の見た目に疎すぎでしょ』


『自覚ないからタチが悪い…』


あなたらの見た目の方が周りの目を引くんじゃないの、と言ったら大きく溜息をつかれたことは記憶に新しい。

外見云々は言われ続けているが、やっぱり未だにピンとこない。


「ま、大丈夫でしょ」


姿見に布をかける。

執務用にと置いてくれている椅子に座り、手帳を取り出し得た情報を暗号化して書いていく。


それなりの部屋を充ててくれるのは嬉しいのだが、広すぎる。

物も充分すぎるくらいに支給されている。

それが逆に気持ち悪い。


「大丈夫、だいじょぶ…」


自分に言い聞かせ、一抹の不安を消し去る。

俺がここできちんとしたことをしなければ後に入るぺいんとたちが困るから。


パタンと手帳を閉じ、持ってきていた鍵付きの箱にしまう。


「…さて、執事の仕事に戻るか」


不安げになってる顔を揉んで、にっこりと人当たりのよい笑顔に戻した。

大切なものほど見落としやすかったりする

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