テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
馬車から降りるフィニスとアルテア、そしてエレノアの3人。目の前に広がる大きな湖を一望した。
そこにはまるで孤島のように、湖の中央に存在している大きな森。
「あそこに……ミトラの樹が……」
不思議なものを見るかのような表情で、アルテアは湖に浮かぶ森を眺めていた。
「確かにでかいな……どうやってあそこに行くんだ?」
「うふふ。あそこに長橋が見えるでしょ?そこから森に入れるのよ。行きましょう」
⸻
数日前
城下ギルドに集まるフィニス達。
「それじゃ、行ってくるわね。アオ。お利口にしているのよ?」
「はーい」
そう言ってエレノアがアオの頭を撫でると、そのままギルドの奥の方へと走っていってしまった。
「ヴェスパさん。アオのことを頼みますね」
ヴェスパの方へ身体を向け、深々と頭を下げるエレノア。普段からエレノアが浄化に出かける際はアオを預かっているのだろう。ヴェスパは特段困るような様子もなく、手を軽くあげる。
「いつもなら教会が馬車と運転手を貸してくれるんだがな。今回は別の予定があるらしく、馬車は借りれたんだが……運転手は無理だった。フィニス、お前運転できるか?」
「ん?なんとかなると思うぞ。ガルドのおっちゃんの馬車も何度か運転させてもらったこともあるし」
「よろしくお願いしますね」
隣のアルテアがフィニスに向けて小さく頭を下げる。
「私たちももうすぐ出るけど……お母さんも無理しないでね。ただでさえマナに敏感すぎてすぐ体調崩すから」
エラリスが少しだけ心配そうな表情でエレノアの顔を覗き込む。
「大丈夫よ。今は世界樹のおかげでだいぶ魔力も回復してきてるし……ゼフィリアもいるからね」
「うん……」
「それに、昔はお母さん……あなたのおばあちゃんと一緒に少しだけど冒険だってしてたんだから。これくらい大丈夫よ」
笑顔でエラリスの頭を撫でるエレノア。いつも冷静なエラリスも、この時ばかりはひとりの娘として小さく頷いていた。
「……」
ヴェスパやルシオの後ろでフィニスをじっと見ているニティア。
その視線に気付いたフィニスが、ゆっくりとニティアへ近づいた。
「うん。ちゃんとやりなさいよ」
「お前もな」
フィニスがニティアの頭をポンポンと軽く叩く。
「んじゃ、行ってくるわ」
いつもの明るい笑顔で言うフィニス。
「頼んだわよ」
その言葉に反応するかのように、力強い眼差しでフィニスを見つめ返すニティア。
その目を見たフィニスはもう一度ふっと笑い、ニティアに背を向け、アルテア、エレノアと共にギルドを後にするのであった。
⸻
長橋の前にたどり着いたフィニス達。3人は馬車を降り、橋の前に立つ兵士たちのところへ向かった。
「あ、エレノアさん、お疲れ様です。そちらの方は……?」
エレノアの姿を見るなり、笑顔で話しかけてくる1人の兵士。
「いつもご苦労様です。この2人はギルドのお友達、フィニスさんとアルテアちゃんよ」
「フィニスさんとアルテアさんですね……少しお待ちください」
もう1人の兵士に2人の名前を告げると、その兵士が隣に立っている小さな小屋へと入っていった。
「申し訳ございません。魔女を撃退した英雄のフィニス様とアルテア様ですよね?大丈夫だとは思いますが……ここに来るのが初めてのようですので……一応規則通り、入場許可の有無を確認させてください」
フィニスとアルテアに頭を下げる兵士。
「あ、謝らないでください!お仕事をしっかりとされていると言うことですから……いつもお疲れ様です」
それに釣られ、兵士に向けて頭を下げるアルテア。2人がお互いペコペコしている様子を見て、フィニスがくすりと笑った。
しばらく兵士と雑談をしていると、小屋から先ほどの兵士が出てきた。
「お待たせいたしました。つい先日、お二人の許可が降りておりましたので、どうぞお入りください」
「さすがヴェスパ……その辺の手続きも抜かりないな……ありがとな!」
「ですね。それではいきましょう」
兵士に軽く会釈をするアルテアとエレノア。先に行くフィニスを追いかけるように長橋を渡っていった。
そんな3人を見送る兵士に、小屋から戻った兵士が口を開いた。
「なぁ、大神官様がこれから来るってちゃんと伝えたか?」
「あ……言ってないわ……」
「マジか……まぁ別に許可はあるから問題はないだろうけど」
「だってさ……あんな美人のエレノアさんに……英雄のフィニス様とアルテア様だぜ?もう話せるだけで舞い上がっちゃってそんなことすっかり頭から抜けてたよ……」
「それは分からんでもないな……英雄って言うから、もっと怖い感じなのかと思ったら、フィニス様も明るくて話しやすそうだったし、アルテア様も大神官様みたいに美人だったしな」
「ほんとそれ!」
「まぁ、もしかしたらすれ違いで会わないかもしれないし、気にしなくてもいいか」
「これから来る大神官様に伝えれば大丈夫……でしょ……」
再び橋を歩き、森へと入っていくフィニス達を見送りながら、2人の兵士はそれぞれ持ち場へと戻っていった。
#ドラマ
シュメール
161
羽海汐遠
16,054
コメント
1件
うわぁ、123話お疲れ様です……! フィニスとニティアの「ちゃんとやりなさいよ」「お前もな」のやり取り、すごくじんときました。重なる信頼と覚悟が詰まってて、思わず目を何度も往復しちゃいました。あと、兵士さんたちの「英雄って言うからもっと怖い感じかと思ったら」っていう台詞、登場人物たちの人柄がちゃんと伝わってくる描写で好きです。湖に浮かぶ森とか、これからどうなるんだろう……ドキドキしながら読みました。ありがとうございます🌙