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「あぁ……気持ちいい♡」
「本当ですね。何といいますか……とても澄んでいて、落ち着きます」
「これも教会にちゃんと働きかけてくれたヴェスパのおかげだな」
橋を渡り、森に入ってすぐ大きく伸びをするエレノア。アルテアも大きく深呼吸をし、普段よりも穏やかそうな顔をしている。
魔力やマナを感じ取れないフィニスでさえ、ここの空気はいつも以上に透き通っているような感覚を肌で感じていた。
「世界樹の前はもっと凄いのよ?身体の奥から浄化されていく感じなの」
余程ここの空気が好きなのだろう。エレノアの足が軽やかになっていくのが見て取れ、ふと笑みを溢してしまうフィニス達。
「まだ先なのか?」
そんなエレノアを見て、フィニスが尋ねる。
「この森の中心部だから……まだもう少し歩くわね」
軽くスキップをするように前を歩いていくエレノア。その様子を見ながら後ろを歩くフィニスとアルテア。
「なぁアルテア。ひとつ聞いていいか?」
フィニスの改まった言い方に首を傾げるアルテア。
「はい?何でしょう?」
「ルミナ」
「!?」
「……聖光十字教会の大神官って、どんな人なんだ?」
「……」
「いやいや!全然話したくなかったらいいんだ!悪い悪い」
黙り込むアルテアに、フィニスは焦って謝るも、そんなフィニスを見てアルテアは優しく微笑んだ。
「いえいえ、大丈夫ですよ!……私、親がいないんです」
「ん?」
「気がついた時には、聖光十字教会が運営している孤児院にいました」
視線を上に向けるアルテア。
「月に何度か、教会の人たちが視察や巡礼に来てくださるんですけど……毎回来てくれていたのが……当時はただのシスターだったルミナお姉ちゃんだったんです」
懐かしそうに微笑みながら、アルテアが話を続ける。
「いつも笑顔で優しくて……たまに巡礼とかとは関係なく遊びにも来てくれて……そんなルミナお姉ちゃんに憧れて、私も教会の人間になろうと頑張りました」
「そうだったのか」
フィニスの相槌に笑顔で反応するアルテア。
「それから数年、頑張りが認められた私は、7才で教会に見習いシスターとして働くことが認められたんです」
「7才で?!すごいな……」
いつも謙虚なアルテアが、少しだけ自慢げに胸を張って笑っている。
「その頃にはルミナお姉ちゃんは神官になっていましたが……私が教会で働くことを知ったルミナお姉ちゃんは笑顔で喜んでくれて、いつも一緒にお祈りや巡礼をしていました」
「……」
「誰にでも優しいルミナお姉ちゃん。当然、当時の大神官様からも認められていたのでしょう。今から5年前。大神官様が突如その座を降りるとなった際……次の大神官に任命されたのがルミナお姉ちゃんでした」
「……すごいな」
少しだけ悲しそうな笑顔になるアルテア。それでも、ルミナはアルテアにとって、とても大切な存在なのだろう。普段そこまで自分のことを喋らないアルテアが、話を止めることなくフィニスに話し続ける。
「史上最年少の大神官。もちろん、反対する人も多少はいたらしいですが……」
「まぁ……若いってだけで気に入らない人とかもいそうだもんな」
「はい……その結果、ルミナお姉ちゃんは大神官だからという理由で、教会の奥で執務や祈りをすることが多くなり……私もあまり会うことができなくなってしまいました」
目を伏せるアルテア。
「そしてその頃には……大神官のルミナお姉ちゃんを支持する派閥と……ルミナお姉ちゃんみたいな自己犠牲ばかりではダメ。教会を大きく、信者を増やし、献金も増やそうという派閥のふたつに大きく分かれていったんです」
一瞬の静寂。木々の揺れる音がフィニス達の耳に届いた。
「それでも、私は大好きなルミナお姉ちゃんの真似をして、巡礼や視察をしていたのですが……それが上層部には気に入らなかったのでしょうね」
「……」
「あいつは次の大神官を狙っている。ルミナ様と仲がいいから調子に乗っている……と。その結果が、灯喰病の一件に結びつき、それを利用され……私は教会を追放されてしまったんです……」
「ひでぇ話だ」
「ずっと……ルミナお姉ちゃんにも嫌われてしまったんだって思っていたんです……でも……」
アルテアの目に涙が溜まっていくのが分かった。
「ヴェスパの話振りから……ルミナはアルテアが追放されるまで……そのことを知らなかったんだろうな」
「……」
「……会いに行ったらいいさ。教会を追放されていたとしても、今回のこの森に入る許可をくれたことのお礼を言いにいくのには関係ないだろ?別に俺も一緒に行ってやるし」
フィニスの言葉に、目に涙を溜めながら笑うアルテア。
「そうですね!でも大丈夫です。王都へ戻ったら、教会へ行ってみます」
「おう」
涙を一粒だけ溢したあと、袖で涙を拭うアルテア。
「エレノアさん、だいぶ前に行っちゃいましたね。追いかけましょう」
そう言うと、アルテアは少しだけ軽やかな足取りでエレノアを追いかけていった。
コメント
1件
アルテアの過去がこんなに切なかったなんて……。ルミナお姉ちゃんへの憧れと、追放されてしまった無念さが重なって、胸がぎゅっとなりました。でもフィニスが「会いに行ったらいいさ」って背中を押してくれて、アルテアが涙を拭いて前を向くラストが本当に温かかったです。この先、ルミナと再会できる日が来ますように……🌷