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第13話:「選ばれし者の村」
📷 シーン1:山を越えて
険しい断崖を越えた先に、それはあった。
斜面にへばりつくように広がる村落。尖った屋根と丸い屋根が混ざる奇妙な建築群。碧色の布が至る所に張られ、風にはためいている。石段には、碧族化されたカムリン族が静かに目を閉じ、瞑想していた。
ナヴィスはフードを外し、風に吹かれる銀髪を手で押さえる。横にはゼイン。黒いロングジャケットを翻し、無表情に村を見つめていた。
「……まるで、時が止まってるみたいだな」
ゼインの呟きに、すずかAIの声が耳に届く。
「この村は“カシェン”と呼ばれています。カムリン族の中でも、碧族のみが住む聖域に指定されています」
ギアが後ろで肩をすくめる。
「へぇ、選ばれし者の村ってわけか。気取ってやがるな」
📷 シーン2:教義と祈り
ナヴィスたちは村の中央の広場に案内される。そこでは、碧色の煙を炊きながら、僧衣を纏った碧族が経文のような詩を唱えていた。
「我ら、碧なる血を継ぐ者。
古き支配を捨て、新たな秩序を築かん。
選ばれし者に、道を。
碧族に、天命を——」
「……完全に宗教だな、これは」
ゼインが小声で呟いた。
ジャムツァが静かに口を開く。彼の黒と金の僧衣は、周囲の者たちよりも荘厳で、まさに“ニェンパ・ラマ(導く者)”の風格を漂わせていた。
「言葉ではない、“存在そのもの”が民を導く。ここに来た時、お前たちはまだ“外”の碧族だったが……今、お前たちは“中”に入った」
ナヴィスはその言葉を、真っ直ぐに受け止める。
「でも俺たちは、信者になりに来たわけじゃない。
共に戦える“仲間”がいるか、それを見に来たんだ」
📷 シーン3:突然の襲撃
その時、すずかAIが警告を発する。
「南東の山腹に反応。赫察総局の無人偵察機を確認。熱源感知。5体、接近中」
ギアが目を細める。
「隠密仕様だな……気づかれてるかも」
ゼインが即座に前へ出る。
「やるしかねぇな。《シャドウ・スラッシュ》!」
黒いフラクタルの軌跡が空を裂き、接近する偵察機のうち1体を撃墜。
「《スモークフォールド》」
ナヴィスが防御フラクタルを展開し、碧族たちを包み込む。
ギアが後方支援を開始。
「EMPフラクタル弾装填、カウント3……発射!」
閃光が走り、空の偵察機がひとつ、またひとつと墜落していく。
ジャムツァも手をかざす。
「《グラビティ・ドメイン》」
重力の波動が炸裂し、最後の1体を地面へ引きずり落とすように撃墜。
「敵は赫察総局の目……ここも、そう長くは持たぬ」
📷 シーン4:ナヴィスの決意
日が沈み始め、村に薄碧の灯が灯る。
ナヴィスはカメラを手に、傷ついた偵察機の残骸を映しながら呟く。
「すずか、記録データを整理。中国軍が“碧族自治区”を監視している証拠として、優先度Aで暗号化。ギア、頼む」
「へいへい、こっちでもう中継ルート通して送ってるよ。何日かすれば日本に届く」
すずかAIの声が優しく響く。
「データの転送は継続中です。ナヴィス、あなたの記録が、碧族の未来を変える鍵になります」
ナヴィスは遠くの山々を見つめる。
「だったら……ちゃんと写さなきゃな。
この村の光も、闇も……すべて」