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39を込めた日常を

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39を込めた日常を

2 - 第1話

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2025年03月03日

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『僕、日常組辞めます』

その言葉が聞こえた瞬間に、反応することができなかった。

「……え」

蚊の鳴くような声が喉から出た。

「な、なんで、?なんで急、に?」

俺の声が、たどたどしくなる。

『…ごめんなさい』

しにがみくんは小さい声で謝ってきた。

脳の処理が追いつかない。そんな俺に、追い打ちをかける者がいた。

……2人。

『……実は、俺もそう言おうとしてた、今日』

またまた言いにくそうな声でそう言ったのは、日常組のリーダー、クロノアさんだった。

そして、

『……俺も、ごめん』

と、トラゾーもアイコンをチカチカさせた。

「…は、ちょ、ちょっと待って、みんな急になに、?」

ドッキリか、と困惑する俺に、皆は少し黙ってから、クロノアさんが声を出した。

『…この前、お偉いさんが来るコンサートに出ませんか、ってお誘いが来て』

『お偉いさんの前で失敗はできないと思って、日常組を脱退してクラリネットに集中したくて…さ、笑』

そんなことを彼は言った。

「…日常組よりも、クラリネットを優先するんですか、」

『…日常組ももちろん大事だけど、俺は、とりあえずクラリネットに集中したいんだ』

……そんな。

言葉がでない。

『……僕、は』

続けて、しにがみくんが口を開いた。

『僕は、とあるゲーム会社からのお誘いで、』

『ゲームクリエイターにならないかと言われました』

『日常組の活動も楽しいんですけど…僕はやっぱり……』

そこで言葉が区切れた。

「…トラゾー、は? 」

俺は最後に残ったトラゾーを促した。何となく予想はついている。

『…そろそろ、子供が欲しいなって、俺も奥さんも思ってて』

『子供のために、別の仕事を探したいんだ』

……みんな、そう言った。

「…日常組の、」

気づけば俺は口を開いていた。

「お前らの日常組への熱意、って…それだけだったのかよ、」

顔が見えなくてよかった、と思った。多分俺は泣いていた。

「クロノアさんも、日常組の活動と両立すればいいただろ、」

「しにがみも、日常組でゲームクリエイター出来てんじゃんよ、」

「…トラゾーさんだつて、子供のことが落ち着くまで休んで、戻ってきたらいいじゃんか」

いつも見ている画面が、違って見える。視界が潤んで歪んでいるからかもしれない。

「…お前らが、そんなこと言うなら、もう俺は知らない」

「13周年も、俺一人で祝うから」

「…今までありがとな」

俺は呟いて、doscordを抜けた。

そのままパソコンの画面を閉じて、俺は泣いた。

しばらく経ったあと、俺はふっと顔を上げた。

……嫌だった。

こんな、こんな形で、日常組が終わるなんて。

嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ、

俺は決意した。

絶対、日常組は終わらせないと。

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