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検査の結果の末、ルナリスは妊娠していた事が発覚。病院から帰宅し、夫と共にヴェルリナ達が待つあの施設へ戻ったのだった。
「ただいま」
「ルナリスさん……!?、それで……検査結果の方は……?」
そうエリミアから質問され、ルナリスと夫グルーダは病院での医師からの話や結果を報告した。
「なるほど……妊娠したのね、それじゃもしかして数週間前からルナリスさんにおきていた突然の体調不良の原因は妊娠による初期症状だったって事ね」
「ええ、ご心配とご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
そうルナリスが陳謝すると、何も気にしてないとそう言うように優しく微笑む顔で、「何も謝る事はないわ、妊娠したって事はこれからまたルナリスさん達一家に新しい家族が出来ると言う事、そしてそれはヴェルリナちゃんにとっても今後大きな支えになると思うし、とにかく先ずはその為にも今はご自身の身体を第一にしていって欲しい」
「ありがとう……」
少し話しを開いた後に今度はルナリスの方から自分達が留守にしていた間のヴェルリナの様子を尋ねた。
「正直何とも言えない。数ヶ月前の状態に比べたら多は回復してるように感じるけど、それくらい……けど近々また悪魔祓いを行うつもりよ」
「お二人が留守にしている間に行っていても良かったが、前提として彼女は貴女方夫婦の娘だ、なら娘の事を傍で見守りたいと思うのが親としての当然の真理でもあると思ったんだ」
「態々そんなこ事まで考えくださってたなんて、ほんとに……ほんとにありがとう……」
「貴女方ルビネット一家の皆さんとは本当に長い時間を共に同伴させて貰ってる、ヴェルリナちゃんの事は必ず救い出すと誓った、だから我々に出来る事があるのなら、それを全力でやるのみよ」
そんな事を話していると、休養していたヴェルリナが起き上がり、「ママ…………大丈夫だったの……?ママ、何処か具合悪いの…?」
と彼女は心配な眼差しで母親を見つめ、そう話しかけた。
それに対し、ルナリスは娘にそっと近づき、自身のお腹の中に二人目となる赤ちゃんが出来た事を告げた。
「え…………?私、お姉ちゃんになるの……?」
「ええ、そうよ。今日妊娠が分かったからまだ会えるのは随分まだ先の話になるけど、産まれたら貴女はお姉ちゃんになるわ、心配かけてごめんね」
「ううん、ママ……良かった」
そう話すヴェルリナ。しかし、未だ本調子とは言えない状態。会話はスムーズに出来ているぐらいには重体ではなくなったが、だからといって本格的な回復にはまだ程遠い状態が続いてる。
「少しずつでもヴェルリナの容態が良くなっていって安心したわ」
今の状態なら悪魔祓いを再開しても良さそうだ、そして数日の経過観察後……数ヶ月ぶりの悪魔祓いを執行する為、あの儀式部屋へ足を踏み入れる。
「ヴェルリナ、大丈夫よ。貴女なら悪魔に打ち克てるわ、大丈夫……貴女は決して弱くなんかない」
「ありがとう………ママ……」
そうして両親に見守られる中、着々と儀式の準備が進められている。
「さて、準備は整った。儀式を始めよう」
アルベスがそう言い終えると同時に等間隔で立っている大勢の祓魔師達が十字架を片手に聖書を詠唱し始めた。
「……………………‥」
悪魔祓いを開始した途端、ヴェルリナは視線をキョロキョロとし挙動不審で終息落ち着かない……次の瞬間、次第に肩や頭などに違和感が生じ……念仏のような悪魔祓いの詠唱に耳を塞ぎ、怯える仕草を見せる。
「ヴェルリナ‥………」
十字架を片手に持ち、聖書の詠唱を止める事なく続けていると悪魔は誘われるようにヴェルリナの意識を乗っ取った。
「………………………………」
彼女はガクッと前に倒れ込み、顔を上げる瞬間から人間ではない……恐ろしい魔獣のような声で唸り、目付きも鋭くなっていた。
本来だと悪魔憑きの状態になった者を祓う為の儀式なのだが、彼女の場合………悪魔はこの施設にいる者達が祓魔師と言う事を認知している。その為警戒して都合よく悪魔憑きの状況が生じない。
「がああああああああああ」
「続けよう」
悪魔との直接的な対話は交えず、悪魔祓いの儀式一つに集中する事にした祓魔師達。仮に対話したとしても抵抗や人間に対しての憎悪などの言葉しか悪魔の口からは出てこない。
ましてやヴェルリナの身体から離れる事さえ毛頭ないと言う事はとっくに分かっている。だからこそ悪魔祓いを全て最後の段階までやり切るのみ、ただそれだけ。
「ははははははっ……!はははははははっ……!!」
悪魔は余裕が有り余ってるようで、その程度か?とでも言いたげに嘲笑っている。悪魔というのは人間という生き物を下等生物、愚かで弱者に等しい……とそんな思想を持ち、何より神の存在やそれを信じ、信仰する者を険悪している。
「ああああああああ……ああああああ!」
その後も悪魔祓いの儀式は続き、祓魔師達は決して悪魔に屈する事なく抗いヴェルリナに棲み憑く悪魔を着実に消滅させていく。
「…………………………………………」
すると突然ヴェルリナは白目になり、上を向いたまま硬直状態に……口からは血がだらりと垂れ、硬直が解けたと思えばその直後に項垂れ、だが悪魔の気配はまだ鎮まっていない、悪魔祓いの詠唱を続行する。
「耳障りだ、鬱陶しい」
悪魔は終わらない悪魔祓いの儀式に苛立ち、攻撃的な威嚇をする。悪魔祓いの儀式は数時間にも亘り、続けられ、悪魔は苛立ちの感情を剥き出しにするも、威勢は崩さず祓魔師達に鋭い眼光で睨みつける。
そうして悪魔憑きの状態は叙々に収まっていき、彼女は気絶した。
「これで‥‥取り敢えず今回のところは終わりね、悪魔の状況を見ていると悪魔の力は全く弱体化していない、まるで私達は悪魔に掌で転がされて弄ばれてる気分だわ」
「怨念、憎悪、そして呪術と呪物……それ程彼女に取り憑いた悪魔をこの世に呼び寄せたあの悪魔崇拝者と呪術師らの恨みが根深かったという事の証だろう、祭壇や呪物を封印しても尚この現状……これは予想以上に長期的な悪魔祓いをしていかなければならないようだ、数年……数十年は覚悟が必要だ」
「ええ、彼女の状態を見ても私達が当初から見積もっていた期間よりも更に延長していかないと……とにかく悪魔祓いは今後も変わらず続けていきましょう」
それからも………四回目、五回、六回と段階的に悪魔祓いの頻度を増やし、ヴェルリナを蝕んでいる悪魔の浄化を進める。
次第に理性や正気を保てられるようになり、悪魔の声に対し、抗えるようになるなど彼女の体力、自我共に戻りつつあり、意思疎通や日常生活への支障は多少は軽減されたものの、まだまだ完全解決というには時間がかかりそうだ。
「彼女の顔色、数年前に比べたら良くはなってるけど、それでもまだ元気になったとは思えないわね……悪魔に追い詰められ続けてるからか、窶れが治ってない」
「悪魔祓いを続けてる、その効力が出てきてヴェルリナちゃんの容態も少しずつではあるけど良い傾向に向かってる、それだけでも十分じゃないかな」
そう若年祓魔師は前向きな姿勢を述べる。彼の言葉通り、数ヶ月前までは重症で危篤状態……何時亡くなってもおかしくない、そんな瀬戸際に追い詰められる事が日常茶飯事だったが、そんな容態も今ではちょっとずつ元気を取り戻してきており、ホッとして胸を撫で下ろす。
「……………………ふふっ」
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