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「それじゃあ、ヴェルリナちゃん。何時ものように暴れない為に鎖と縄を付けるわね」
「うん…………」
もう何度目だろうか、数えきれない程の執行回数を重ねている悪魔祓いの儀式。しかしヴェルリナに憑依して危機に陥れている悪魔はまだまだ全身に纏わりつく事をやめず……、呪物や祭壇、呪術師が描けた怨念は途絶える事を知らず、今も尚彼女を苦しめている。
「それじゃあ、始めるわよ」
「ああ」
悪魔祓いは開始され、彼女の身体中に蠢く悪魔が目覚め暴れ始める。その頃、一方でルナリスは妊娠中ということもあって以降の期間は出産の日に向けて休息の時間を優先する事となった。
「ヴェルリナ……大丈夫なのよね」
「その心配は不要ですよ、祓魔師が大勢いますし……それに少しずつではありますが、ヴェルリナちゃんの身体に棲みついてしまった悪魔を祓う事が出来ている、悪魔による影響も僅かなものではあるけど、改善されてるのもまた事実ですから」
ルナリスは不安を感じながら、悪魔祓いの儀式が終わるまで待ち続ける。赤子を身籠ってる為とはいえ、娘の事を何より第一に優先し、溺愛している親の身としては……どうしても不安や心配な気持ちに駆られてしまう。
そうしてルナリス達を他所に悪魔祓いは進行し、ヴェルリナの身体中に棲み憑いている悪魔は怒り狂い彼女の人格を強奪、自我はあっという間に喪失。
「ああああああああああああっ!!!」
何度も執拗に悪魔祓いが執行され続けられてるからか、悪魔が激怒しそれならば…………とヴェルリナに対し、自殺するよう命令を下し……「ああああああっ………ああああああ」
彼女は白目を向いて自らの手で首を圧迫し本当に自殺を図ろうとしていた。
それを目の前にエリミア達はヴェルリナの自殺行動を止めようと接近……しかし、何れだけの人数で手を首から離そうと緩めようとするも、彼女の力は強く振り払う事も敵わない。
「まずいわ、このままじゃヴェルリナちゃんが……」
ヴェルリナは更に自らを自傷し、無理矢理にでも死のうと能動的になり……無我夢中に自殺行動を…‥。
「ヴェルリナちゃん!、それだけはやめて……!お願い、その手を止めて……!」
だが、悪魔に意識諸共乗っ取られ、自分自身の自我などとっくに無くなってる彼女にはどんな言葉であろうとも届かない。
「儀式を続けよう、何れは奴に根を上げる瞬間が必ず来る筈だ」
「ええ、そうね…………」
祓魔師達は十字架を彼女に向けたまま、聖書の言葉を詠唱。悪魔にとってキリストという神は軽蔑する存在だ。
幾ら耐性がつこうが、長期的な悪魔祓いを延々と続けられるとなると今でなくとも、何れは耐えられなくなり、祓魔師の前に降参する時が来る筈、そう信じてエリミア達は悪魔祓いで対抗し続ける。
「ヴェルリナちゃん…………」
悪魔祓いが行われている最中、別室で他の祓魔師と共にじっと儀式が終わるまで待機しているルナリスは依然として不安を募らせたまま。
そしてお腹に宿している赤子に想いを馳せながら待つ。そうしていると漸く儀式を終え、エリミア達が戻ってきて、ヴェルリナは儀式後の副反応による疲労でヘトヘトになっておりすぐさま母親の方に寄りついた。
「ママ……………………」
「今回も良く頑張ったわね 」
ルナリスは優しくヴェルリナの頭を撫で、ぎゅっと抱きしめた。
「娘さんも、それにルナリスさんの方からも互いに心から愛し合ってる……ヴェルリナちゃん、ご両親から沢山の愛情を注いで貰って幸せ者ね 」
「私はこの子の母親ですし、親として当然の事をしているだけに過ぎないわ。それにヴェルリナは私達夫婦だけが愛情を注いでるんじゃない、エリミア達からも沢山の愛情を貰ってる、ほんとに感謝してもしきれないわ」
「悪魔憑きに苦しむ人達を助けるのが我々の使命、しかも悪魔憑きの多く未成年の子供なのが実情……それに向き合う為には寄り添う心を忘れちゃいけない……こうして改めて考えると、私達がしてる事も私達なりの愛情表現……なのかもしれない」
「言われてみれば確かにそうなのかもね」
一先ずの悪魔祓いの儀式を終え、ヴェルリナは母からや若年祓魔師達はに寄りついて甘えまくりの様子で特に抱擁が膝枕などを好んでるようで、ルナリスらは彼女がして欲しいという要望に応じて接する。
「年齢は成長していくけど、甘えたがり屋な無邪気さは幾つになっても変わらないわね。ふふっ、そんなとこが何より可愛いのよね」
そう言ってルナリスは愛娘であるヴェルリナの頭をそっと撫でる。そんな愛情深く心からの溺愛のような愛情を持って大切に愛し続けてる両親を様子を静かに見守エリミア達。
大切な家族が突然と悪魔に憑依されて悪魔憑きという状況に酷く苦しめられ、一時は別人のように変貌した娘に対し、恐怖心はあるものの彼女の事に寄り添い続けてる。
そんな一家の揺るぎない愛情と絆で結ばれているルビネット一家に感心する。
「こんなにも深い関係性を維持できてるのはほんとに素晴らしい事よ」
「そういうものじゃないの‥……?」
「悪魔事件……悪魔憑きの当事者…つまり今回の件で言うとヴェルリナちゃん……憑依されてしまった側は悪魔に全てをコントロールされるんだ、それにより家族全体の関係性に異常や亀裂が入って関係崩壊を招いてる事例も珍しい事ではない」
「…………だから、関係性が崩れてない事に驚いてたのね」
そう話している間もヴェルリナはシスターや祓魔師達、母親に寄り付いては甘え遊んでというような素振りを見せる。
「ふふっ、沢山甘えていいわよ。ずっと精神的にも辛い事続きだったんだもの、甘えてきてくれるようになったのは貴女が元気になってきた証拠ね」
そんな事をしているとあっという間に時間は過ぎ去り、同じような日常が流れる。その中で儀式は少しずつ、ヴェルリナに棲みついてる無数の悪魔に対し、悪魔祓いを行い続ける。だが、悪魔の力は全く弱体化せずにヴェルリナへの怨念や憎悪の力が途端に強まり、自傷行為が暫し目立ってきている。
「容態に大きな変化はないけど精神不安定……更に自傷行為が頻発して自殺行動もエスカレート……精神状態の方は酷く荒れてるみたいね」
数日前まで笑顔を良く見せていた彼女とはうって変わって目つきは窶れ、涙脆くなり結局数ヶ月前までの状態に逆戻りの状況になってしまった。
「ヴェルリナ‥……………………」
「また振り出しに戻ってしまったわね、正直安易にいい傾向に向き始めた時から少し違和感は感じていたけど、まさかその不安が的中してしまうなんて……」
「我々の反応で弄んでるんだろう、幸い身体への影響は少ないようだが、精神状態の面で言えばかなり深刻だ」
ヴェルリナは時より手足が震え脳には激痛が襲い、情緒は非常に不安定で精神の落ち込みが脆く自責、リストカットといった自傷行動が目立ち、突然暴力的になったりと感情の抑制が出来なくなり、悲観的感情に覆われてるようになってしまったヴェルリナ。
「ううう……ううっ…………ぐすっ………ぐすっ……」
彼女は啜り泣き、心の奥底から湧き上がってくるストレスや苛立ちが彼女を更に孤立感や悲観的な感情に誘い込む。
まさに悪循環が再来してしまっている。
「ヴェルリナ…………苦しいよね……辛いよね……でも貴女には私達が居るわ」
「分かってる……分かってる筈なのに、無性に苛立ってくるの‥……、苛々する……こんな私に生きてる価値なんてないよ、ねえ……死なせてよ」
彼女の目に光はなく虚な目で乱心状態。それから次第に身体的ストレスへと繋がってしまい、呼吸器や心肺、脳など彼女の全身に絶え間ない苦しみが襲い掛かる。
「悪魔は随分と怒りが鎮まらないようね、まあそれもその筈よ。悪魔祓いを長期的にされて
るなんて事は悪魔からしたら終わりがない地獄そのもの」
「此方が優勢になったのは良い事だが、その分彼女に降りかかる苦痛は増幅している、余計な足掻きをされる事になるとは…… 」
「けどが考え方を変えるならそれ程悪魔は今余裕が保てなくなってるっていう事の何よりの証明になる、悪魔の完全消滅はまだまだ先の話……出口が中々見えない」
容態が悪化したかと思えば良好になったり、安堵しているとまた急激に容態が急変……ヴェルリナの身体は無数の悪魔によって思う壺に誘導されるばかり、しかしそれでも以前よりは彼女の現状の状態というのは間違いなく良くなってる、というのもまた事実。
「っ‥………………うううう‥…………っ」
彼女は蹲って啜り泣き、泣いて泣いてもまた溢れてくる。自分の本来の心情とは相反した感情に苦しめられ、締め付けられて益々彼女という人格や意識は段々ゆっくりと喪失が進んでいく。
「………………………ヴェルリナ」
「ごめんなさい‥…………ごめんなさい……私って邪魔だよね……私なんて…………私なんて……」
ヴェルリナは自己否定感に蝕められ、孤独感や悲観的感情からの束縛から逃れられない彼女に対し、エリミア達はヴェルリナに寄り添い、彼女の心身を支え続ける。
そんな中、ルナリスの妊娠はあっという間に後期に入り、胎動も頻繁に感じるようになっていた。「この子と会える瞬間が近づいてきてる、待ち遠しいわ。それにヴェルリナの精神的な支えになるような存在が増えたら、ヴェルリナも悪魔に歯向かう勇気を取り戻せるかもしれない」
妊娠は5か月といったところだろう。胎動も度々皮膚を押し内側から元気に蹴って動いてるのをそっと感じる。
「…………………………………………」
ヴェルリナの精神状態は荒れと沈みを繰り返し孤独感や悲しみ、苛立ちでぐちゃぐちゃ……更にあらゆる苦痛が彼女を蝕み、彼女の表情から笑顔が消え去った。
「ヴェルリナちゃん、辛いよね‥………苦しいね」
そう言って祓魔師達はヴェルリナの心身のケアをして安らがせようと彼女の心に寄り添い、優しい声かけをして献身的なサポートを行う。
「………………………………」
彼女はポツリ、ポツリと涙を流しストレスから溢れてくる苛立ち、自傷行為は日に日に頻度が増え彼女はもう心身と共に崩壊寸前。
自殺行動もかなり根強く芽生えてしまっている。そこで、どうにか彼女を悪魔の声に屈してしまわないように、なるべく前向きな気持ちに戻そうとする事を常に心がけて悪魔憑きの症状の深刻化を阻害し、悪魔祓いを絶えず執行していくのだが……鎮静状態にあった筈の悪魔が彼女の精神諸共呑み込み、理性すらも全くなく悪魔憑きの状態が頻発する事態に……。
「ははははは‥………はははははっ……!!」
コメント
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「暖かな幸せ」、読ませてもらいました……。悪魔祓いの壮絶さと、家族の愛情がぎゅっと詰まってて、胸が苦しくなりました。ヴェルリナちゃんが甘えるシーンはほっとしたけど、その後の精神悪化の描写が切なくて……「また振り出し」っていう言葉が重かったです。それでもルナリスが「私達が居るわ」って言える強さ、本当に尊いです。お話、続きが気になります……!