「脱げ」
「あの……どこまでですか?」
「下着以外全部だ」
「……わ、わかりました」
意を決してブラウスのボタンに手をかける。
そんな私を綺麗な顔立ちをした男が、舐めるように見ている。
つい数時間前私は彼のペットになった。つまり、私はこれから……
彼にいいようにされるというわけだ。
「こっちに来い」
下着だけになった私を、男が手招く。
ドキドキして、今にも心臓が飛び出してしまいそうだ。
「悪くないな」
「……っ」
キングサイズのベッドに腰を掛けた男が、私の素肌に手を滑らせながら言う。
それだけで、ピクリと体が反応してしまった。
「あの、鷹栖さ……きゃっ」
強引に手を引かれ、ベッドに押し倒された。
真上には、大人の色気漂う男の顔がある。
シャープな目元に、筋の通った鼻。男らしい眉目は、意志の強さを表わしているよう。
俗に言う、強面のイケメンというやつだろう。
「圭吾だ。そう呼べ」
「圭吾、さん?」
「あぁ、良い子だ。可愛がってやるよ。瑠奈」
「ん……っ」
ぬるっとした舌が、口内に入ってきて、それだけでぞくぞくとした。
見た目によらず、優しいキス……
すると、圭吾さんの指が、ショーツの中に入ってきた。
「あっ、やっ……待って、そこは」
「しっかり濡らしてるじゃねーか」
「や、んんっ……」
「大人しく感じてろ」
圭吾さんが、両足を肩に担ぎあげる。
怖い……私、今からどうなっちゃうの──!?
◇◇◇
事の発端は遡ること数時間前──……。
「え!? オーナーが逃げた?」
いつものように出勤すると、
一緒に雑貨屋で働いていた友人、栞が涙ながらに言った。
「資金繰りがうまくいってなかったみたいなの。店に来たらこれが置いてあった」
見れば、私たちにあてられた手紙だった。
『迷惑かけてすまない』
それだけが書かれてあった。
「私たちどうなっちゃうの?」
「わからない」
「そんな……」
まさかオーナーが逃げるなんて。昨日まで普通だったのに。
彼とは学生時代の友人。
そんなことをするなんて、思いもしなかった。
「今から探しにいこうよ」
「無理だよ。電話にもでないし」
「じゃあどうしたら……」
「こんちは~」
二人で肩を寄せあい、唖然としていると突然、若い男性が入ってきた。
誰だろう。お客さんかな?
「あの、すみません、今日はお休みしようと……」
「オーナーが飛んだんだって? まだ借金あんのにどうするんだよ」
「え?」
「お宅のオーナー、うちに300万借金してたんだよ。それ、今月中に返してもらわねーと困るんだけど」
「300万!?」
嘘でしょ。そんな大金あるはずがない。
「お前ら連帯保証人だろ? 代わりに払えよ」
え? どうして私たちが?
そこでハッとした。
そういえばお店をだすって聞いた時、私も書類にサインをした気がする。
彼のことは信頼していたし、深く考えずサインしちゃったけど
もしかしてあれが……
「とりあえずさ、事務所きてよ。兄貴が待ってるからさ」
「兄貴?」
意味が分からず、栞と目を合わせ、ぽかんとする。
「それとも、今すぐ300万だせんのか?」
「それはその……でも、必ず!」
「いいから早く来い。手っ取り早く稼がしてやるよ」
にやりと笑う男に、強引に連れ出されてしまった。
(嘘、何!?)
(どういうこと!?)
◇◇◇
連れてこられたのは、お屋敷のような家だった。
黒塗りの車が何台も停まっていて、家の周りには高い外壁がたてられている。
「ほら、あがれ」
「……はい」
栞と二人でしぶしぶ中へあがる。チラッと隣を歩く栞を見ると、顔が真っ青で怯えているようだった。
……ここは私がしっかりしなくちゃ。
「兄貴、連れてきました」
長い廊下を歩き、一番奥の部屋に着くとさっきの男、来希が扉を勢いよく開けた。
その瞬間、目を奪われた。なぜなら中には異質な風格が漂う男性がいたからだ。
顔立ちは美形だが、オーラの気迫がすごくて、直視できない。
しかも座っているにもかかわらず、私と目線が変わらない。
恐らく180センチ近くはあるだろう。
「遅いぞ、来希(らいき)」
兄貴と呼ばれる男性が、怒声を上げる。
「すみません! こいつらがなかなか言うことをきかないもので。ほら、お前らも頭下げろ」
「え?」
「この人は、鷹栖組の若頭だぞ」
それを聞いてゾクりとした。
ここに来た時からなんとなく感じていたけど、やっぱり彼らはヤクザなんだ。
しかも鷹栖組といえば、ここらへんでは最大勢力誇っている。
知らない人はいないだろう。
「オーナーがいなくなったそうだな。代わりにお前たちに責任をとってもらう」
「そ、そんな……」
「心配するな。2年くらい風俗で働けば返せる額だ」
……風俗って。嘘でしょ。
「渋谷店が人手が足りないって言ってましたので、そこに沈めますか」
「あぁ、そうだな」
二人でなにやら話を進めている。
私たち、そこで働かされるの!?
「……どうしよう、瑠奈。私たち本当にそこで働くのかな?」
「栞……」
ガタガタと震え、今にも倒れてしまいそうなくらい、顔から血の気が引いている。
「私無理だよ……だって」
震える声で栞が訴える。
無理もないかもしれない。栞は彼氏と結婚が決まっているんだ。
風俗なんて……。
だけどどうしたら?
「じゃあ来希、早速連れていけ」
「はい」
「おい女、しっかり働いてこいよ。きっちり耳揃えて300万払ってもらうからな」
男がそう口にしたとき、気づいたら「あの!」と声を上げていた。
「なんだ」
「と、友達は、許してください」
「あぁ?」
ドスのきいた声を響かせ、私を睨む。
そして何を思ったのか、じりじりと近づいてきた。
「友達はその……結婚が決まってるんです。だから、私が一人で300万円稼ぎます」
「瑠奈……」
栞には幸せになってもらいたい。
ここは私一人で……
ぐっと下唇を噛みしめ、目の前に来た男を下からじっと見つめた。
「お前が一人で稼ぐから、友達は許してやれって?」
「はい」
「ふっ、面白い女だな」
何がおかしかったのか、男は綺麗な顔を緩め笑っている。
「お前のその心意気を買って選択肢をやろう」
「選択肢?」
「あぁ。風俗にいくか、俺のペットになるか5秒以内に選べ」
「え? ペット!?」
ペットってつまり……。
「俺は気が短い。早く決めろ」
「そんな……」
「5、4、3……」
どうしよう。
どうすれば……?
「2、1……」
「あの! 私、ペットになります!」
咄嗟に出てきたのはそれだった。
◇◇◇
──それから今に至るというわけだ。
「んっ、あっ……」
「いい声だ、瑠奈」
「あっ、やぁっ」
圭吾さんに組み敷かれ、甘い刺激を受ける。
彼にされるがままで
さっきからずっと喘がせられている。
「ほら、足を開け。もっとよくしてやる」
「あ、んっ……」
「毎日可愛がってやるからな、覚悟してろよ」
この日から私は、借金を返すために
鷹栖組の若頭、鷹栖圭吾のペットになったのだった──
コメント
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ノベルってどんなのかなって思ってたけど…最高☆(笑)