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第14話【政府暴走編】政府の最終兵器!?新勇者オーディション
「……テラの奴、またやったのか。今度はどこを更地にした」
政府庁舎にある執務室。
ネプチューン大臣は、最高級の革張りの椅子に深く沈み込み、眉間を千切れるほど激しく揉んでいた。
「はっ。例の検問所に続き、地方高官の息子の結婚式を物理的に粉砕して花嫁を拉致。さらにはキャラバンを、馬車ごと崖下へ落とした模様です」
報告を受けたネプチューンは深すぎる溜息をついた。
「あいつは勇者じゃない、歩く天災だ!誰だ、あんな性格破綻者にフルカスタムの豪華馬車なんて買い与えた大馬鹿者は!」
「閣下です」
「……私だったな。あの時の自分を国家反逆罪で処刑したい。……忘れてくれ」
テラはもはや制御不能。かといって、魔王討伐のシンボルである彼女を今さらクビにすれば、今度はこの議事堂が真っ二つにされるのは明白だ。
「アレスのような〝不幸体質〟も困るが、テラのような〝猛獣〟は予算がいくらあっても足りん」
指先で机をとんとんと叩きながら、まるで手元の書類よりも〝勇者〟という存在そのものにうんざりしているようだった。
「……やはり、我々の手足として完璧に機能する〝第三の勇者〟が必要だ。もっとこう、マスコット的で、言いなりになる広告塔がな!」
そうして急遽、極秘で開催されたのが〝新勇者オーディション〟だった。壇上には、書類選考を勝ち抜いた三人の候補者が並んでいる。
「……ふむ。やる気があるのは結構だが、まずは自己紹介だ」
筋肉質でツンツンの短い茶髪に真っ赤なハチマキをした熱血漢が歩み出た。
「はい!灼熱の漢、デネブです!私の拳はすべてを焼き尽くし、閣下の命令こそが私の宇宙(コスモ)!筋肉のキレも最高です!」
(……暑苦しい。プロテインの摂りすぎで脳まで筋肉になってそうだ……)
続いて、艷やかな紺色の長い髪をなびかせたモデル顔負けの男が一歩前に出る。流れるような動作で前髪をかきあげながら自信たっぷりに名乗りをあげた。
「……ベガだ。遠い銀河の果てより、閣下の勝利を確定させるために来た。……とりあえず、着手金として金貨一万枚。残りは成功報酬でいい」
(……腕は立ちそうだが、金に汚すぎてテラ以上に裏切りが早そうだ……)
最後に、黒髪で猫背、特徴がない村人のような姿の男が、媚びた表情で申し訳なさそうに喋り始めた。
「あ、あのぉ……アルタイルですぅ。お星様のように、閣下の行く末を明るく照らしたいなって……えへへ。あ、閣下、肩揉みましょうか?それともハーブティー淹れます?」
(……ただの愛想がいいだけの無職だ。勇者というより、ただの便利な小間使いじゃないか……)
ネプチューンは頭を抱えた。まともな勇者はこの世界から絶滅したのか。
だがその時――会場の外から地響きのような轟音と、爆ぜるような白金の輝きが窓から差し込んだ。
「テ、テラ様だ!テラ様の馬車が来たぞーーッ!」
「また政府の施設を壊しに来たんだ!逃げろ、窓から離れろ!」
群衆の絶叫が聞こえた瞬間、壇上の三人の顔面は、茹で上がる前のパスタのように真っ白になった。
「テ、テラ……!?あの、歩く大量破壊兵器がここに!?筋肉じゃ勝てねえ!筋肉への冒涜だぁぁぁ!」
(デネブは窓を突き破り、全速力の四足歩行で逃げ出した)
「おい、聞いてないぞ!あんなモンスター相手に金貨一万枚じゃ、葬儀代にもなりゃしねえ!契約破棄だ、さらばだ!」
(ベガは裏口へ光速のバックステップで消えた)
「ひ、ひぃぃぃっ!お茶より先に僕の人生が沸騰しちゃうよぉぉぉ!」
(アルタイルはネプチューンの股をマッハでくぐり抜け、床をスライディングしながら消えた)
「待て!どこへ行く!戻れ、この税金泥棒どもめ!!」
ネプチューンは怒りと恐怖で膝をガクガクさせながら、窓の外を恐る恐る見た。
そこには確かに、テラの馬車によく似た、豪華すぎる白金の装飾が施された馬車が、砂煙を上げて議事堂の正面玄関へと猛突進してきている。
「……ついに、この議事堂を更地にし、私を物理的にクビにしに来たか、あの女……!」
彼は遺書の書き残しを後悔しながら、静かに目を閉じた。
しかし、建物に激突して世界が沈むはずの馬車は、派手なブレーキ音と共に、玄関の石畳を少し削っただけで停車した。
「……あれ?爆発音が聞こえない。……生きてる?」
ネプチューンが恐る恐る目を開けると、そこから降りてきたのは青い髪の猛獣ではなかった。
「いやあ、すまんすまん!新調した馬車が調子良すぎて、ついスピードが出ちまってね!」
ただの派手好きな成金商人が、新車を見せびらかしに来ただけだった。馬車がテラ並みに光り輝いて見えたのは、夕日が過剰な24金メッキに120%反射しただけだった。
「おや、ここ、政府の建物?ちょうど〝勇者テラモデルの特製馬車〟を売りに来たんだよ!」
静まり返る会場。逃げ出した候補者たちのプロテインボトルやマントが、寒々しい風に吹かれて床を転がっている。
「………………」
「閣下……。新勇者プロジェクト、いかがいたしましょうか?」
「……中止だ。解散しろ。私は今すぐ、この世界で一番よく効く胃薬を買いに行ってくる。……あの商人の馬車を没収して、地味な色に塗りつぶせ」
政府の壮大な目論見は、テラ本人が指一本動かすまでもなく、その〝圧倒的な噂〟だけで粉々に砕け散ったのであった。