テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ネクタイはもう、エリオットの手にはない。
チャンスの手の中でもない。
ほどかれたそれは、ソファの横に落ちている。
静かな部屋。
一瞬だけ、間が空く。
エリオットはソファに沈んだまま。
悔しそうに眉を寄せる。
でも――
口元は、少しだけ笑っていた。
「……今の」
小さく言う。
チャンスが視線を向ける。
エリオットは続ける。
「挨拶みたいだった」
挑発。
完全に。
チャンスの眉がわずかに動く。
エリオットはさらに言う。
「これで終わり?」
少し首を傾ける。
「我慢してるくせに」
沈黙。
空気が変わる。
一瞬で。
チャンスの目が細くなる。
次の瞬間。
手が伸びる。
エリオットの襟元を掴む。
ぐっと引き寄せる。
「……っ」
エリオットの体が前に引かれる。
ソファから浮くくらいの勢い。
距離が一気に縮まる。
チャンスの声が低く落ちる。
「言わせとけば」
エリオットは笑う。
まだ挑発する気でいる。
「だって事実だろ」
チャンスの手に力が入る。
襟元を掴んだまま、さらに近づく。
ほとんど距離ゼロ。
「エリオット」
低い声。
警告みたいな響き。
エリオットは目を細める。
「なに」
チャンスが一瞬だけ黙る。
それから。
静かに言う。
「後悔するぞ」
エリオットは笑う。
「しないって」
そのまま。
わざと、もう一歩踏み込む。
「ほら」
顔が近い。
「続き、見せてよ」
完全に火をつけた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ゆゆゆゆ
3,331
#doublefedora