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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
犯罪組織と戦うメンバーさんの、戦闘パロ のお話です
「恋人…って…」
ほとけの言葉を繰り返す声が、わずかに掠れる。
「男ってこと…?」
尋ねた俺に、ほとけは横目でちらりと視線を返してきた。
「そうなんじゃないの? 前のチームでの話みたいだし、うちの組織の実戦チームは男しかいないし」
「……」
「あ、いふくんそういうの偏見持つタイプ? そんなこと言われたら僕としょうちゃんだって…」
「いやいや別にそういうわけちゃうし! しかもお前らの事情とか全っ然聞きたないし!」
わざとらしく耳を塞ぐ仕草をして、ほとけの言葉を遮る。
…1ミリも考えてなかった。
ないこのあの「トラウマ」の原因が、昔の恋人に関するものなのかもしれないだなんて。
まぁ、恋人との過去に辛い何かがあったとしても、それがあのパニックの原因かはまだ分からないけれど。
「…俺には理解できんわ」
耳を抑えた手を緩めながら、呟くような声が思わず漏れた。
「こんなとこで恋人を作ろうとか、誰かを好きになろうとか…そんな気になれるんが理解できん」
俺の言葉に、ほとけが真顔になって耳を傾ける。
「いつ死ぬか分からんような場所で…そんなん、荷物にしかならんやん」
そこまで言い切ると、真剣な面持ちで俺の言葉を聞いていたほとけはやがて「…ふふ」と笑みを零した。
「意外にお子さまだよねぇ、いふくんって」
「はぁ!?」
お前の方がくそがきだろうが。そんな言葉は何とか飲み込む。
「あのね」
数歩近寄ってきたほとけは、俺に向けて人差し指を突きつけた。
「順番が違うんだよ。皆、恋人を作ろうとか誰かを好きになろうとか思ってるんじゃないの」
そしてそのまま、グ、と指で俺の胸の辺りを突く。
「気づいたら好きになってるんだよ」
「……」
…ほとけのくせに、ムカつく。
全て知ったような口調で偉そうに言うあいつは、そのまま言葉を継いだ。
「いふくんはそういう感情抱くことないの?」
「ないな」
きっぱりと即答したけれど、ほとけはそんな俺の返事は華麗にスルーする。
「たったここ数日で、ないちゃんすごく楽しそうだなって思うんだけど」
「……何が言いたいん」
不機嫌さを露わに眉を寄せてほとけを見据えた瞬間、部屋のドアがノックされた。
「はぁい」とほとけが返事をすると同時に、それが開かれる。
「まろ、あにきが車出してくれるって言うから買い物付き合ってー」
ひょこっと顔を覗かせたピンク髪がそう言った。
思わずほとけの方を振り返ると、「行ってらっしゃい」とニヤけ顔で言われたので頭を一発はたいておいた。
「買い物ってどこ行くん?」
あにきが運転する車の後部座席にないこと並んで座り、俺はシートベルトを締めながらそう尋ねた。
「パーツショップで爆弾パーツ買いたいのと、あとは普通に日用品と食料品の買い出し」
「俺は車止めたら駐車場で寝て待っとるから、買い物自体はお前ら2人で行けよー」
ハンドルを切りながらあにきが言う。
…そうだ、あにきは夜通し任務に行ってたから寝てないんだっけ。
「まろ、着くまでの間これいい?」
走り出した車の中で、ないこはがさごそと何かの資料を取り出し目の前に広げる。
「さっき本部から次の任務送られてきたんだけど、見てもらえる?」
「……」
結構な量の文書と地図。
相手の写真まで合わせたら膨大な資料だった。
「…俺文字見たら酔うから、口頭で説明して」
シートに深く身を沈めて言うと、ないこは一瞬目をきょとんとさせた後思わずといった感じに笑った。
「何それ。かわいいかよ」
「うるさいな」
「えっと、まず相手の情報なんだけど…」
俺の抗議は無視して、早速説明に入るないこはもう仕事モードだった。
概要を一通り説明され、ないこが考えた作戦の披露を受ける。
「だから侵入するとしたら、東側からがいいと思うんだけど…」
「いやそれやったら気づかれん? 西側からにして、りうらを南に配置しておこう」
「そっか、それなら逃げられる可能性が低くなるのか…」
俺の提案に何度も頷きながらないこは頭の中を整理する。
「うん、それで行こう。まろ、ありがと」
にっこり笑って礼を言うないこの前で、あにきが「…お前らいいコンビやなぁ」と感慨深そうに言った。
そこから数十分車を走らせたところで、あにきが「着いたでー」と声をかけてきた。
そこはないこ御用達のパーツショップらしく、こじんまりとした店内だが品揃えが豊富なのが一目で分かる。
「お、兄ちゃん新しいの入ってるよ」
店に入った瞬間に、店主らしき男性がないこにそう声をかけてきた。
「やった。あ、あとそれ以外にワイヤーと…」
店主にあれやこれやとパーツを注文しながら、手際よく買い物を進める。
たまに新製品のプレゼンを受けては、その性能について議論が始まったりして。
そこに他の常連客まで加わることもあった。
ただの買い物なのに、10分ほどの滞在でないこに話しかけてきた人数は片手では足りないほど。
素性を知らない同士とはいえ、こんな店に集まるコアなファンだから仲良くなりやすいんだろうか。
「あ、ピンクさんじゃん。久しぶりー」
買い物を終えて店を出た瞬間にも、入れ違いに入ろうとした男に声をかけられる。
手をひらひらと振って挨拶するないこに、「なんなんそのあだ名」と笑いをこらえて俺は言った。
「なんかちょっと話して仲良くなったらそうやって呼ばれるようになった」
両手いっぱいの袋を抱えながら言うないこから、そのうちのいくつかを引き受ける。
ありがと、と言いながらないこはニヤっと笑ってみせた。
「ほら俺、八方美人だからさ」
「いやそれ自慢げに言うような言葉ちゃうけどな」
呆れたように応じると、ないこはまた楽しそうに笑った。
そのまま車に戻ると、あにきが運転席でシートを倒して気持ちよさそうに眠っているのが見えた。
「……」
ないこと互いの顔を見合わせる。
多分相当疲れているんだろう。
任務で子供組の見守り役に徹していたから当然だ。
「もうちょっと寝かしてあげよっか」
「…そうやな」
そう提案してきたないこの言葉に、軽く一つ頷き返した。
ショップが立ち並ぶ中にコインロッカーを見つけ、買ったばかりの荷物をぐいと押し込む。
そこの近くには湖があるらしく、レイクサイドが有名な散歩コースになっていた。
「ちょっと散歩して時間潰そ」
ないこがそう言うから、1番近くのコーヒーショップでテイクアウトの商品を購入しそこへ向かう。
コースに一歩踏み入ると、爽やかな風が頬を撫でながら吹き抜けていった。
「んーいい風」
両手を広げて伸びをしながら、ないこは気持ち良さそうに目を細める。
その次の瞬間には、散歩コースを案内した看板を見つけて嬉しそうに声を上げた。
「まろ、短いコースと長いコースがある! どっちする?」
この後の予定のことも考えて、俺は短い方を指差す。
「はしゃぎすぎやろ。子どもか」
「こういうのワクワクするじゃん。のんびり散歩なんて普段なかなかしないしさ」
フラッペタイプのコーヒーを飲みながら、並んでコースを歩き始める。
短い方のコースとはいえ、小さい湖でもぐるっと一周するから数十分はかかりそうだ。
その間、ないこは仕事の話は一切しなかった。
プライベートな話もしない。
ただメンバーのおもしろい話やりうらがかわいいなんて話、あにきの料理はハンバーグがおいしいなんて雑談ばかりだ。
たまに湖の中で魚が跳ねる。
それを運良く見つけては嬉しそうに笑ったり、表情がクルクルと変わった。
「まろが飲んでるそれ、そう言えばなんかすごいカスタムしてなかった?」
「ん? これ?」
コーヒーのカップを少し掲げて見せると、「そう」とないこは頷く。
「ホイップ倍量とキャラメルソース、チョコソース増量」
「甘くないの?」
「甘いに決まっとるやん」
苦笑いを浮かべて答えると、ないこは「どれ」と身を乗り出してきた。
断りもなく俺の手にしたカップに顔を近づけ、ストローでコーヒーを吸い上げる。
その流れるような一連の動作に、俺は思わず目を見開いた。
「…甘っ。でもうまいね」
急なことに驚いている俺には気づいていないのか、ないこは満足そうに笑う。
唇を舌でペロリと舐めながら、「俺も今度もっと甘くしようっと」なんて意味不明に決意表明している。
「まろ?」
返事をしない俺を不思議に思ったのか、ないこが目を丸くしてこちらを見上げてきた。
「…お前この前から距離感バグりすぎちゃう?」
「あ、ごめん。やだった? 気をつける」
いや、別に嫌だったわけではなくて驚いただけなんだけど。
そこはあえて言わずにいると、ないこは小さく肩を竦めた。
「距離感バグってるなんて初めて言われたんだけど。どっちかって言うとパーソナルスペースは広い方って言われるんだけどな」
「どこが!?」
パーソナルスペースが広い人間は初対面で人の顔を鷲掴みにして至近距離で目を覗き込んだりしないし、人の飲んでるコーヒーに断りなく口をつけてきたりしないだろ。
「長年の付き合いの友達とかやったら分かるけど、まだ出会って数日でこれやる奴が『パーソナルスペース広い』はないわ」
「付き合いの長さじゃなくない? 心許せる相手かどうかで」
「何をかっこよく言うとんねん」
思わず笑ってしまって、「アホか」と付け足す。
持っていたコーヒーのストローに口をつけて飲みながら、俺は再び歩き出した。
苦いコーヒーと共に、甘いホイップクリームの香りが口いっぱいに広がる。
「…ないこ?」
俺が数歩歩き出しても後ろからついてくる気配がなく、振り返ってそう声をかけた。
少し何かを考えていたらしいないこは、俺の声に弾かれたように顔を上げる。
「あ、ごめん」
と謝って歩き出そうとしたけれど、何を思ったのかまたそこで足を止めた。
「まろ、一個聞いてもいい?」
さっきまでの楽しそうな表情は消え、ないこは真剣な顔をしていた。
周りに人はいなくて、ないこが急に大人しくなると静けさが増す。
ただならぬ雰囲気に「…何?」と尋ね返すと、あいつは数歩分離れた先でぐっと目線を上げた。
「好きになっても…いい?」
何を言われたのか、一瞬分からなかった。
思わず目を見開いてないこの顔を見つめ返す。
問われた言葉をゆっくりと脳内で繰り返して、理解するのに余裕で数十秒かかってしまったと思う。
意味を理解した瞬間には、答えは決まっていた。
思わずと言った感じで笑って、べ、と舌を出す。
「ダメー」
少しおどけたように言うと、ないこは一瞬目を瞠った。
「そっか、ダメかぁ」
そう言いながら、俺と同じように微かに笑う。
「ん、冗談だよ。ぐるっと回ってあにきんとこ戻ろ」
すいっと俺の横をすり抜けて、ないこは先を歩き始めた。
その後ろ姿から半歩ほど遅れる形で歩き始め、俺はもう一度コーヒーを飲む。
甘すぎるはずのそれは、もう苦さしか伝わってこなかった。
コメント
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水さんの「気づいたら好きになっちゃってる」という台詞...名言誕生ですし、教訓になります!!✨✨ 青さんの甘党が伝わりすぎました...ホイップやチョコの倍増、美味しそうですっ😋 文だけで想像が出来てしまうような文章力本当に尊敬です😿💞 そして桃さんの今までに聞いた事のないような告白...、!この後の関係が気になってしまいますね...!書きたいことが多すぎて長文になってしまいます...😣💓
今の青桃の関係が切なくて涙が滝のように流れて止まりません❗️((は? 桃さん、青さんに恋しちゃってるッッ?!って読んでてびっくりしました‼️ もし、桃さんがあの言葉を本気だったらあの青さんの返答でショック受けてるんじゃないかなと1人で色々考察しています‼️ この小説を見ていると恋って難しいなって感じちゃいます…꒰ᐡ◞ ⸝⸝ ◟ᐡ꒱ あと主様が良ければタメで話したいです…❗️嫌だったら大丈夫です‼️
水さんの言ってること分かる気がする…。 青さんと桃さん関節キスしちゃってるし好きになっていいか聞いてるところも桃さんの距離感バグというのがいきてる?感じがします! (上から目線になってしまっているのかもしれないのと長文失礼しましたm(*_ _)m)