コメント
5件
______________
細くなった腕に若すぎる年齢。
桃色の髪色の子は整った顔で
息もせず冷たくしんでいた。
触るとムダ毛がひとつも無くて、
体は綺麗だった。
痣も何も無いのに、
この人は何を思い詰めたのだろう。
「…青ちゃん、何ご遺体に
軽々しく触れているんですか」
「………….ごめん」
「いいですよ」
「では」
「この人に幸がありますように。」
桃色の髪色をした子の体に
メスが入って血が溢れ出した。
_____________
「…….甲状腺機能亢進症」
「甲状腺のホルモン分泌機能が
過剰に高まり体に支障をきたす、
ってやつでしたね、…..。」
「言うならバセドウ病でしょうか」
「死因は病死」
「…だからこんなに綺麗で
切ないんですね、」
黄は僕の知らない病気を語って
切なげに眉毛を八の字にさせる。
きゅ、と蛇口を洗う音。
黄が洗っていた。
僕は、ただ彼を見つめた。
こんなにお腹や肺を見て、
喉も、色んな所開けてるのに、
苦しそうな顔はしない。
当たり前だけど、不思議だった。
彼は僕の脳内を混ぜて、
かき混ぜて味を作っている。
怖い、掻き回されてる。
どうしよう、たった1人の人に、
つらく、くるしく、させられてる。
こわい
「…青ちゃん、辛くなるのは
ご遺体が居ないところで、」
「憐れむのならば、
僕たちがいない場所で」
「静かに、憐れんでいてください」
さっきまで、切ないとか
言ってたじゃん、
また別だって言うんだろうけど、
これが黄くんに対するご遺体の配慮。
そして優しさ。桃色の彼に
疑問を抱くものの、言葉にしない。
顔にしない。疑問を疑問と思わない。
そうか、医学部をトップで、
ここに来たのはそういうことか。
黄は僕の横を素通りして、
一緒に居た橙は前を横切った。
2人とも心地の悪い服を
脱ぐのに必死なようだった。
黄と橙がいなくなって、
僕はご遺体を眺めた。
きっとこの人を処理するのは
僕なんだろう、置いてかれた理由は。
まだ脳内を混ぜられている。
どんな声でどんな性格で
どんなことがあったのか
詳しく知らない、赤の他人に。
『青、そろそろご飯出来るぞ』
『青より先に風呂入ったるかんな』
『青が俺を嫌う日なんて来ねぇよ』
『俺、?俺も来ない、俺の生涯は_』
「っ…!!!?!」
頭に鈍痛のようなものが走る。
耳鳴りがする。怖い。
どうしよう、何も出来ない。
僕はとりあえず脳内からした
あの澄んだ声が知りたくて、
ただ桃色の彼を見た。
彼なら分かるかもしれない、
彼なら、きっと僕を導いてくれる
『俺は』の続きは、何?
無難に僕だけだって、
言ってくれたの?
誰か知らないけど、僕を、
僕を、愛してくれるひとがいたの?
どこにいるの、その人は
僕の中のどこにいるの?
______________
気付けば橙くんが走ってきて、
過呼吸になる僕の背中を撫でてくれた。
そして、目の前にあったご遺体は
黄くんが処理していた。
閉じられたお腹が目に入り、
色んなことをフラッシュバックする。
『青〜!』
『2週間前の記念日に向けて
どっちが奢るか対決で
桃鉄99年やってみねー!?』
『負けたら高級レストラン
全額自腹で払ってー、』
『勝ったらそのレストランを
決めるのと遠慮なく商品頼む!』
『ほら、やろーぜ』
痛覚が通り過ぎてく
橙くんの声が遠のく
意識が朦朧とする
あぁ、もう、連れて行かれそうだ
『青は俺のこと好き?』
『青、好き』
『だから一緒にいこう』
抉られていく心は
離れることだけ考えて震えている
あぁ、もう、終わりかも
そんな時だった
『「青」』
フラッシュバックしたあの声と
橙くんの声が重なって、
心がバネのように戻った
「…..は…、ぇ…」
「….」
心の底にしまってた思いが、
思い出が溢れていく
温い思い出の中で
僕が放った言葉を思い出した
「桃くん」
「ごめんね」
_______________
2000文字でも疲れますね!
ふぅ!この作品めちゃめちゃ
楽しい!かくの楽しい!!
うわああああい!!