シンメだとか、幼馴染みだとか、ゆり組だとか。俺たちを表す言葉は沢山あるのに。これが俺たちだって、象徴する言葉はいくつもあるのに。この中にたった一つ、俺が望む関係性が入っていないのは何故なんだろう。
…俺がβだから、なのだろうか。
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気付けば常に隣にいて、彼がいない生活なんて考えられないくらい俺の日常には不可欠な大きい存在で。ずっとずっと彼の事だけを想ってきた。だけどとある弊害のせいで結ばれることは永遠にない。だからこの気持ちには蓋をしようって、知らないところで始まった恋なんだから知らないところで終わらせようって、そう思っていたのに。正直な俺は、自分の気持ちに嘘をつけなかった。
Ωでも、俺はお前と___
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宮舘side
『舘さ~ん』
「……」
『舘さん?おい…っおい!』
「いてっ…あ、翔太。ごめんボーッとしてた笑 何?」
楽屋で何をするわけでもなく本当にボーッとしていたらいつからか翔太が隣にいて話しかけてきていた。バシッと強めに肩を叩かれて今も地味に肩が痛い。だが彼の表情を見る限り何回か声をかけてくれたのに俺が反応しなかったが故のこの行動なのだろう。申し訳なく思いながら彼に向き合うと少し機嫌が直ったのかいつも通りの顔を此方に向けてくれた。何年も一緒にいるから何年も同じ顔を見ているが、やっぱり俺は翔太の目が好きだとふと思う。ずっと一緒にいるからこそ話の流れとアイコンタクトだけでお互いの言いたいことが大体わかったりとか、そういう瞬間が多かったからかな。だからすぐにわかる、今日話しかけてきたのは多分何かの誘いなんだろうなとかね。
『あーのさ、』
「うん」
なんか口ごもってる。そんな言いにくいこと?バース教えられた時以来こんなことなかったのに珍しい。え、バース変わったとか?いやそんな珍しいことこんな近くで起こったりしないしあったらすぐ連絡入るよな、一応メンバーだし。
「…言いにくかったら言わなくてもいいよ」
『んやそうじゃなくて、あのーこれ、』
「ん?」
差し出されたのは某夢の国のチケット。…うん、どういうこと?急になんで?
『もらった、から、一緒に行くかなって』
「え、あ、貰ったんだ。いつの?」
『え、3日後』
「3日後?!笑」
急だな、空いてるけども。というか空いてなくても翔太のためなら空けて行きますけども。一応確認しておこうと思いスマホを開いて予定を見ると前後の日は何かしら予定があったがやはり空いていた。過去の俺を褒め称えたい。ありがとう過去の俺、本当にありがとう。
『…無理そ?』
「いやいける、行こ」
『良かったぁ…』
不安そうな表情から一変してものすごい良い笑顔を見せてくれた。可愛い、ぼっちディ○ニーはしんどいもんね。ところでなんで俺だったんだろ、佐久間とかでも良かったはずなのに。あいつの方が誘ってオッケー貰える確率高そうだし待ち時間も退屈せずに済みそうなのに。まあたまたまか、たまたま俺がここに居たから…
『くれたやつがさ、折角なら一緒に居て楽しいやつ…一緒に行きたいやつ誘えって』
俺の思考を読んでいるかのようなタイミングで返答らしきものが来た。普通に凄い。流石幼馴染み、わかってるな……え?ちょっと待って、なんかすごい嬉しい言葉がいっぱい聞こえたような。俺が今たまたまここに居たからじゃなくて一緒に行きたかったから?
「…え、ほんとn」
『んじゃ俺次の仕事だから!またな!!』
悪役の捨て台詞みたいな言い方をして台風のように去っていった彼の耳は、なんだか赤く染まっているように見えた。
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渡辺side
やっばい、やばいやばい。所謂デートってやつ?決まっちゃった。彼の日程を確認もせず誘って、断られる前提だったのにまさかのおっけー。さすがに嬉しすぎる、まじで嬉しい。あの時チケット譲ってくれたアイツに感謝しなきゃ
確かあれは2日前…
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いつも通り楽屋でスマホを弄っていたらパタパタと軽い足音が聞こえてきた
【しょーうーた!】
『うお、阿部ちゃん笑』
【ねぇ、あのさ。俺このチケット間違えて買っちゃったんだけど要らない?】
パッと彼の手元を見ると某夢の国のチケット。え、なんで?てか間違えて買ったって何、こんなん間違えて買うことあるか?というか2枚あるけど一緒に行くやついねえし1枚余らせるのもったいねえし…あ、俺と阿部ちゃんで行けば良いのか。あでもダメだ、阿部ちゃんには目黒っていうセコム兼彼氏がついてるんだった…
『いやでも俺一緒に行けるやついないし…』
【ほんとに?】
『え?』
【一緒に”行けるやつ”、じゃなくて一緒に”行きたいやつ”思い浮かべてみなよ】
考える間もなく浮かんできたのは幼馴染みの顔だった。最近忙しいだろうから他にもいるだろと考えてみようとするも浮かぶのは彼の顔ばかり。いや俺どんだけ一緒に行きてえんだよ、あーもうくそ、この気持ちは忘れなきゃいけないってわかってんのに
【居たでしょ。こういうのはさ、一緒に行ける人じゃなくて一緒に行きたい人、誘うんだよ。てことでこれ受け取ってくれる?】
そんなことを言いながらそっと俺の手にそのチケットを握らせてくれた。その時視界の端に映った彼の顔は何処か寂しそうだった。受け取れないなんて冗談でも言えないような表情
『ん、ありがたく受け取るわ』
【よっしゃ!んじゃ好きな人誘いなね!応援してる~】
なんかいつの間にか好きな人に変わってね?間違ってないから否定できないししないんだけど。にしても阿部ちゃんなんか浮かない顔してたな、どうしたんだろ。目黒と上手く行ってないとか言う話は聞いたことねえし仕事で疲れてんのか?まあ朝早くからニュース番組出てたりするし仕方ねえか、しっかり寝れてると良いけど
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心の中で感謝していても伝わりやしないので阿部ちゃんに連絡を入れる。
『”チケットありがと。無事誘えた”』
【”ほんと?!良かった、楽しんで!あ、写真撮ったら絶対送ってね!”】
俺の事なのに自分の事みたいに喜んでくれてる。どうやったらこんなにも優しい人になれるのだろう。了解のスタンプともう一度だけありがとうの一言を送って画面を閉じる。もう今から楽しみだ、何もかも彼に任せっきりにするのは俺のプライド的になんかアレだし少しだけリサーチしてから行こう。アプリをダウンロードしながら考える。プリンセスには必ず王子が現れるように、彼は俺の運命の人になってくれやしないだろうかと。そんな淡い期待を胸に秘めて、チケットを財布へしまった
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