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スマホはマナーモードに常にしている。だって通知やまないんだもん。
今もそう、画面を閉じても通知の雨あられ。充電無くなっちゃうじゃない。
こんな経験はした事なんて勿論なくて、戸惑いと困惑が凄い。あと何か怖い。
特殊な経由でしか入ることの出来ない学校。その名も海皇かいおう・アトランティス学園。普通じゃない人々が集い切磋琢磨……するはずの場所である。
全世界から人が集まるのに海皇と漢字が入るのはこの学校を作った人が日本人だったからとかなんとか。
その学園の寮のベットの上で私こと、音無海おとなし うみはうんざりした表情をしている。
と、言うのも遡ること数時間前。
今日は入学式だった。新入生代表が毎年同じようなことを喋るだけの形式だけの儀式のようなもの。
私は欠伸を噛み殺しながら時間が過ぎるのをひたすら待っていた。
昔からこういう場の集まりは苦手だ。というか苦痛でしかない。
不真面目よりは真面目で通ってきた手前悪態も付かずじっとただ時間が過ぎるのを待つのですがそれが何よりも嫌い。
そんな苦痛な時間も何とか乗り越えると次は新入生は残され、在校生は教室へ戻っていく。
挨拶も終われば次は寮決めが始まる。
寮は3つ。海、空、陸とあり、魔力量が高い順に海から陸に割り振られる。
そう、今日寮決めなのです。だから荷物を大量に持って入学証を提示して荷物が預けられここに通される。
この学園は魔力さえあれば入学できる為今魔力を測定し、どこに入るかを決めるのだ。
この世界には他にも魔法学校は複数存在するが、名門と呼ばれる魔法統括会なんかは実績が必要だったりするらしい。
学校入る前に実績を持てとは無茶な前提条件だと思うけど、魔法界には幼くしてドラゴンを討伐するような子も居るらしいし、実績を作ることは無理なことでは無いかもしれないけれど。
教師らしき眼鏡の堅苦しい雰囲気の男が新入生達の前に出る。
カツカツとわざとらしく足音を鳴らして威圧的に新入生を見る目付きはちょっと怖い。
「今から割り振りを始める。やってもらうことは2つ。この水晶に魔力を込めること、もう1つは…」
眼鏡の男は指を鳴らすと真横に氷のゴーレムを顕現させた。体からは冷気が出るほどの温度。触れれば只では済まないだろう事が伺える。
この一瞬で新入生の殆どは自身の魔法とのレベルを比べてザワザワし始めた。
そんな悠長な事している暇は無いのに。
この人は氷のゴーレムを作る座標を一瞬私たちの真上に構えたのに!
目線だけ動かして他に気づいた子が居るか探るけど警戒している子は居ない。
唖然とした。レベルが低い。
足元から徐々に霜が増えていっている。
この魔法は時間経過でドンドン自分の有利な地形に変えることも出来るみたい。
この人がもし本気ならいったい何体まで作り出すことが出来るのだろう。
「このアイスゴーレムに自身の持ちうる最大の魔法を撃ち込んで貰う。それでこちら側が生徒を割り振る」
新入生達はザワザワしている。無理もない。ここにいる子達は多分ろくに魔法を使ったことの無い子達だろうから撃ち込めと言われてもどうすればいいのか分からないのだろう。
チラチラと他の有象無象とは違う顔つきがいることから彼ら彼女らは別格なのかもしれない。
この子達はこの先生の実力が分かっているのかな。
「ではそこの君から」
眼鏡の男は1番近い所にいた男子を指名し水晶に手を当てさせる。水晶は一瞬だけ薄い水色になった。
水晶が魔力を吸って魔力に色を付ける。
水晶の中にちょこんと色が付く。まだ1人だからコレが普通なのか判断が難しい。
コントロール出来る類ならアレを目指さないと行けない。
「ふむ、では次、ゴーレムに魔法を」
「あ、あの魔法をって言われてもどうすれば……」
「基本的な魔法の発動条件は理解しているか?」
「あ、はい。えっと魔力を杖に移して唱える、です」
「そうだ。呪文は自身の内にある勝手に言葉になるだろう。やってみなさい」
そう言われ男子は杖を顕現させ構える。
集中して、魔力を魔法に変えたが呪文は出てこなかったようでちょっとした風がゴーレムの冷気に届いただけだった。
「陸へ、次。君」
そして、何故か後ろの方にいた私を指さして指定された。前から順じゃないのかよ。
「君、前から選ばれると思って後ろに下がったね」
バレてら。
「まあいい、水晶に手を」
私が水晶に手を翳し魔力を込める。水晶は反応しない。
私はあれ?と思った。魔法は習ってるからちょっとくらい反応してもいいのに。
それに、全く反応しないのも不味い。
目立つのはナンセンスだが、無能のレッテルはそれ以上だ。
私はムキになってトリガーを外した。
今思えばこれが全ての歯車を狂わせた最初の行動だった。
「ふむ、では…」
眼鏡の男が何か言いかけた時私の限定的な魔力が水晶へ流れ込む。いや、ちがう。吸われてる。これじゃあ魔力のコントロールなんて出来ない!
冷や汗が背中に流れるけど自体は収まらない。
水晶は光を移さない程の黒へ変色し、講堂は闇に包まれた。
「こ、これは起源の魔法……」
新入生達はざわめきが悲鳴に変わり軽くパニックになっていた。
私は流石に不味いと思い水晶から手を離すと闇は晴れた。
「よろしい。次ゴーレムへ。遠慮は要らない本気でやりなさい」
眼鏡の男の私を見る目が変わった。期待と好奇心が入り組んだ視線はやりづらさを私に感じさせる。
文句を後で言われても面白くないから全力でやってやる。
『薔薇の美しさよ、その影に隠れし醜さよ。翳る、翳る、翳る。私は願う。汝に深淵を』
ペラペラと私の口から言葉が紡がれる。言葉は私の声じゃないみたいに低く圧のある言葉だった。
杖を振る。かなり重い。圧縮された魔力が形を変え杖から溢れ出す。
私はゴーレムだけを視野に入れる。
ゴーレムに一陣の黒き線が伸びる。それは周りの物を飲み込みながらゴーレムに着弾し、激しい爆音と共にゴーレムのいた場所にぽっかりと穴が開けられた。