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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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体だけじゃない。尋ねる声も震えた。



それに気付き、レイは私を抱きしめる手に力を込める。



「澪は……いつまでいてほしい?」



「そりゃ、ずっとに決まってるよ。


 ……嫌だよ。もう帰らないで。ずっと一緒にいたいよ」



自分がわがままだとわかってる。



でも会ってすぐ次の別れを想像してしまう辛さは、自分じゃどうにもならない。






レイは回した腕をほどき、私を見つめた。



「澪。話があるんだ」



なだめるような声。



優しい瞳。




反射的に聞きたくないと思った。



だけど……私は聞かなきゃいけない。




「俺、12月に大学を卒業したんだ。


 この4月から東京の英会話教室で働く。だから……。



 しばらくL・Aには戻らないよ」



はっきり耳に届いたのに、耳を疑っていた。



(え……今……なんて?)



レイは大学4年生だ。



欧米の入学シーズンは秋。



卒業は春だとけい子さんから聞いている。



「……嘘……。


 だって、卒業は5月じゃ……」




私をからかってるんだろうか。



たちの悪い意地悪を言ってるんだろうか。




鼓動がどんどん速くなる。



落胆したくなくて予防線を目いっぱい張っても、湧き上がる期待があっけなく飲み込んだ。



レイは「あぁ」と苦笑した。



「高校の時に、大学の単位も取ってたって言わなかった?


 といっても、秋学期で卒業するにはギリギリの単位だったから、今期はかなり頑張らなきゃいけなかったんだ」



「そ……それならそうと言ってよ……!!


 それに就職ってなに? レイは日本で働くの?」



「そう。L・Aから日本の会社にアプライして、ようやく1か月前に働き先が決まったところ」





なにそれ。



なにそれ。




「ひ、ひどいよレイ。それならそう話してほしかったよ。

 話してくれたら、きっと納得できたのに。


 私……本当に寂しかったんだよ。

 会いたくて会いたくて、死ぬかと思ったんだから」




連絡がない間、不安で寂しくて。



L・Aでの姿を想像するしかなかった。



今頃どうしてるんだろうって、考えてもわからないのにずっと考えて。



眠れなくて夜が明けて。



今日が明日にかわる瞬間を、何度迎えただろう。



「澪」



いつの間にか目に涙が浮かんでいた。



レイは困ったような顔で続ける。



「俺も寂しかったよ。


 だけど俺は会いたいんじゃなくて、澪と一緒にいたかったから。


 そのためにすることがたくさんあったし、駄目だったら別の方法を探さなきゃいけなかった。


 ……俺なりに精一杯だったんだ。

 父に日本行きを反対されてもいたし、全部決まらなきゃ話せなかった」





(え……)



私はレイの腕を掴み、顔をあげる。



お父さんと揉めていると聞いていたけど、内容はなにも知らなかった。



「夏に滞在していた時、行先を日本だと告げずに来ていたんだ。


 だけど今回はさすがにそういうわけにいかないし、日本で働くと父に話した。



 そしたら案の定、激昂して……。

 母のとこに行くのか、お前も俺を裏切るのかって、さんざん罵られたよ」



「けっ、怪我してない!?」



私は咄嗟に彼の手を取った。



コートの袖をまくり、腕を見つめる。



レイはその手を取り、そっと外した。



「大丈夫だよ。


 俺だってもう子供じゃない。力じゃ父に負けないよ」



彼の腕にあざや火傷の痕はなかった。



ほっとした時、レイは私の左手を見て動きを止めた。







「……それ、つけてたんだ」



私はレイの視線を辿り、腕時計を見る。



「あぁ、うん。普段は持ち歩いてるんだけど、今日は……つけてみたくなって。


 それで、お父さんとは大丈夫だったの?」



「あぁ。理解はされなかったけどね。


 でもかまわないよ。わかってもらえると思わないし、どう言われても俺の気持ちは変わらないから」



「レイ……」



こちらを覗き込もうとする彼を、私は無意識のうちに抱きしめていた。





レイがたくさん努力してくれたこと。



覚悟を決めて日本に来てくれたこと。



嬉しいし、ほかになにもいらないと思えるほど幸せだ。



だけど―――。




レイは私の心中を察したらしい。



私の背中をゆっくり撫でて言う。



「いいよ澪。


 前にも言ったけど、俺は父にも母にも、だれにも愛されないと思ってた。

 だけどそんな俺のこと、澪が本気で好きになってくれた。


 それだけでいいんだ」




























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