テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
離れちゃうけど、心はいつでも一緒だよ
春。
校庭の桜は、まるで今日という日を知っていたみたいに満開だった。
窓から差し込む柔らかな光。
少し騒がしい教室。
机に置かれた卒業証書。
その景色を見ながら、莉犬は小さく笑った。
「ついに卒業かぁ。」
「早かったですね。」
隣でるぅとが答える。
「僕まだ実感ないんだけど。」
ころんが椅子にもたれながら言う。
「お前は一生実感なさそう。」
さとみが笑う。
「なんやかんや言うて、寂しいんやろ?」
ジェルがニヤニヤしながら聞くと、
「は!?別に!?」
ころんは慌てて否定した。
その反応に全員が笑う。
いつも通りの光景。
だけど、それが少しだけ切なかった。
明日からは当たり前じゃなくなるから。
⸻
卒業式が始まった。
校歌が流れる。
卒業証書が渡される。
先生の話。
在校生の送辞。
卒業生の答辞。
どれも真剣に聞いていたはずなのに、気づけば六人とも違うことを考えていた。
入学した日のこと。
初めて話した日のこと。
放課後にくだらないことで笑ったこと。
喧嘩したこと。
励まし合ったこと。
何気ない毎日。
その全部が宝物だった。
⸻
式が終わり、最後のホームルーム。
担任の先生は笑顔で話していた。
だけど途中から声が震え始めた。
「みんな、本当にありがとう。」
その言葉を聞いた瞬間。
教室のあちこちからすすり泣く声が聞こえた。
莉犬も目を伏せた。
るぅとも静かに涙を拭った。
ころんは必死に笑おうとしていた。
さとみは窓の外を見ていた。
ジェルは顔を隠していた。
ななもりは静かに先生を見つめていた。
最後の「さようなら」が教室に響く。
拍手。
涙。
笑顔。
全部が混ざり合っていた。
放課後。
ほとんどの生徒が帰ったあと。
六人だけが教室に残っていた。
夕日が差し込む。
オレンジ色に染まる教室。
誰もなかなか帰ろうとしなかった。
#心音
翠(腐女子)
7,395
68
16
#とぅるりぷ
しなちゃっ
989
「帰りたくないな。」
ぽつりと莉犬が言う。
その言葉に誰も返事をしない。
みんな同じ気持ちだったから。
「明日から別々なんだよな。」
ころんがつぶやく。
「そうですね。」
るぅとが小さく頷く。
進学先も違う。
住む場所も変わる。
会える回数も減る。
きっと今まで通りにはいかない。
そう思うと胸が苦しくなった。
しばらく沈黙が続いた。
その時だった。
ななもりが立ち上がった。
「ねぇ。」
みんなが顔を上げる。
「そんな顔しないでよ。」
優しく笑う。
「卒業って終わりじゃないでしょ。」
静かな声だった。
だけど不思議と心に響いた。
「確かに離れる。」
「会えなくなる日もあると思う。」
「忙しくなるかもしれない。」
ななもりは続ける。
「でもさ。」
少し笑った。
「心まで離れるわけじゃない。」
教室が静まり返る。
ななもりは窓の外の桜を見る。
「みんなと過ごした時間。」
「笑ったこと。」
「泣いたこと。」
「頑張ったこと。」
「全部消えない。」
「だから離れても大丈夫。」
その言葉を聞きながら、
莉犬は今までの思い出を思い返していた。
苦しい時に支えてくれた仲間。
嬉しい時に一緒に喜んでくれた仲間。
どんな時も隣にいた仲間。
「そうだな。」
さとみが立ち上がる。
「俺たち、今までだって色んなこと乗り越えてきたし。」
「離れたくらいで終わる関係じゃない。」
ジェルも笑った。
「むしろ大人になったらもっと面白いやろ。」
「10年後とか集まったら絶対笑うやん。」
「確かに。」
るぅとも笑う。
「今よりもっと成長してるでしょうしね。」
「僕は世界一有名になってる!」
ころんが胸を張る。
「それはないですね。」
「即否定!?」
また笑い声が響いた。
気づけば空は夕焼けから夜へ変わり始めていた。
帰る時間だった。
本当に最後。
校門の前で六人は立ち止まる。
誰も言葉が出てこない。
寂しい。
でも前を向かなきゃいけない。
そんな気持ちだった。
最初に口を開いたのは莉犬だった。
「みんな。」
五人が振り返る。
「今までありがとう。」
少し涙声だった。
「めっちゃ楽しかった。」
「僕もー!」
ころんが笑う。
「最高だった。」
ジェルが頷く。
「忘れません。」
るぅとが言う。
「また会おうな。」
さとみが手を上げる。
ななもりは優しく微笑んだ。
そして六人で輪になった。
最後に一つだけ約束をする。
「離れちゃうけど。」
莉犬が言う。
「心は。」
るぅとが続ける。
「いつでも。」
ころんが笑う。
「一緒。」
さとみが頷く。
「ずっと。」
ジェルが言う。
そして最後に、ななもりが微笑んだ。
「これからも。」
桜の花びらが風に舞う。
六人はそれぞれ違う道へ歩き出した。
進む先は違う。
見る景色も変わる。
会える回数も減るかもしれない。
それでも。
同じ時間を過ごした思い出は消えない。
どれだけ離れても。
どれだけ時が流れても。
心の中には、あの日の仲間たちがいる。
だから大丈夫。
卒業は別れじゃない。
未来へのスタートだ。
そして六人は胸の中で同じ言葉を抱きながら、新しい一歩を踏み出した。
「離れちゃうけど、心はいつでも一緒だよ。
コメント
1件
うっ…泣いた、マジで泣いた😭💦💦 卒業って終わりじゃなくてスタートだよって、ななもりの言葉が心に刺さりすぎる…。6人で輪になって「心はいつでも一緒」って言い合うシーン、尊すぎてもうダメだった…✨ 莉犬くんの「帰りたくないな」から全部リアルで、自分の中学生時代思い出しちゃったよ…。離れてもこの絆はずっと続くって信じたくなる、そんな素敵な話でした🌸 続きも絶対読むね!!