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夜。
家族が寝てしまって一人の時間。今日のことを思い返す。
電話でなんて、できるわけがない。翔馬に合わせてみたけど、無理だった。
___バカみたいだ…
優しいやり取りも、時々私を叱るようなセリフも、全部私のためなんかじゃないんだと思う。
LINEを開いてここまでのやり取りを読み返す。私の仕事のことを理解しようとしてくれ(会社員という嘘だけど)、家族への…特に夫への不満にも同調してくれて、私の味方だと言ってくれた。
夫には外に女がいるかもしれないと言ったら、“離婚するなら相談にのるよ”と言ってくれたし、ミハルなら自立できるはずだからと励ましてもくれた。
でも、一度会ってからは少し変わってきた気がする。私は欲望の捌け口のための女なのかもしれないと思う。
___そうだ、ちょっと見てみよう
翔馬と知り合ったサイト【花開く】へとインしてみた。私のオープンコメント欄に、一件新着があった。
《素敵な時間でした。ありがとう》
翔馬からだった。あの日のことだろう。それにしてもわざわざオープンコメント欄に書くなんて。
それでも、私も少し自慢したい気持ちになって返事を書いた。
〈私こそ、素敵なひとときをありがとうございました〉
オープンなところで秘密を打ち明けたようで、ドキドキとうれしくなる。
それからしばらくして、ふと気になって翔馬のコメント欄へ行く。
“翔馬さん、あのコメントはなんですか?”
“秘密だよ”
“えー、私も翔馬さんと素敵な時間が欲しいです”
“ちょっと、私の方が先だから”
“どうしたら会えますか?”
“それも秘密”
“どうしてあの人だけ?”
“ずるいですー”
“DMしてもいいですか?”
“いいよ”
“私も!”
複数の女性からのコメントと、翔馬の返事が読めた。どうやら私へのコメントについて、みんなが翔馬に質問しているようだった。
___やっぱり翔馬さんは人気もの?
どうしようか、ここにコメントしようか、いやダメだ、また翔馬に見張っているのか?と言われる。でも、このやり取りを見てると他の女も翔馬を狙っているということ?そして私は、その人気ものの男性と付き合ってるということなんだろうか?
少し考えて、LINEにした。
〈サイトのコメントを見ました。こちらこそ素敵な時間をありがとうございました。やはり人気者なんですね〉
《そうかな?まぁ、これからもよろしく》
しまった!もうやめようと思ってたのに、反対の言い方になってしまった。でも、他の女のことが気にかかる。
〈翔馬さんて素敵な男性だから、モテるんでしょ?私よりずっといい女がいるんじゃないですか?〉
少しの嫌味が混じっているようだと、自分で思ったけど。
《今はいないよ、ミハルだけ。会って欲しいと言ってくる女はいるけど》
〈聞いてもいいですか?どうして私とは会ってくれたんですか?〉
《言わなかった?ミハルはいろんなことに不満があるみたいだったから、助けたかったというか、満足させてあげたかったから》
私は物欲しそうに見えたのだろう。
《で?次はいつ会う?来月半ばならいいよ》
___どうしよう?
躊躇したのは一瞬だった。サイトでの翔馬を見たら、誰にも渡したくないと思ってしまった。翔馬という男は、他の女には手に入らないという優越感が私をまた引っ張り込んだ。
〈わかりました、有給を入れておきます〉