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#闇堕ち
るしゅ
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#ミステリー
穏霞 乃矢
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第1話 18:00の通知
雨が降りそうな、蒸し暑い九月の放課後だった。
教室にはまだ何人か残っていて、笑い声と机を動かす音が混ざっている。
「ひよりー、帰ろ!」
友達の美優が窓際から手を振った。
「先帰ってて! ノート提出してくる!」
「また先生に呼ばれてるじゃん。」
美優は笑って教室を出ていく。
それが、その日ひよりが見た最後の笑顔だった。
18時ちょうど。
ブブッ。
スマホが震えた。
「……知らない通知?」
画面には見覚えのない真っ黒なアイコン。
アプリの名前はたった二文字。
『予告』
「こんなの入れた覚えないんだけど。」
通知を開く。
画面いっぱいに赤い文字が浮かんだ。
次の被害者
西野 美優
残り時間:23時間59分
「……え?」
いたずら?
誰かが作った悪ふざけ?
思わずスクショを撮ろうとした瞬間、画面が一度真っ暗になり、スクショは保存されていなかった。
「気味悪……。」
削除しようと長押しする。
でも。
削除のボタンがない。
電源を切っても、再起動しても消えない。
「もう最悪。」
気持ち悪さだけ残ったまま、その日は眠った。
翌朝。
教室に入ると、違和感があった。
「あれ?」
美優の席が空いている。
「先生、美優休みですか?」
担任は黒板を書きながら答えた。
「朝霧。西野さんは昨日転校しただろ。」
教室が静まり返る。
「……え?」
「急だったけど、お父さんの仕事の都合。」
周りのみんなも普通にうなずいている。
「昨日LINEしたよね。」
「写真も撮ったじゃん。」
そう言おうとして、スマホを開く。
美優とのトーク。
存在しない。
写真フォルダ。
文化祭の写真。
美優だけ綺麗に消えている。
「嘘……。」
心臓が大きく鳴る。
昼休み。
ひよりは必死に友達へ聞き回った。
「西野美優覚えてる?」
「誰?」
「うちのクラスだったじゃん!」
「朝霧、大丈夫?」
みんな本気で知らない顔をする。
一人だけ。
教室の一番後ろで本を読んでいる男子がいた。
神崎蓮。
彼だけが一瞬、本から目を上げた。
目が合う。
でも何も言わずに視線を戻した。
「……。」
何か知ってる。
そう思った。
放課後。
ひよりは蓮のあとを追いかけた。
人気のない廊下。
「待って!」
蓮は立ち止まる。
「西野美優のこと、知ってるでしょ。」
沈黙。
数秒後、蓮は静かに言った。
「知らないほうがいい。」
「知ってるんじゃん!」
「忘れろ。」
「忘れられるわけない!」
その瞬間。
ブブッ。
二人のスマホが同時に震えた。
ひよりの顔から血の気が引く。
蓮もポケットからスマホを取り出していた。
同じ黒いアイコン。
同じ赤い画面。
ひよりは息をのむ。
「……あなたも。」
蓮は画面を閉じた。
「見たなら帰れ。」
「説明して!」
「今日はもう遅い。」
「遅いって何が?」
蓮は振り返らず歩き出す。
廊下の窓から夕日が差し込む。
その背中だけが妙に焦って見えた。
18時。
教室には誰もいない。
ひよりは震える手でアプリを開く。
画面がゆっくり切り替わる。
赤い文字が現れる。
次の被害者
朝霧 ひより
残り時間は、
23時間59分59秒。
同時に教室のスピーカーから、放課後には鳴らないはずのチャイムが響いた。
キーン、と耳に残る音。
誰もいない教室で、ひよりは一人立ち尽くす。
そして廊下の向こうから、小さく誰かの声がした。
「やっと始まった。」
――第1話 終
コメント
3件
読み終えました……これは一気に持っていかれましたね。スマホアプリ「予告」、そして現実から「存在ごと消える」不気味さ。文化祭の写真から美優だけが消えている描写が特にぞっとしました。最後の「やっと始まった」で蓮くんの立場が一気に不透明になって、続きが気になりすぎます。設定の組み立て方が上手いなあと感じました!