「天莉。せっかくタオルをのけても手があったら洗うのに邪魔だよ?」
そんな言葉とともに、「……けど、そうだね。下のこと、すっかり忘れてたのは俺のミスだ。ごめんね、すぐに泡で隠してあげるから許して?」と、それはそれは非常にわざとらしく眉根を寄せた尽から、追加で手のひらに乗せたフワフワの泡で天莉の手ごと包み込むように下腹部に触れられたからたまらない。
「やぁっ」
別に自分の手が尽の大きな掌に包み込まれただけ。
直に急所へ触られたわけではないのに、秘所がキュンと切なく疼いて、そのことが天莉には恥ずかしくて仕方がなかった。
「確か……女性のここへはあんまり石鹸を塗り込まない方がいいんだよね?」
秘部にデリケートゾーン用以外の石鹸を付けて擦ると、皮膚が薄く、剥き出しの粘膜に近い場所だからだろうか。早く洗い流さないと、じわじわと沁みて痛みを感じてしまうことを天莉は経験から知っている。
だからいつもそこは最後に洗って、一番最初にお湯で丁寧に洗い流すのだけれど。
「な、んでっ」
――貴方がそんなことを知っているの?と聞きそうになって、尽が付き合ってきた沢山の女性の影を垣間見た気がした天莉は、胸がズキンと痛んで思わず口をつぐんだ。
「……ああ、それは仕事上、ね」
なのに尽は何故か仕事でその知識を得たのだと言ってから、「……あ、けど。こういうのを男から言われるの、女性は余り好まなかったね。申し訳ないことをした。つい実地の検証データが欲しくなってしまうのは俺の悪い癖なんだ」と続ける。
その口ぶりからするに、どうも仕事絡みと言うのは嘘ではない気がした天莉だ。
医薬品などを中心に扱う天莉の勤め先『株式会社ミライ』は、確かに敏感肌の人に特化した化粧品や石鹸など……そんなものも取り扱っている。
(けど……うちの会社、別に開発部門とかあるわけじゃないのにどうして……?)
常務ともなると、平社員の預かり知らない仕事内容も、業務のうちなのだろうか?
とはいえ、確かに男性からこんな話題を振られるのはちょっと引いてしまうな、と思って。
(あ、でも……)
天莉はそれを現状を打開するチャンスかも⁉︎と思ってしまった。
「あ、あのっ。今、常務がおっしゃったことは正解なのでそこだけは私が自分で……」
何せデリケートで繊細な部位だ。
天莉は机上の知識だけで臨むのは無理がありますしね?と言外に含ませる。
「私も痛いのは嫌だから……」
極めつけ、と言わんばかりにそう付け加えて鏡越し、尽をうかがうように見詰めたら、小さく吐息を落とされた。
「そうか。天莉は痛い思いはしたくないか」
ややして耳元でポツンとつぶやかれたセリフに、天莉は思い切りコクコクとうなずいて見せたのだけれど――。
「そうだね。今の、もしも『尽くん』でお願いされていたら叶えてあげてたんだけど……『常務』でおねだりされたから却下だ」
ククッと喉を鳴らしながら楽しげに言われて、天莉は「えっ」と声を漏らさずにはいられない。
「分からない? つまりは再三言っているようにキミにはお仕置きが必要ってことだよ、天莉」
言うなりお尻側から尽の泡まみれの手が伸びてきて。
「ひゃぅっ」
そのままスリスリと中指で谷間を割り開くように秘裂をこすられた天莉は、いきなりのことにビクッと身体を跳ねさせて足を閉じようとした。
でも、まるで最初からそのことを予期していたみたいに尽の片足で膝を割り開かされて、秘所を思うさま指の腹で撫でさすられてしまう。
「やンっ、尽くっ……」
このままでは本当に石鹸が沁みてしまいます!と思った天莉に、尽が絶妙のタイミングでシャワーヘッドを持ち上げて、足の間から噴水のようにお湯を吹き上げてきた。
そのことに驚いて、秘部を守る手指が緩んだと同時、
「あんっ」
一番敏感なところへシャワーが直撃して、天莉は思わず大きな声で喘いでしまった。
風呂場なのでその声が思いのほか反響して、それが恥ずかしくてたまらなかった天莉は、両手で口を覆ってしまったのだけれど。
それが運の尽き。
今までお尻側から伸ばされていた尽の手が、スッと天莉の身体を躱わすようにして前から伸ばされ直してきた。
そうしてスリリ……と先程シャワーの水圧でさえ敏感に感受した控えめな陰核へ、尽の指が触れてくるから。
天莉は懸命に声を出すまいと口を押さえる手指に力を込めなくてはいけなくなった。
もうすっかり泡なんて洗い流されたはずなのに、尽の指先は天莉が吐き出す愛液にまみれてぬるぬるとした滑りを纏って、何の抵抗もなく尽の指を前後させる。
そのたびに固く勃ちあがった小さな花芽を擦り上げられ、こねられて……天莉はガクガクと腰が震えてしまうのだ。
今にも足の力が抜けて座り込んでしまいそうなのに、そうならないのは尽に背後からガッシリと抱きすくめられているからに他ならない。
「やっ、ぁ……、んン……!」
ギュッと両手で唇を塞いでいても、刺激が強すぎて声が殺し切れない。
天莉は情事の際いつも博視から言われていた通り、懸命に声を出すまいと頑張ったのだけれど。
***
「ねぇ、天莉。どうしてキミは、そんなに必死になって可愛い声を抑えようとするの?」
シャワーヘッドを浴槽の中へポチャンと預けた尽は、あいた手で天莉の唇を塞ぐ手に触れた。
尽は天莉の耳殻や首筋や鎖骨にチュッ、チュッ……とキスを落としていきながら、下に伸ばした指の腹で天莉の敏感な所へ刺激を与え続けることも忘れない。
そうしておきながら、尽は天莉が躍起になって塞いでいる手を口から引き剥がしてしまうと、「ねぇ天莉。俺に天莉の感じてる声を聴かせて? 俺、天莉の可愛い声が聴きたくてたまらないんだけど」と低めた声で耳孔に囁き掛けた。
「あ、ヤダっ……、尽くんっ。それ、……ダメぇッ、んん――!」
尽がどんなに甘く唆してみても、天莉は尽の手をすり抜けるようにして手を取り戻すと、即座に唇を塞ぎに掛かるのだ。
余りに頑なな天莉の様子に、尽は下を攻めるのを一旦中断すると、両手を使って天莉の強情な手を眼前の鏡へ縫い付けてしまう。
天莉の手を押さえる形で、背後から天莉に覆い被さるように鏡ドンしている格好だ。
前のめりになった天莉を逃がすまいと構えたからだろうか。
天莉の背部へ尽の胸や腹がピッタリと密着して――。
尽の下腹部で猛々しくそそり立ったイチモツが、腰に回したタオルを押し退けて、直に天莉の秘部へ押し付けられてしまう。
散々尽によって可愛がられた天莉の秘唇は、トロトロとした愛液に塗れていて、尽のモノが触れると同時にクチュッと淫らな水音がした。
その上――。
(……とろかされそうに熱い)
天莉の女性器へ密着している尽の〝雄芯〟だって、相当に血液が集中して熱を帯びているはずだ。
それなのに、天莉の熱さとは比べ物にならないと思ってしまった尽だ。
手でそこを撫でさすった時にも感じていたけれど、その熱はそのまま天莉の興奮と比例しているようで、尽にはたまらなく嬉しかったりする。
だけど――。
「ふっ、……ぁ!」
無意識に天莉の陰核をこするようにして前後した尽の欲望に、天莉がビクッと身体を跳ねさせながらも唇を噛みしめて声を押し殺しているのが鏡越しに見えて。
尽は天莉の手を左手一本でひとまとめに拘束し直すと、天莉の唇に指を差し入れた。
「天莉、噛んじゃダメだ。……唇が切れてしまう」
天莉が傷付くのはイヤならば、腰の動き自体を止めてやるのが一番手っ取り早い。
だが、天莉の秘唇に押し当てた雄槍を前後させるのが簡単に止められないのは、男の性と言うやつだろうか。
これまで尽は女性と一線を越える事態になっても、ここまで我を忘れるような衝動に突き動かされたことはない。
だが、天莉が相手だとどうにも勝手が違って、かなり頑張って自分を律さないことには本能のままに天莉を貫きたくなってしまう。
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