コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
? ? ?
今日も生きれた。
よかった。
毎日起き上がると感じる。そんなのおじーちゃんみたいだけど、自分の命が軽いものすぎてなぜだか悲しい。
自分の命なのに自分のことを大事にしてないみたい。だから毎朝そう思う。自分のことを大事にしてるって錯覚できるから。
いつも通りが素晴らしい。日々が色褪せることがないように。自分を愛してあげる。
大事に。大事に。
「おっはよーございますっ!」私の元気な声が事務所内に響いた。
「元気だね〜。」いつもの社長が珈琲片手に誰かと話している。あ。もしかして私の大声迷惑だった?
「おはようございます。」柴田さんだ。まだ声がカラカラな柴田さん。
「柴田さん!声ちゃんと戻ったんですね!」“ちゃんと”私のちゃんとってゆるすぎる。
「ありがとうございます。」柴田さんはゲホゲホと咳き込んだ。
「2,3日後には普通に声が出せるようになるよ。」柴田さんはキラキラした目で社長を見詰め、声を出した。
「ほんと、先輩のおかげです。」お辞儀をした。
「僕のおかげじゃないよ〜。米田君のおかげだね。」私はいつもの激甘珈琲を作っている。
「米田君が宙の原因を導いたんだよ。」甘い香りが事務所を漂う。
「米田さん!?本当にありがとうございます!」私は社長の話を聞いていなかったので急に頭を下げる柴田さんがおかしくなったんじゃないかって本気で思ってた。
「あ、昨日のことで…」私の“は?”っていう空気を察知したのか付け加えてくれた。
「いえ。柴田さんの声が治ってよかったです。」そんなときだった。雰囲気をぶち壊すような一本の電話が来た。
「はい。声帯精神科の木村です。」社長がいち早く気づき、電話を取った。
「こんにちは。私は声が出ません。」柴田さんと同様、女性の機械音。決められたようなフレーズが淡々と話されていた。
「わかりました。では…〜〜〜。ーーー?」今日の患者だろう。私は小さく柴田さんにお帰りすることを言って、準備を始めた。
「今日は長野。」それだけだった。電話を終えた社長が一息おいて。 長野…。長野か…。遠い。
「ま。頑張ろう。」また私のことを察知したように話していた。
私ってよく顔に出てるのかな。
私達は社長の車に乗り、長野に向かった。
「長野なんて久しぶりですね。」長野は社長と診察で一回来たことがある。大体の診察が関東だけど、たまに大阪くらいの遠すぎる場所も頼まれることがある。そんなときは近くの事務所に頼むんだけどね。
「だね。でも、なんか不可解なところがあるんだよね。」運転中の社長が呟いた。
「なんですか?」首を傾けた。
「依頼主が9歳なんだよ。」9歳!?驚いてしまった。最低でも18歳だったのに、更新してしまった。最低年齢更新!
「9歳ですか…。若すぎますね。」
「しかも待ち合わせは家の近くの公園。」追い打ちだった。
「え。なんか怖くないですか…」
「うん。これは僕の考えだけど、多分虐待されてると思うよ。」
「虐…待?」虐待されている患者なんて初めてだ。虐待を受けている子はほとんど声を発して叫んだり、泣いたりする。やっぱりちょっと怖い。
「あんな小さい子だったら母親や父親に助けを求めるはず。なのに…彼女は…」“彼女”その時点で女の子ってことがわかった。
社長はいつもより真剣な表情だった。もしかしたら警察にお世話になるかもしれない。
今回の依頼は難しいかもしれない。いつも以上に気合をいれよう。私は背筋を伸ばした。