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???「今日体育館で放課後演劇部の劇やるのよ」???「へぇ〜そうなんだ」
「雨花」、「桃時」は放課後行われる劇について話していた。
雨花「どんな劇やるの?」
桃時「アクション劇だそうよ!アタシたちの学年のクラス一つずつに交代で観せにいくんですって〜」
雨花「なるほどね〜」
桃時「ねぇ観に行かない?」
雨花「うん。良いよ」
「絶対あいつに勝たなきゃ……あいつにさえ勝てばきっと……!」
雨花「ごめん!桃時ちゃん!トイレ行ってくる!」
桃時「演劇部まだ準備してないだろうし大丈夫よ。キャットウォークで待ってるわ」
雨花「はぁーい」
雨花はトイレに行き、ついでにスマホを取りに行くため、教室に寄った。
「おいお前」
雨花「ん?あぁ、あなたは鬼の妖怪の……」
「私はお前に勝つ」
雨花「何を言ってるんです?」
「私は選ばれし者になるため、お前に勝たねばならぬのだ」
雨花「選ばれし者ねぇ……何で選ばれし者になりたいの?」
「選ばれし者になれば脳天気な妖怪をひれ伏すことができる。……特にあのクソ姉貴を」
雨花「お姉さんがいるんだね」
「!、そんなことはどうでも良い。ほら」
鬼の妖怪は、刀剣を一本投げてきた。
「お前はこの学校で上位になるほど強い。人間のくせにな。特に生徒会の中では最も強い。お前は選ばれし者だ。そんなお前に勝てば選ばれし者として周りは私にひれ伏すだろう」
「さぁ」
「「この刀剣を拾え!!!!」」
雨花「うーん……そうだねぇ」
雨花はしゃがむと刀剣をじっとみる。
雨花「この刀剣……君の?」
「そうだ。それじゃ不服か?」
雨花「…………」
雨花はしばらく何かを考えると、刀剣を手に持った。
雨花「向かってきて良いよ〜」
「お前、舐めてるな」
雨花「女の子同士気楽にやろうぞ?」
「ふざけるなぁ!!!!」
鬼の妖怪は、刀剣を振りかざし、ぶつけてきた。雨花は鞘から刀剣を出さず、受け止める。
「どれだけ私を舐めれば気が済むんだ!!あの姉貴のように!」
雨花「舐めてる訳じゃないよ。あんまりこの刀剣を私の手で使いたくないだけで」
「私の刀剣では力不足とでも言うつもりか!!」
雨花「…………君はさ。ひれ伏しさせたいとか言ってるけど、本当は違うでしょ」
「何?」
雨花は一旦距離を置く。
雨花「誰かをひれ伏しさせたいとか、舐めてるとか、そういうことじゃなくて、もっと単純に誰かに自分の頑張りを分かって欲しくて、受け止めて欲しくて、知ろうとして欲しくて、誰かに……」
「「愛されたいんでしょ?」」
「!、たわけ……」
雨花「場所を変えよう。ここじゃ机と椅子が傷だらけになる。付いてきて」
「……分かった」
雨花に連れられ、鬼の妖怪は移動した。
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「ここはどこだ?」
雨花「すぐ分かるよ」
「じゃあ」
「「始めようか」」
「ふん。そう来なくてはな!!」
鬼の妖怪は、雨花に向かってくる。
雨花「…………」
雨花は相変わらず鞘は抜かないまま、刀剣を使う。
「何故鞘を抜かない!!ふざけるな!!」
雨花「……努力を台無しにしたくないからね」
「何を言って……」
雨花「さぁ!もっと打ち込んで!さぁ!さぁ!!」
「はぁぁぁぁ!!!!」
鬼の妖怪は次々に技を繰り出す。
その技はとてもつもない御業だった。
「はぁ……はぁ……」
雨花「君は、随分と「選ばれし者」という言葉に固執する。まるで「選ばれし者」は天才かのように思われてるけど、そうじゃないよ。「選ばれし者」っていうのは、例えば学校で友達がいつの間にか出来たり、親が自然と自分の進みたい将来の夢を信じてくれたりする人が選ばれし者なんだよ。才能があるとか優しさがあるとかじゃなくて、友達や親から虐げられた人が願う普通を持っている人が選ばれし者なんだよ。選ばれし者なんて特別でもなんでもないんだよ。特別じゃないから選ばれし者になれるんだよ。だって本当なら普通になるはずのものを手に入れてるんだからその人はあくまで普通なんだよ。だから選ばれし者は、たまたま運が良くて普通になれただけ。それに選ばれし者になったって自分の意義に合ってなきゃ足枷にしかならないんだよ。必ずしも良いこととは限らないんだよ。」
「選ばれし者は普通の者?」
雨花「そう。だからわたしは選ばれし者じゃない。……願うことなら選ばれし者になりたかったけどね」
「…………」
雨花「あなたも選ばれし者じゃない。でも、あなたは特別だよ。誰よりも努力を重ねてきた」
「何でそんなことが分かるんだ!知ったようなことを……!」
雨花「あなたが渡してきた刀剣の柄の部分、何度も何度も強く握りしめた跡が残ってる。相当握らないとこうはならない。あなたは誰よりも努力家なんだよ」
「!、お前なんかに認められても何も嬉しく……」
雨花「じゃあこの人「たち」ならどうかな?」
「たち?」
鬼の妖怪は、辺りをみ渡す。雨花と鬼の妖怪がいた場所は体育館のステージだった。
「闘いに夢中で気が付かなかった…」
すると……
パチパチパチパチ
キャットウォークの至る所から拍手喝采が聴こえる。
「でも、私は……」
雨花「ちょっと待ってね」
雨花はステージ横からマイクを持ってくると、こう言い放った。
雨花「皆さん!!この子、自分が特別かどうか分からないそうです!!どう想います?」
そう言った瞬間、
「最高だったよ!!」「マジでかっこよかった!!」「めちゃくちゃ速くて目で追えなかった!!」「煌めいてたよ!!」
「…………!」
雨花「ね?言ったでしょ?あなたは特別だって」
「……ひっぐ……うん」
その後、本物の演劇部の人が来る前に退却をした雨花と鬼の妖怪。何故、雨花を狙ったのか。それは、周りの妖怪はとても強い力を持つ姉ばかりを慕い、劣等感を感じていた鬼の妖怪は、雨花を倒せば、みんなが認めてくれると想い、実行に移したというもの。
「借りができたな」
雨花「借りを返さないことが借りを返すことだから気にしないで」
「妖怪に恩を売れば、後から助かるものを……変な奴だ」
雨花「また爆発しそうになったらおいで〜話くらいは聴くからさ」
「……ありがとう」
鬼の妖怪はいつの間にか消えた。
雨花「うーん……何か忘れてるような……あっ」
遠くの方に、仁王立ちしている桃時がみえた。
桃時「あんた……何勝手に劇なんてやってるのよ!!」
雨花「そ、その……」
桃時「あんた演劇部じゃないでしょ!!馬鹿じゃないの!!それにアタシとの約束も破って!!」
雨花「ひぃ!す、すみません!」
雨花はとんずらこいて逃げ出す。
桃時「待ちなさい!!あんたが演劇部を利用したら生徒会にヒビが入るでしょ!!」
雨花の暗躍の元、一体の妖怪が助けられたのであった。もちろんそんなことは誰も知らないのであったが。草
雨花「そんな〜〜!!」
桃時「何の話よ?!」