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泣けるぅぅぅ泣華太南雲の兄貴ならいいって言ってくれるよきっとぉぉぉ泣
切なくても好きッ(普通にガチ泣しました)
😭せつないわ〜!でも素敵な淡い感じ、うまく言えないけどいいね😭
あれから、何か妙だった。
あの日、華太が見せた涙。華太を抱きしめた感触。
あんな華太は初めて見た。
―俺は、あんたが初めてだったんですよ。人を殺すばっかりの毎日で、こんなに夢中になった人も、恋い焦がれた人も、苦悩した人も、全部が―。
本来なら、小林は間違えてもこれを受け取るわけにはいかなかった。
小林にはもう飯豊がいる。
飯豊は良い奴だから、裏切るわけにはいかないのだ。
でも…
「…ッ、あー、くそっ…」
そんな顔で求められたら、答えたくなっちまうだろうが。
小林はこの苦悩の解決を時間に頼ってみたりもしたが、華太の可憐とも呼べる程甘い泣き顔は、片時も忘れることはできなかった。
(…もう…いいや)
俺の負けだ。
恋人以外の奴に靡いちまった、これは俺の負けなんだ。
小林は全てを諦めて、無気力に事務所を出ようとした。
―その手を、誰かが掴んだ。
「…何だよ」
その人物の顔を見て、小林はおもむろに不快そうにする。
「……放せや、飯豊ぉ」
掴んだのは、飯豊。
「嫌です」
すかさず小林は飯豊を捕まえて、壁に叩き付けた。
「おい……兄貴分の言うことが聞けねぇのか」
「兄貴」
下を向いていた飯豊の顔が小林の顔をゆっくりと見据えた。
「兄貴は、一体何処に行こうとしてるんですか?」
その顔は涙でひどく濡れていた。
「何故だか分かんねぇけど…このまま兄貴が事務所から出て行ったら、兄貴が俺から離れて行っちまうような気がして……どうしても、放したくなくて…」
飯豊は何処にも行かせまいとして、小林を抱きしめた。
「幸真さん…ッ」
小林は引き剥がすことが出来なかった。
その声を聞いた時、今自分がやろうとしていることがいかに残酷なものかを思い知らされたのだ。
「……ごめん」
華太、ごめん。俺、やっぱお前のとこには行けねぇわ。
小林は静かに飯豊を抱き返した。
今、自分のすぐそばに在る宝を、二度と手放さぬように―。
「……分かってましたよ、兄貴」
その様子を、密かに見ている影があった。
「兄貴は…兄貴は本当に良い人だ」
影はそう言うと、水晶のような涙を二筋零した。