大森視点
今日は数本の仕事をこなして、
ついに歌番組の本番だ。
いつもより早めに現場入りして、
俺は星崎を探した。
しかしどこにも姿が見えない。
楽屋を訪ねたが、
星崎が愛用するギターと鞄があっただけで、
本人がいない。
どこにいるのだろうか?
すると楽屋にメモを見つけた。
『少しの間走りに出ます。
急ぎの方はこちらでお願いします』
と書かれた紙と共に小さな何かが置かれていた。
思わず「それ」をGoogleカメラで撮影した。
どうやらポケベルというらしい。
(え⋯これ、
どうやって使うんだ?)
別に急ぎではないため、
後でまた出直すことにして、
俺は一旦退出した。
それからしばらくして、
そろそろ順番が来そうなため俺はステージに向かった。
その途中で星崎をみつけた。
「人多すぎて無理!
怖い怖い。
ふーさんどうしたらいいですか!?」
「もうっ⋯大丈夫大丈夫」
極度の緊張によりぐずる星崎を、
まるでいつものことだと言わんばかりに、
慣れた様子で対応していた。
「ぎゅーしてあげるからおいで」
二人がそっと抱き合い、
深瀬さんの手が星崎の肩に触れる。
肩へのボディタッチは
「応援」
そこに下心がなければ完璧なのだが。
前回の庇護欲を考えると、
ゼロではないだろう。
正直腹が立つ。
深瀬さんに対しては完全に嫉妬だ。
しかし俺は何故か星崎に対しても苛立った。
(そんな簡単に触らせるなよ)
その時だった。
深瀬さんと抱き合っていたはずの星崎の表情が、
なぜか急に険しくなり、
周辺をキョロキョロと見回した。
何をしているんだろうか?
よく分からないが何か異変を感じているようだった。
深瀬さんも気付いたようで、
二人は立ち話をするが、
いかんせん人が多すぎて内容はかき消されてしまった。
しかし星崎の身に何かがあったことは窺えた。
その後、
深瀬さんが歌い、
星崎の番が回ってきた。
やはりその表情は硬く、
視線をセット全体に彷徨わせていた。
人を探しているような素振りではなく、
周囲を警戒するような目をしていた。
(誰かに狙われている?)
ただの直感で根拠はないのだが、
そう感じた。
それでもプロ根性を見せ、
ステージでは歌えることを楽しんでいる様子で、
無事にそのまま歌い終わった。
「ちょっと変じゃない?」
普段は天然でズレた発言が多い、
鈍感な藤澤でさえ、
星崎の行動に異変を感じていた。
「確かに⋯⋯なんか違うな」
若井がそう呟いた時、
ちょうど出番を終えた星崎がハケてきた。
そのタイミングで俺は思わず声をかけた。
「なんかあった?」
「あー⋯ま、
すこ、
し?」
何故か疑問系な上に、
どうにも歯切れが悪かった。
俺には話したくないという意思表示なのだろうか。
しかし星崎は明らかに困っていた。
視線の主は一体誰なんだ。
相手に全く覚えないのか?
このまま放置して、
今後大きな問題につながらないのか?
不安を抱えたままステージに向かった。
星崎はまだ周囲を警戒しながら、
俺たちの歌をきいていた。
(まさか仕事関係者からのストーカーじゃないよな?)
などといった良くない憶測が頭をよぎってしまう。
歌い終えて自分たちの楽屋にて休憩した後でもやはり、
星崎の挙動不審っぷりがどうしても気になってしまい、
楽屋を訪ねたが、
既に帰ったのかもぬけの殻だった。
どうやら入れ違いになったようだ。
雫騎の雑談コーナー
惜しいっ!
残念ながらTASUKUは帰ってはいません。
謎の視線を怖がってふーさん達がいる楽屋に、
一時的に避難していたんです。
後もうちょっと!というタイミングの差で、
二人はすれ違ってるんですね。
というかサラッとネタバレしてますな。
もどかしい恋愛模様が進展するのが先か、
または一騒動?一波乱?起こるのが先か、
という敢えて中途半端なところで切りまーす。
だって続きを読んで欲しいから!!
↑セコイが本音