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ばっちゃんの奇妙な開会式と他の人たちの大騒ぎが一段落して、また議場が厳粛な空気に包まれた。いや、さっきのどんちゃん騒ぎからのギャップが凄すぎてついていけないんだけど?

ほら、見てよ。フェルなんて急展開にビックリして固まってるじゃん。この温度差は何なのさ?

「素敵なパーティーを始める前に、改めて皆に紹介しようかな☆ほら、いいよ☆」

ばっちゃんが手招きして壇上へ上がったのは……セシルさん!?テルスさんの奥さんだ!

ラーナ星系からの避難民約二百名は、ドルワの里の近くに浮き島を貰って暮らしてる。ただ規模が少なくて何組かの家族はドルワの里で暮らしてるけど。管轄はばっちゃんが引き受けてくれた。

様子を見に行こうと思ってたけど、元気そうで良かった。

「皆はもう知ってるとは思うけど、改めて紹介するね☆新しく里の仲間になったラーナ星系避難民の代表、セシルちゃんだよ!☆」

「改めまして、この度は私達ラーナ星系からの避難民を受け入れてくださった皆様に心からの感謝を。慣れない環境ではありますが、里の皆様に少しでも恩返しが出きるよう誠意努めて参りますので、今後ともどうか……」

「んもー!☆セシルちゃん堅苦しすぎ!☆うちは大歓迎だし、もう貴女達は私達の家族なんだから遠慮しないの!☆皆もそう思うよね?☆」

「里長の仰る通り、我らは既に家族だ。気負わず気楽にな」

「うむ、集会にも遠慮無く参加して欲しい。ここは自由討論の場なのだから。もちろん提案も大歓迎だ」

「遠慮は無用だよ。なにか必要なものがあったら直ぐに教えて欲しい。出来るだけ便宜を図ろう」

威厳たっぷりに語りかける里の有力者のおじさま達。でも、さっきの馬鹿騒ぎでケミカルライト振り回して見事なヲタ芸を披露していたから、その時とのギャップが強すぎる。新手のギャグにしか思えないのが困りものだ。

あっ、一人は翼に取り付けたケミカルライトを取り忘れてピカピカさせてる。なんだこれ。

「うんうん、間違ってもセシルちゃん達を苛めるようなお馬鹿さんはうちの里には居ないよねぇ?☆そんな悪い子が居たら、お仕置きだぞ?☆」

「「「ウーーースッ」」」

いや軽いな!?部活かなんか!?ここ学校じゃないよ!?

正直周りのテンションに置き去りにされてるけど、セシルさんは深々と頭を下げて壇上から降りて……あっ、見覚えがある人達だ。多分ラーナ星系からの皆さんが集まってる一角へ戻った。

「さてさて、次の話題だよ!☆ティナちゃん!☆」

「はい!?」

「ほら、行きなさい」

いきなりばっちゃんから指名された。ビックリしたけど、お母さんに促されたから取り敢えず壇上へ上がった。フェルが心配そうにしてる。大丈夫だよ、多分。

ばっちゃんの隣に立つと、ばっちゃんは私の頭に手を伸ばして……伸ばしてー……うん、届いてない。背伸びしてプルプルしてる。何だか面白いからしばらく放置したいけど、拗ねたら困るから取り敢えず身を屈める。いや、私も小柄なんだけどばっちゃんはそれ以上だ。

ようやく届いた私の頭を優しくポンポンしながら口を開いた。

「皆は知ってるよねー?☆今アードを飛び出して地球と交流してるティナちゃん!☆うちの誇りだよ☆」

うん、皆の視線は好意的だ。私がちょっとズレた感性の持ち主だってことは皆知ってるよね。

「今回はちょっと用事があって呼び戻しちゃったけど、成果はあったかな?☆」

「もちろん!今回も地球の食べ物をたくさん持ち帰ってきました!前回より種類も豊富で、お料理に使う調味料もたくさん用意しているよ!」

折角なのでお土産の成果をアピールしてみた。前回のお土産は好評だったみたいだし、次もトランクや医療シートをたくさん買い込むためにも売り上げは大事だ。

「だそうだよー!☆いつも通りうちのお店で取り扱うから、買いに来てね?☆」

「「「ウォオオオオオーーーーッッッ!!!」」」

「うるさっ!?」

なにこの雄叫び!?いや、好評なのは分かるけどこんなに喜ぶこと!?皆のテンションが明らかに違うんだけど!?

ほら!フェルなんてビックリしてびくびくしてるじゃん!可哀想に!

「もういいよね?ばっちゃん。後でお店にトランク持っていくから」

「期待しているよ!☆」

ばっちゃんの許可を貰って、私はそそくさと席へ戻った。フェルの隣に座ると、ギュッてしがみついてきた。

「ティナ、アードではこれが普通なんですか?」

「間違いなく普通じゃないから、心配しなくていいよ」

フェルの手を握りながら安心させるように声をかける。こんなのが普通な筈がない。ほら!有力者の皆さんがまたヲタ芸を!

その後幾つかの議題が出されて真面目な議論が交わされたけど、ばっちゃんが纏める度にヲタ芸が始まると言うカオスな空間は、私とフェルを置いてけぼりにしたまま終わった。

閉会の言葉は有力者さん達が厳粛に宣言したけど、もうギャップがありすぎて訳が分からない。フェルなんて私から手を離さないくらい周りのテンションに怯えていたし。うん、普段大人しいフェルにはキツかったかな?

フェルも改めて紹介されたけど、まるでアイドルのコンサートみたいになってたし。戸惑うフェルと煽るばっちゃん、神業的なヲタ芸を披露する皆さん。

お母さんが一切参加しなかったのが唯一の救いだよ。

解散して皆が集会所を後にして、私達も帰ろうかと立ち上がったらばっちゃんが近付いてきた。

「フェルちゃんの紹介も終わったし、最高のパーティーだったね☆」

「加減してよ、フェルは大人しい娘なんだからさ」

「そこは悪かったって思ってる。フェルちゃん、ごめんね?☆」

「いえ……」

「里長、そろそろ本題に入っても良いんじゃない?ティナ達も戸惑っているわ」

テンション高めのばっちゃんに、お母さんが声をかける。本題?

「あはは、ティアンナちゃんは真面目だなぁ☆もう少し楽しまなきゃ☆」

「この子達は交流の真っ最中。出来るだけ長く地球に滞在した方が良いの。今回は無理を言ったんだから、用事を済ませてあげないと」

やっぱりお母さんとばっちゃんは同じ用事で私達を呼び戻したんだろうなぁ。何だろう?交流中止とかなら集会で紹介なんかしないだろうし。そうやって考えていると、ばっちゃんが私達を見ながら。

「次、私もついていくからね!☆」

とんでもない爆弾を落とした。

……本当に?

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