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「はぁ……間に合ったぁ!」
私は息を切らしながら教室に駆け込んだ。
「美希、おはよー!」
「おはよ!」
親友の花音が、いつもの笑顔で手を振ってくれる。
「今日もギリギリじゃん(笑)」
「だって、お兄ちゃんがなかなか起こしてくれないんだもん!」
「いや、起こしてくれてるんでしょ?(笑)」
「うっ……それはそうだけど!」
花音は呆れたように笑った。
私と花音は、中学に入ってからずっと一緒の親友だ。
もちろん、私が兄の湊を好きだということも知っている。
「で? 今日も湊先輩と一緒に家出たの?」
「うん……。でも、先に行っちゃった」
「はぁ〜。美希って本当に湊先輩のこと好きだよねぇ」
「ちょっ! 声大きいって!」
慌てて花音の口を塞ぐ。
「はいはい(笑)」
花音は楽しそうに笑った。
そのときだった。
「おい、美希」
聞き慣れた声が、後ろから聞こえた。
「えっ……?」
振り返ると、そこには兄の湊が立っていた。
「今日、帰り遅くなるから。先に帰ってて」
「え、なんで?」
「生徒会。あと、雨降りそうだから傘持ってけよ」
そう言って、湊は私の頭をぽんっと軽く撫でた。
「じゃあな」
湊はそのまま教室を出ていった。
…………。
「…………美希?」
「…………なに?」
「顔、真っ赤だけど?」
「うるさいっ!!」
花音がニヤニヤしている。
だって、仕方ないじゃん。
好きな人に頭を撫でられたんだよ?
しかも、それが大好きな兄なんて……。
「はぁ……」
私は机に突っ伏した。
この恋は、絶対に叶わない。
それなのに。
優しくされるたび、期待してしまう。
もっと話したい。
もっと一緒にいたい。
私だけを見てほしい。
そんなことを願ってしまう。
「……バカみたい」
小さく呟いた、そのとき。
「美希、ちょっといい?」
花音が、いつになく真剣な顔で私を見つめた。
「え? なに?」
「……美希ってさ」
花音は少し迷ったあと、口を開いた。
「湊先輩と、本当に血が繋がってるんだよね?」
「…………え?」
思いがけない質問に、私は言葉を失った。
「……どういう意味?」
「いや、前からちょっと気になってたんだけどさ」
花音は声を潜めた。
「美希と湊先輩って、顔も全然似てないし……」
「そ、それは……!」
確かに、私と湊はあまり似ていない。
でも、そんなの関係ない。
だって、私たちは家族なんだから。
「……血が繋がってるに決まってるじゃん」
そう答えたものの。
なぜか、胸の奥がざわついた。
――私と湊は、本当に血の繋がった兄妹なのだろうか。
もちろん、そのときの私は知らなかった。
この何気ない疑問が、私の人生を大きく変えることになるなんて。
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