テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
29話 共通化の説明会
会場は、
思ったより広かった。
椅子が並び、
間隔が空いている。
前のほうに、
資料が積まれている。
リカは、
少し大きめの上着。
袖が手の甲にかかる。
腰元で、
電子マネーとお守りが
静かに触れる。
隣には、
髪を後ろでまとめた友達。
手帳を膝に置き、
姿勢が崩れない。
後ろの列には、
派手めな服の子。
キーホルダーが
小さく鳴る。
前に立つ人は、
淡い色の服。
声は落ち着いている。
スポット$の共通化。
将来。
利便性。
負担の軽減。
言葉は、
滑らかに続く。
スライドが変わる。
数字。
矢印。
図。
説明は、
途切れない。
「質問はありますか」
間。
誰も動かない。
手は挙がらない。
視線だけが、
前を向く。
時計を見る人。
資料を閉じる人。
一人、
席を立つ。
静かに、
出口へ向かう。
それに続いて、
二人。
三人。
反対の声は、
出ない。
賛成の拍手も、
ない。
説明は、
最後まで行われる。
終わりの言葉。
「ありがとうございました」
椅子が鳴る。
人が立つ。
リカも、
立ち上がる。
資料は、
受け取らない。
外に出る。
空気が、
少し軽い。
「どう思った?」
小さな声。
リカは、
少し考えてから、
首を傾ける。
「わからない」
それで、
十分だった。
誰も反対しない。
誰も賛成しない。
部屋の中に、
それだけが残っていた。