テラーノベル
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胸がちくちくとストレスで痛む土曜日。
駅で明美ちゃんと待ち合わせしていた。
「みなみせんせーい」
気合いの入ったワンピースの明美先生に駆け寄られながら、私は今、
――逃げられない合コンへ向かっている。
駅からタクシーで10分してすぐに街からやや離れた場所にポツリとある居酒屋に到着する。
「へーぇ。こんな可愛いbar、私初めて来ちゃいました」
一階部分ではなく二階の落ちついた場所についてすぐに明美先生のテンションは上がり、興奮し始めた。
『rocking star』というオシャレとは言い難い居酒屋の二階。
そう、飛鳥さんのあの居酒屋の二階に無理を言って、観葉植物で壁を作って簡易個室を作ってもらった。
――過保護な侑哉は先に来て一階で一人で飲みながら待っているし。
今更ながら、どうしてこうなってしまったのだろうと後悔ばかりが襲ってくる。
この自分の根性の無さや気の弱さに嫌気がさしている時、外に黒のAudiが止まるのが見えた。
そんな、いかにもなのに部長が乗るはずないし、確か部長は電車で帰って来たし。
そう思いつつも、車から降りたのは、黒のTシャツにジーンズ姿の
部長と、仕事帰りなのかスーツ姿の有沢さんだった。
「え~~! 見て見て! みなみ先生! あの車、カッコいいですね~」
車ばかりに目がいってくれて感謝しつつも、更にテンションが上がったのか、明美先生は念入りに化粧のチェックをしつついそいそ立ちあがる。
「迎えにいきましょーよ」
「え!?」
ふんわりと明美ちゃんのスカートが翻り、スキップに似たステップで階段まで歩いて行く明美ちゃん。
「も、もしかして明美ちゃんって合コン初めて?」
「へ!? やだ! 分かっちゃいますか!?」
歩くのを止めて両手で顔を抑える明美ちゃん。
わー、初々しい明美ちゃんにますます有沢さんは合わないし、合コンに連れて来たことに後悔してしまう。
「お待たせ~。明美ちゃん、みなみ先生! 二人とも立ちあがってどうしたの?」
爽やかな有沢さんが先にやって来ると、明美ちゃんは少女のような笑顔で下を向く。
「おっ 良い景色じゃねーか」
携帯と煙草を手に持ってふてぶてしくそう言う橘部長も、私を見るとフッと意地悪そうに笑う。
むむっ
その意地悪な笑いは何なんだっとちょっと口を開きかけた時だった。
「ええー!? 真くんのお父さん……ですよね? ええー!」
真っ青になった明美ちゃんが先に喋り出した。
そうだった。その話も私も明美先生も初めてだ。
「今はパパ代理ってトコかな?」
「その話は飲み物頼んでからにしよっか」
有沢さんが優しく微笑むと、明美ちゃんは真っ赤になりながら頷いた。
パパ代理って何なんだろう?
そう思いつつも、一言も喋れずに席に着いた。
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