エクストレトル王国。
やや小さめだが、人々は活気にあふれ、大変栄えた国である。
また、隣のアステレイド帝国とも関係がとても良好で、王同士が古い友人だ。
私は、そんなエクストレトル王国の第二王女として生を受けた。
名前は、セレスティア・フォン・エクストレトル。前世の記憶を持っている転生者だ。
私の前世は、地球という国にある、日本という国に住んでいたごくごく普通な女子高校生だった。しかし不慮の事故により死んでしまい、こうして転生した訳である。この記憶を取り戻したのは、三歳の時。とある日の夜、突如として現れた夢により、私は前世を思い出した。
さて、一国のお姫様として転生した私だが、決して順風満帆とは言えない人生を送ってきた。
それは十歳の誕生日の時。誕生パーティーが終わり、入浴を済ませ、いよいよ就寝する時にそれは起きた。
突然、バルコニーから黒いフードを被ったうら若い女が入ってきたのだ。
女は私の手首を掴み、不気味に笑いながらこう言った。
この呪いは長い間私を苦しめ、いずれは死に至るだろう、と。
女がそう言うと、私の左手の甲に赤い痣ができた。
真っ赤な薔薇が咲いたような痣。
その日から、私の日常は変わってしまった。
痣を知られないように手袋をつける日々が始まったのだ。
だが、一番重要なのはそれではない。
その呪いのせいか、私は頻繁に甲が痛くなったり、頭痛や吐血、酷いときは倒れてしまうようになった。
もうそれから五年が経った。
私は、そっと左手の甲を撫でる。
「姫様、いかがしましたか?まさか、また痣がお痛いのですか?」
目の前にいる少女が、そう心配そうに聞いてくる。
彼女は私の専属侍女であるフレイア・ケイネスだ。私の痣のことを唯一知る人物。
呪いを掛けられたとき、彼女は専属侍女であるため、さすがに隠し通すことはできなかった。
痣のことは、彼女と私だけの秘密だ。
私は微笑み、かぶりを振る。
「いいえ、大丈夫よ」
そう答えても、彼女はまだ不安そうな顔で言った。
「本当に?体調がお悪くなったら、我慢せず仰ってくださいね」
と、私たちが乗っている馬車がふと止まる。
「あら、到着したようですね」
彼女の言うとおり、馬車はある建物の前に着いたようだった。
ある建物……、それは、アストレイド帝国の王城である。
姉が友人である皇女殿下に久しぶりに会いたいと仰られ、私はそれに誘われ同行しているのだ。
と、馬車の扉が開かれ、フレイアが先に降りる。
そして、私に手を差し伸べた。
「では、行きましょうか。姫様」
私は彼女の手を取り、微笑む。
「ええ。行きましょう」
私は、馬車の外に、足を踏み出した。
コメント
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思ったより早めに投稿できて良かったです。 ……なんか文章下手ですが。