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「皇帝陛下、皇后陛下。お初にお目文字仕ります。エクストレトル王国第二王女の、セレスティア・フォン・エクストレトルと申します」
私はそう言いながら、ドレスの裾を持ち上げ一礼をした。
あれから私たちは馬車を降り、姉と合流し、宮殿に入ってアストレイド帝国の皇帝陛下と皇后陛下に挨拶をしているのである。
両陛下は仏のような笑みをたたえ、皇帝陛下が口を開かれた。
「噂には聞いていたが、愛らしい少女だな」
「まあ、お褒めに預かり光栄ですわ。自慢の妹です」
隣にいる姉が微笑む。
「せっかくここまでいらっしゃったのだから、ゆっくりしていってね」
皇后陛下がそう仰り、私たちは両陛下と別れた。
私は姉とふたりで宮殿を出ながら、じっと姉を見つめる。
イリスティーナ・フォン・エクストレトル。これが姉の名前だ。十八歳。
輝くような黄金の長い髪、新緑を思わせる若草色の大きく澄んだ瞳、雪のように真っ白な肌に、華奢な身体。誰もが見惚れる美女だ。また頭が良く勉強もでき、誰にでも分け隔てなく優しい。まさに完璧。
姉は私の視線に気づいたのか、私に微笑み、小さく首を傾げる。
「どうしたの?セレス」
私は姉をじっと見ながら口を開いた。
「いえ、お姉様が今日もお美しいなって」
私の言葉に、彼女は苦笑する。
「あらあらセレスったら、また一段と上手になったわね」
「事実を述べたまでですわ」
私たちがそう話していると、あっという間に宮殿の出口に着いた。
「セレスはこれからどうするの?」
「庭園をゆっくり歩いて回るつもりです」
「そうなの。楽しんで来てね」
「はい、ありがとうございます」
そうして私たちも別れ、私は日傘を差し、ひとりで宮殿の庭園に入る。
フレイアは姉たちの茶会の準備を手伝っているので、残念ながら一緒ではない。
私は庭園の花々を見て回った。
色彩豊かで美しい花々は、私を癒してくれる。
そのまま夢中で花々を見ていると、どうやら裏庭に来てしまったらしい。
戻ろう。
そう思い、踵を返そうとした時だった。
ビュンッ、と、風を切る音がしたのだ。
思わず足が裏庭の先に進んでしまう。
裏庭の先は、大きな広場になっていた。
その広場の上に、人影を見つける。
その人の姿に、私は目を見開いた。