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「…先生……ベド先生…」
「アルベド先生!」
自分の名前が呼ばれていたことに今さら気づく。どうやら眠ってしまっていたようだ
アルベド「少し寝てたみたいだ。どうしたんだい?」
スクロース「ガイアさんからの伝令なんですけど…」
スクロース「しばらくジン団長がモンドを開けるようでクレーちゃんを見ておいて欲しいと…」
アルベド「あの人がしばらく開けるなんて珍しいね。なにかあったのかい?」
スクロース「いえ、また無茶して倒れたようでバーバラさんがしばらく休ませて欲しいと言ったみたいです」
また倒れた。
あの代理団長は効率と言う言葉を知らないのだろうか。
アルベド「わかった。そもそもクレーを見るのは僕の役目でもあったしね」
きっと団長が休んでることを知ったらクレーは心配する反面、すぐに飛び出すこと間違いなしだろう。
アルベド「それじゃ、問題を起こさないうちに見に行ってくるよ 」
僕は部屋を出てクレーが居るであろう反省室に向かう。
それとも、もう出たと仮定してクレーがドドコを使うような場所に先に行くか、
ガイアからの話となれば、ガイアが手助けしてる可能性だって否めない。
スクロース「あっ!待ってください!」
スクロース「………って…もう居ない…」
「それじゃ、クレーをよろしくね♪」
そういって幼い子供を残し、師匠の友人、アリスさんはここを跡にした。
師匠の友人であることから話すことがたまに会ったぐらいの間柄。
なのに会って数回で僕になついたその友人の娘、クレー。
師匠とアリスさんが席をはずすとき、よく「クレーを見ておいて。戻ってくればどこに行ってもいい」と言われた。
そして、流石に可愛らしい爆弾を抱え、地形を破壊するとは考えもつかなかったし、師匠に怒られたことも覚えている。
そんなとき、急に預けられた。
師匠は特になにも言わずに離れていった。
二人の影を見送って見えなくなっても尚健気に手を振り続ける少女に目を向ける。
その目元はかすかに赤くなっていて擦ったことがわかる。
何度も泣き、それでも笑おうとする姿を見て、なにかを感じた。
それがなにかはわからなかったけれど。
クレー「お母さん、いつ帰ってきてくれるかな?」
その少女はいつの間にか手を振るのをやめ、そう口を開いた。
その顔は笑顔ではなく、少し悲しそうな顔をしていた。
アルベド「さあ、いつだろう」
クレー「アルベドお兄ちゃんのお母さんもすぐ帰ってくるといいね!」
アルベド「お母さん?」
クレー「え?」
もしかして師匠との関係を勘違いされたのだろうか。
クレー「でもクレーのお母さんはあの人のことお友達って言ってたよ?」
クレー「それともお姉ちゃんだった?」
アルベド「違うよ、血も繋がってないし」
クレー「じゃあどうして一緒にいるの?」
アルベド「あの人は母親でも家族でもなくて、僕の師匠なんだ。」
アルベド「でも僕を生んだ人を母親とするなら、母親というのは一部正解かな?」
僕は彼女によって作られたホムンクルス。
それを生んだとするのならそれは親に該当するのだろう。
クレー「家族じゃないのに親ではある…?」
クレー「クレー、全然わかんないや!」
アルベド「分からなくて大丈夫だよ」
その時隣からぎゅるるるると音がする。
クレー「クレー、お腹空いちゃった…」
腹が減るのは生きている証
眠くなるのは生きている証
その行動一つ一つが少女が人間であることを明確にしていく。
僕とは違う。
アルベド「…帰ろっか」
クレー「うん!」
なぜだろう。この少女と過ごしていくうちに、なにか破壊行動をしていないか 心配 になる。
過ごしていくうちに、きょうの料理何にしようと研究以外で 悩む ことがある。
過ごしていくうちに、寝顔を見て自分も 眠く なる。
気づかぬ間に、僕は人間に近づいていってることがわかった。
下らないことで笑い、悩み、不安に刈られ、安心する。
どんなに人間に近づこうと、自分がホムンクルスであることに変わりはない。
自分が師匠に作られた存在で、クレーが師匠の友人の娘で、僕はその子守りであることに変わりはない。
ただ、少しだけこの少女に翻弄されてみるのも良いかもしれない。
アルベド「さて、妹を見に行かないと」