テラーノベル
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でも、凪さんは違った。
彼は、お姉ちゃんが必死に守ってきた「不器用な誠実さ」を、一瞬で見抜いて、一番高い場所で肯定した。
(……いいな。お姉ちゃんは、そのままで愛されて)
私は、バッグから手鏡を取り出した。
鏡の中にいるのは、さっき凪さんに見せた「作り物の笑顔」の残骸。
必死に塗り固めたメイクの下で、本当の私は、お姉ちゃんよりもずっと、醜く泣いていた。
「……あれ? 芽衣ちゃん、こんなところで何してるの?」
通りかかった同僚に声をかけられ、私は一瞬で笑顔を貼り付けた。
「えへへ、ちょっと階段で躓いちゃって! 恥ずかしいから内緒だよ?」
誰も気づかない。
私が今、どんなに苦しくて、自分のことが嫌いかなんて。
(……幸せになってね、お姉ちゃん。私の分まで)
私は誰もいない廊下に向かって、小さく、本音を零した。
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