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芽衣が去った後の屋上。
静寂が戻った空間で、私たちは繋いだ手の温もりを確かめ合うように、ゆっくりと呼吸を整えていた。
「……凪さん。本当に、私でいいんですか?」
自分でも驚くほど、素直な声が出た。
いつもなら、こんな弱音は心の奥深くに閉じ込めてしまうのに。
凪さんは私の手を引き寄せ、もう片方の手で私の頬を優しく包み込んだ。
大きな、けれど羽のように柔らかな掌。
「結衣さん。あなたは、自分を過小評価しすぎです」
凪さんはそう言って、困ったように目を細めた。
「俺は、仕事に対して誰よりも誠実で、その裏側にある不器用な優しさを隠している……そんなあなたの『素顔』に恋をしたんです。他の誰かじゃ、代わりにならない」
「……凪さん」
凪さんは周囲に誰もいないことを確認してから、私の額に、優しく、慈しむような口づけをした。