「ハァッ、ハァッ……ングッハッ、ッハァッ…」
あまりにも楽しくて、何度も何度も振りかざしていた。
もう、右腕はペンキをそのまま掛けたような、真っ赤な血が溢れていた。
「なに、これ…」
「すごい、ゾクゾクする…」
もう一度だけやろう。
そう思い、ボールペンを持ってる腕を上げようとした。
だが、左腕は力が抜けたかのように、動いてくれなかった。
「は…?なん、っで……」
「動い、ッてよ…ッ!」
指示されても動かない、左腕。
なんでっ、なんでっ!!
動いてッくれなきゃ、傷つけッられない、じゃんっ……
そう考えているせいなのかな…
なんだか眠たくなってきたなぁ。
本当は、もっと傷つけたかったんだけどなぁ…
そんな願いを無視して、睡魔は僕を寝かせた。
💙side
スタッフ「これで、レコーディングを終わります!」
スタッフ「mtkさん、wkiさんお疲れ様でした〜」
❤️・💙「お疲れ様でした〜」
スタッフさんと別れて、mtkと2人で事務所を出た。
「……」
仕事が終わっても、ryokちゃんを心配する気持ちは、増えるばかりだった。
あの時に、信じようって決めたのに…
❤️「あ、ryokちゃんに伝えとかないといけないことがあったわ。」
❤️「電話で話しとこかな…」
「…!じゃあ、俺から電話を掛けてもいい?」
❤️「ん?いいよ〜」
ちょうど良かった。
電話でryokちゃんの声を聞けば、少しは安心するかもしれない。
そう思いながら、ryokちゃん、と表示されているところを押す。
プルルルル
1コール。
プルルル
2コール。
プルルル
3コール。
❤️・💙「……」
プルルル
4コール…
プルルル
5コール…
プルルル
6コール…と鳴った後、電話を切った。
なぜだか、背筋が凍った。
「寝てるだけ、だよね……」
「もう1回、電話してみるね…」
mtkの返事を聞かずに、またryokちゃんに電話を掛けた。
プルルルル
1コール。
プルルル
2コール。
プルルル
3コール。
プルルル
4コール。
プルルル
5コール。
ここまで出なかったので、一旦、電話を切る。
普通、ここまでして掛けたら、人によって違くても、反応はするはず。
なのに、その電話すらも出ないのは、初めてだった。
嫌な予感が頭の中で過ぎた。
絶対違うと信じたいけど、そうやって、1度思えてしまえば、意識せざるを得なかった。
焦りや、不安、悪い考え。
ぐちゃぐちゃに迫ってくる考えを、止めるために息をつく。
そうしていると、mtkは口を開いてこう言った。
❤️「…探しに行こう。」
「え……?」
「…てことは、」
❤️「ryokちゃんは……」
❤️「居なくなろうとしている」
「っ……!」
嫌な予感は、mtkも感じていた。
mtkの表情からも、真剣だと分かった。
「うん、探そう。」
ryokちゃん、どうか…どうか、いなくならないでね。
もし、居なくなろうとするのなら、俺たちと1回話したいな。
そう期待を持ち、mtkのあとをついていった。
ータクシーの中にて
俺たちは事務所を出て、“とある所”へタクシーで向かった。
「でも、何処にryokちゃんがいるのか、分かるの?」
❤️「分からない…」
❤️「けど、近くにいるとは思うのよ…」
「うん……」
俺たちは、まず近くのryokちゃんが行きそうな所に行くことにした。
とはいっても、十数個ほどあるので見つかるか不安だった。
もし、ぜんぜん見つからないまま、ryokちゃんは……
想像したくない未来を考えていたら、タクシーは運転手に伝えた所へ着いた。
お金を払って、タクシーを降りる。
最初に来たのは、“とある草原”。
ここは、小さなお花畑だが、長年、そこを守ってきた木が横にいて、誰でも受け入れてくれるようなベンチが置いてある所。
少し奥へ進むと、一面に海が見えるような、そんなところだった。
1番近くにあって、誰の目にも気づかれないまま、居なくなれるのは、ここしか無かった。
たった10%程の望みをかけて、ryokちゃんを探した。
すると、mtkが何かを見つけたらしく、反応をした。
❤️「wki、あそこにいる人…」
「ん……?」
そこを見てみると、大きい木の下のベンチに座っている人がいた。
その座っている人をよく見てみると、その周りが赤くなっていた。
あか、く……?
「…ねぇ、もしかして……あの、人…」
❤️「……!」
俺がそう言うと、察したのか、すぐさまmtkは、その人の所へ向かった。
そのmtkに追いかけるように、俺も追いかけていった。
ベンチのところまで走り、座っている人の肩を叩く。
「大丈夫ですか!?」
肩を叩きながら、呼ぶ。
mtkは誰かを確認するため、しゃがみこむ。
すると、mtkは目を見開いた。
❤️「はっ……?ryok、ちゃ、ん……?」
「え、ryok、ちゃん…?」
理解が追いついていなかった。
ベンチの周りを赤く染めていたのは…ryokちゃん?
右腕の傷はどうしたの…?
左手で持っている、そのボールペンでやったの……?
血まみれになりながら、寝ている人がryokちゃんということに驚き、身が、すくんだ。
すると、ryokちゃんが、うっすらと目を開けた。
💛「、ぁ……」
「…!?ryokちゃん…!?」
❤️「ryokちゃん!mtkとwki!!」
💛「ぇ…?…なん、っで……」
「ryokちゃんが、電話に出なくて“居なくなろうとしている”と思ったから、探したの!」
💛「ぁ……で、んわ……」
こんなにもボロボロなのに。
血まみれの手で、スマホを取ろうとしていた。
❤️「ダメだよ!?今、動かしたら大量出血で死んじゃうよ!!」
❤️「とりあえず、俺はryokちゃんの腕を止血するから、wkiは救急車呼んで!!」
「分かった……!!」
切羽詰まった声で、指示をくれたmtk。
その迫力に押されながらも、119…と番号を押し、電話ボタンを…
押そうと思ったが、出てきた手で電話を掛けられなかった。
出してきた手は…ryokちゃんの手だった。
取られたスマホは、ryokちゃんのカバンの中に入れられてしまった。
❤️「何やってるのryokちゃん!?wkiは救急車を呼ぶために、電話を掛けようと…!」
💛「そんな、大変なこと…しなくても…いい、よ。」
💛「呼ぶ前に…寝ると思うッから。」
「はっ……?」
「……分かんねぇ…」
「意味っ、分かんねぇよ!!」
❤️「wki!!」
❤️「今、怒鳴っても仕方ないよ!!!」
「っ、……ごめん…」
💛「大丈夫だよ、wki。」
💛「mtkも、そんなに、怒らなくていいから…ね?」
❤️「……いやっ、いなく、ならッないで……」
耐えきれなくなったのか。
ryokちゃんと手を繋いでいたmtkは、涙を流した。
そんなmtkをあやす様に、頭を撫でた。
💛「大丈夫……きっと、この先も…wkiとmtkの2人で……やって、いけるよ……」
「いや…嫌だ……」
「離れないでよっ……ryokちゃんっ……!」
嫌な予感の通りにだけは……それだけは…なって、欲しくない…
ryokちゃんが、永遠に離れないように、足に抱きついた。
嫌だと思うような行動をしても、ryokちゃんは気にしないで、頭を撫でてくれた。
💛「2人と、も……僕の、事……す、き…?」
言葉が途切れ途切れになってきていた。
もう、そろそろ、眠っちゃうのかな。
そしたら、嬉しい気持ちのまま、寝かせてあげたい。
そう思い、笑顔を作る。
「うんっ、大好きだ、よっ…!」
❤️「ryok、グスッちゃんっが…世界で一番ッ……大切な人、だからッね……」
💛「ありがとッう……僕、もだい、す、き、だ……y……」
『大好き』と言いかけた時に、ryokちゃんは目を瞑った。
「…ぁ、あ……」
❤️「ぁ、そ、…そん、な……ぁ…」
少し熱すぎるぐらいの、夕暮れの時。
ryokちゃんは、空へ羽ばたいていった。
きっと、この海の、遥か彼方に向かって、飛んでいったのかな。
眠ったryokちゃんを見てみると、嬉しいような、楽しいような表情をして眠っていた。
これが、ryokちゃんの願いだったのかな。
疑問に思っていることを何も答えずに、海に隠れようとしている太陽は、放心状態になった俺とmtkを置いてけぼりにした。
コメント
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涼ちゃん(泣) これは涙腺崩壊😭
気づいたら泣いてました....! 星狼さん最高です!