❤️side
真っ黒なスーツに、真っ黒なネクタイ。
俺たちは、ryokちゃんの葬式に出ていた。
ryokちゃんの周りを見渡す。
色々な花が飾っていて、とても華やかだった。
白く、優雅に広がっている百合。
まんまるとした、菊。
小さくて、愛らしいカスミソウ。
綺麗な形の、トルコキキョウ。
彫刻のように整えられた、ダリア。
お互いを支え合っている、デンファレ。
なびくように咲く、アンスリウム。
それらが、ryokちゃんの周りに飾られていた。
綺麗な花々にも負けない、ryokちゃんの姿。
なんの迷いや不安はない、というような表情。
こうやって、花に囲まれながら死ぬのを、ryokちゃんはしたかったのかな。
そんな風に、安らかに眠っているryokちゃんの頭を撫でた。
「ryokちゃん…すごく、綺麗だよ…。」
💙「……」
ここに来てから、wkiは何も話さなかった。
ずっと、何か重りをつけているように、無表情。
いつもなら、分けている前髪も、顔を隠すようになっていた。
その隙間から、真っ赤に腫れた目が見えた。
これは、来る前まで泣いていたんだろうな、と思った。
ryokちゃんの事を話すと、コップに入っている水が溢れ出すように、泣いてしまうかもしれない。
そのせいなのか、葬式が始まってから、wkiは一度も口を開かなかった。
葬式が終わり、帰宅の準備をする。
準備を終えると、wkiの様子が気になり、そちらを見る。
💙「……」
相変わらず、無表情だった。
ただ、座ったまま、ryokちゃんの写真を見つめていた。
なんだか、とても心が苦しくなった。
切なそうに、ryokちゃんの写真を見つめる、wki。
今、wkiは何を思っているの…?
ryokちゃんに、何を話しかけているの…?
それを、直接聞くのは、難しかった。
💙side
💙「……」
ryokちゃん、ryokちゃん……
最後に見た、何も後悔はない、という表情。
…僕には、後悔しかないよ。
ryokちゃんが、辛いのを気づかずに、助けられずに、救うことも出来ずに、僕は何をしていたの?
どこか、違う。
そう、思えばなにか違ったかもしれないのに。
……あぁ、嫌だよ。
ここから離れたくないよ。
離れたら、ryokちゃんとは永遠に…
❤️「wki、そろそろ……」
「っ……」
❤️「…離れるの、辛いよね。」
❤️「でも、死んだ人はね…思う人の心の中に、いるまま…なんだよ。」
❤️「だから、ryokちゃんは俺とwkiの心の中にいるから……ずっと、一緒なんだよ。」
「……」
❤️「…そろそろ、出よっか。」
mtkの言葉を、頭の中で繰り返す。
『ryokちゃんは、俺とwkiの心の中にいる。』
…こんな僕の心に、ryokちゃんは、いてくれるのかな?
目の前にある問題を、見て見ぬふりしたのは、僕のせいなのに。
きっと、僕の心にいてくれないよ、mtk。
そう、言葉に出せなかった。
もどかしさの気持ちをどうにもできないまま、mtkと一緒に、この場を離れた。
俺とmtkは、タクシーに乗った。
窓を見てみると、空は薄暗く、雨が降っている。
葬式の時は、ryokちゃんを快く送り迎えしてくれるような、雲ひとつもない空だったのに。
なんだか、自分の心境と同じみたい。
映画のように変わる景色を、ぼーっと眺めていた。
❤️side
タクシーに乗り、とあるカフェへ向かうようにお願いした。
伝えると、タクシーは出発した。
まだ、静かなwkiの方を見る。
さっきは無表情だったが、今は何処か寂しげだ。
ふと、wkiに伝えたことを思い返す。
多分、ああやって伝えても、寂しさはそう簡単には、消えないだろう。
今は、そっとしとく事にした。
タクシーは、とあるカフェへ着いた。
俺たちは、タクシーを降りる。
タクシーが遠ざかり、辺り一面には雨の音が響いた。
「wki、はいr…」
風邪をひかないように、早めに入ることを進めようとした。
そう、wkiの表情を見るまでは、しようとした。
💙「……」
口を少しだけ開き、空を見上げていた。
雨が目に入るのを恐れず、ただ上を見ていた。
その様子が、やけに酷く、綺麗だった。
薄暗い昼間に雨が降ることで、普段では賑やかな時とは違う、静かな空間が出来る。
そんな空間に、wkiは馴染むように佇んでいた。
「っ……」
思わず、その様子に息を呑む。
君の顔に滴る、水滴は雨なの?
それとも、涙なの?
どちらにせよ、wkiが体調を崩したらいけない。
少々、申し訳ない気がするけど、wkiの腕を引っ張って、カフェの中に入った。
中に入り、店員さんの案内された席に座る。
未だに上の空のwkiと、向き合う。
「ねぇ、wki。」
呼んでみると、視線をこちらに向けた。
だけど、前髪のせいで表情は分からない。
そこで、ある事を聞く。
「…今、何を思ってるの……?」
葬式が終わった時に、気になったこと。
あんなに喋るwkiが、ここまで無言で、無表情なのが、初めてで。
不安よりも、恐怖が勝ってしまう。
そこまでさせることは、なんだろうか。
wkiの返事を、待つ。
💙「……」
…まだ……無言を貫き通すんだね…
仕方ない、違うことを聞こう。
そう思い、口を開く。
喋り始めると同時に、wkiも喋り始めた。
💙「後悔…だよ。」
「ぇ、後悔…?」
💙「うん。あの時、ryokちゃんは笑顔のまま、眠ったじゃん。」
💙「それが、ryokちゃんにとって、良かったのかなって、さっきから考えててさ。」
「うん……」
💙「前々から、なにか出来たことはあったはずなのに、僕は何を見てきたんだろうなって。」
💙「…これじゃあ、僕ってダメダメだね。笑」
wkiは一人称が『僕』となる時、心の中で、有り得ないほど、自分を責めている。
自分を責めている内に、壊れてしまわないように、言葉を掛ける。
「……違う、と思うよ…?」
💙「…ごめん、mtk。……こうしないと、何かに負けそうで。」
「えっ……?」
何故、俺は驚いたのか。
それは。
wkiが、静かに音も出さずに、泣いていたからだ。
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