テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
96
2,932
286
しょっぴー
💛💜
嫉妬
楽屋のソファに座りながら、岩本は何度目か分からないため息をついた。
視線の先では、深澤が佐久間と楽しそうに話している。
さっきからずっとだ。
笑って、ツッコんで、また笑って。
別に珍しいことじゃない。
深澤は誰とでも仲がいいし、佐久間も明るい性格だから、2人が盛り上がっているのはよくある光景だ。
なのに今日は妙に気になった。
気づけば何度もそちらを見てしまう。
🖤「岩本くん、聞いてる?」
声をかけられて我に返る。
💛「あ、ごめん」
適当に返事をすると、再び視線は深澤へ向いた。
その瞬間、深澤と目が合う。
しかし深澤は軽く手を振っただけで、また佐久間との会話に戻ってしまった。
胸の奥が少しだけざわついた。
その日の仕事終わり。
メンバーが次々と帰っていく中、岩本は荷物をまとめていた。
すると近くを通った深澤が声をかける。
💜「お、照も帰る?」
💛「まぁな」
💜「じゃ、お疲れ〜」
そう言って深澤は出口へ向かおうとする。
いつもなら一緒に帰る流れになることも多い。
なのに今日は違った。
理由も分からないまま、岩本の口が勝手に動いた。
💛「最近さ」
深澤が振り返る。
💜「ん?」
💛「佐久間といること多くね?」
💜「佐久間?」
💛「今日ずっと話してたじゃん」
深澤は数秒考えてから、ああ、と笑った。
💜「別に普通じゃない?」
その軽い返事が気に入らなかった。
💛「ふーん」
💜「なにその反応」
💛「別に」
そう言って目を逸らす。
自分でも子供っぽいと思った。
けれど今さら引っ込められない。
深澤は少し黙ったあと、にやっと笑った。
💜「もしかしてさ」
嫌な予感がする。
💜「嫉妬してる?」
💛「は?」
💜「図星?」
💛「違ぇよ」
💜「即否定じゃん」
💛「してねぇし」
💜「へぇ〜笑」
完全に面白がっている顔だった。
岩本は小さく舌打ちする。
すると深澤はふっと笑みを消した。
💜「でもさ」
💛「?」
💜「俺が一番一緒にいるの誰だと思ってんの」
その言葉に岩本は固まった。
深澤は照れた様子もなく続ける。
💜「そんなの照じゃん」
一瞬だけ心臓が跳ねる。
💛「……知らね」
💜「知っとけよ」
深澤は笑いながら岩本の肩を軽く叩いた。
そのまま出口へ向かう。
💜「帰るぞ」
💛「どこに」
💜「ん?」
💛「お前、帰るって言ったじゃん」
深澤はきょとんとしたあと、少し笑った。
💜「だから帰るんだよ」
💛「家に?」
💜「そう。照ん家」
💛「は?」
💜「昨日ゲームの続きやる約束したじゃん」
言われてみれば、たしかにそんな話をしていた。
すっかり忘れていた。
💜「なに?忘れてた?」
💛「……忘れてねぇ」
💜「絶対忘れてたじゃん」
ケラケラ笑う深澤に、岩本はため息をつく。
💛「行くなら早くしろよ」
💜「はいはい」
そう言いながら深澤は隣に並んだ。
さっきまで佐久間のことで感じていたモヤモヤは、いつの間にか消えている。
エレベーターを待つ間も、深澤は楽しそうに今日あった出来事を話し続けていた。
💜「てか佐久間さ、今日もめっちゃ面白くて」
💛「また佐久間の話かよ」
💜「あ、やっぱ嫉妬してんじゃん」
💛「してねぇって」
💜「怪しいな〜」
楽しそうに笑う深澤を見て、岩本は呆れたように肩をすくめた。
けれどその表情は、どこか少しだけ柔らかかった。
そして2人は並んで建物を出る。
向かう先は、それぞれの家ではなく――岩本の家だった。
コメント
1件
読了です!「嫉妬」というタイトルと、最初の💛💜の色分けがもう…ズルいですよね(笑)。岩本が深澤と佐久間の楽しそうな様子を、ぼんやり見つめてる感じから始まって、「最近さ」って口を滑らせるあたり、すごくリアルでした。あの素直になれない「別に」と「知らね」が、むしろ全部バレバレで可愛いです。深澤の「そんなの照じゃん」って軽く言い放つ感じ、すごく効くじゃないですか…。最後の「照ん家」で、ついニヤけました。いい距離感、好きです。